第2話 ある痴呆の老人
ある富豪の慈善家が、老年になって痴呆症を発症した。それまでの彼は皆から慕われる良い性格だったが痴呆になってからは、とても"自由奔放"になってしまい、最後は一族が、彼を山奥の屋敷へと半ば幽閉した。
幽閉とは言っても、その広大な敷地内で監視のもと、比較的自由に遊ばせる、といった感じだったそうだ。広大な山林の中心に、3階建ての洋風の屋敷があり、その屋敷には使用人たちも、十数人常時働いていた。
最初は、抵抗していた老人も次第に環境になじんでいき、使用人たちの顔を覚えられはしないものの、優しくしてくれる彼や彼女らに支えられて日常を送るようになった。
だが、年の流れは彼に厳しく、いくら薬を服用しても、環境を改善しても、ゆっくりと痴呆症は進行していった。
全裸で森の中を歩き回り、ところかまわず放尿や排便をし始めた老人に対し、次第に使用人たちや、時折訪れる家族や親族たちも顔をしかめるようになり、それでも、財産を持っている彼の周囲には人が常についていた。
ある時、使用人の一人と共謀した四名の強盗が屋敷に押し入った。
老人は縛られている途中で激しく暴れまわり
そして絡んだロープで窒息した。
その後
晩年の痴呆はなかったかのように葬儀は盛大に行われ、犯人たちはあっさり逮捕され、そして刑に服すことになった。
異変はそれから起こった。
老人が暮らしていた屋敷の周辺の森が"喋る"ようになったのだ。
風で木々が揺れるとまるで、「苦しい」「苦しい」という声が聞こえるようになり
そして、関係あるかは分からないが
それらの異変から日を置かずに刑に服していた犯人の一人が発狂して自殺した。
首をくくった彼の房の壁には「ごめんなさいごめんなさい」と延々と
どこかから持ち込んだスプーンで彫られていたようだ。
さらに屋敷のある山林の最も近くにある町に
「あの周辺で、うめきながら歩き回る、やせこけた裸の人影を見た」
といううわさ話が続くこととなる。
異変はさらに増えていく。
「近くの山道で人影から意味不明な言葉で話しかけられた」
「鬼火が屋敷の方角で上がったのを見た」
などと止めどなくそれらは増えていき
最終的には、ある高名な僧侶がお祓いに来たことで異変は一応の終結をしたらしいが、その後の噂では屋敷は失火して燃え尽きたとのことだ。
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