本当は怖い入院の話は、まだ、終わってなかった…
松本恵呼
第1話 緊急入院
思えば、1週間ほど前からずっと咳が続いていた。
やはり、ちょっとおかしいと思ったけど、咳なんて何科に行けばいいのかわからない。そこで、調べて見れば呼吸器内科だった。呼吸器内科と言われても近くにそんな病院あったったかなぁ。
そこで、主治医に電話。しばらくして看護師から近くのクリニックを紹介されたので、行ってみることにした。そして、五日分の薬を貰って帰宅し、その薬を飲んでみたけど、良くなるどころか咳はますますひどくなって来た。やはり、これはおかしいと、三日目に再度クリニックに行けば、レントゲン写真を見て医師は言った。
「肺炎です。即入院です」
肺炎!!
何で、どうして、私が肺炎だなんて…。
一瞬、そんなことが頭を
実際問題、どこに入院することにだろうと思っていると、何と、そこは10年来の掛かり付け医のいる、いつもの病院だった。因みにこの病院、家から近い。このクリニックより近い…。
ああ、そんなことはどうでもいい。
とにかく緊急入院なのだ。ひょっとして、このまま、連行?なんて思ったりしたが、それはなかった。病院側が明日の9時半にと言うことだった。早速に帰宅して、あれこれ、思いつくままに入院グッズをスーツケースに詰め込んだ。
何しろ、10年ぶりの入院なのだ。戸惑うことも多い。
翌朝、先にクリニックに寄り、書類と咳止めシロップとホクナリンテープを受け取り、勝手知ったる病院の受付に行けば、早速にブースで待機するようにと言われた。コロナ検査である。それにしても、中々やって来ない。
待ち草臥れた頃にやって来て、鼻の奥の粘液を取られたが、これが結構痛かった。
「鼻腔が狭いねえ」
人の体は一見、左右対称だが、その実は左右対称ではない。私の鼻腔、つまり鼻の孔も右からの鼻息は至って普通だが、左側はその3分の1くらいの鼻息しか出ない。
「それを先に言ってよ」
と、検査の人は言ったが、そんなの知らんがな。それこそ、そっちが先に聞いてよ。これから、コロナ検査検査を受ける人は、鼻の孔の大きい方で受けるように。
それから、結果がわかるまで20分ほど。幸い「陰性」だったので、しばらくして看護師が迎えに来た。エレベーターの中で、病棟は、主治医はと聞いて見れば、10年前と同じ病棟、主治医も同じ。この病院にも呼吸器内科はある。ただ専門医は週に2回、大学病院からやって来る。まあ、肺炎くらい、どの病棟でも、どの医師でもいいのだろう。
「まあ ! 久しぶり。覚えてる?私は一目でわかったよ。10年前と全く変わらないねえ」
それは、10年前は一看護師だったが、今は看護師長になっている人だった。
私はさっぱり覚えてない。いえ、10年も経てば、少しは変わるでしょ。ただ、ヘアスタイルは変わってない。私のヘアスタイルは一番金のかからない、それ。
年に一度、QBハウスでカットするだけ。前髪は自分で切る。それだけ。何かあれば、近くの安い美容院でブローしてもらうけど、最近はコロナのせいで、その何かもほとんどない。
そして、案内された部屋は2人部屋だけど、同室者はいない。左隣はディルーム。右隣は空室。これなら、咳してもそんなに気遣いしなくても済む。早速に持参したパジャマに着替えれば、すぐに、採血がやって来た。その後、レントゲン、CTを終えて、病室に戻れば「痰」を出せと言う。
そんなの無理。第一、咳はすれども痰は出ない。それでも出せと蒸気の出る機器を持って来た。蒸気を吸って無理やり痰を出して、ほっとしていると、足りないからもっと出せと言われた。
夕方近く、医師がやって来た。この医師とは、10年以上の付き合い。実は10年前に大腸がんの手術を受けている。その時の執刀医。
そして、医師はものすごく怖いことを言った…。
「思ったより、状態は悪い…」
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