第441話 女商人は、棚上げしていた問題を解決したい
「さて……ひとまずこれで華帝国の一件は落着する道筋が見えたわね」
皇帝を殺した以上、遠からず侵攻軍は撤退するであろう。そう楽観的に考えて、アリアは久しぶりにオランジバークの自宅に戻ってはくつろいでいた。もちろん、レオナルドも一緒に。
「なあ、アリア。それなら、そろそろ……」
「そうね。棚上げにしていた問題を……解決しなければね」
ちなみに、レティシアはハルシオンの王宮に預けていた。そのため、この部屋は二人きりだったりする。だから……レオナルドはその言葉の意味を自分なりに理解して、アリアを乱暴に机の上に押し倒した。そして、強引にキスをしようと迫る。
「ちょ、ちょっと……なにするのよ!」
「こうした方が燃えるって言っていただろ!おとなしくして……」
レオナルドはそういいながら、鼻息を荒くして顔を近づけてきた。そのうえで、アリアのシャツに手を伸ばしては、力づくで引き裂こうともした。だが、当然だがアリアも「このお気に入りの服を破かれてたまるものか」と必死に抵抗する。そして……
「だから!意味が分かんないわよ!何でいきなりそんな流れになるの…っよ!」
「いてぇっ!!!!」
らちが明かないと見るや……思いっきり膝小僧を突き上げて、レオナルドの股間に強烈な打撃を食らわせた。
「な…なにするんだよ……」
突き上げてくる鈍痛に、額から脂汗を流してレオナルドは机の下に転がり落ちると、苦しそうに声を滲ませて抗議した。だが、アリアの眉が吊り上がる。
「それはこっちのセリフよ!いきなりこんな所で何をする気だったのよ!!」
傍から見れば、これは強姦だ。確かにそういうプレイは、時と場合によっては好むことはあるが……流石に脈絡もなく白昼堂々されるとなれば話は違う。アリアは、乱れた衣服を整えながら、レオナルドを𠮟りつけた。「時と空気を読め!」と。
すると、彼は拗ねたように口をとがらせてアリアに言った。「そろそろ、二人目が欲しいって言っていたじゃないか」と。
「ふ、二人目!?」
「そうだよ!こないだ欲しいって言ったじゃないか!」
もしかして忘れたのかと避難がましく見つめてくるレオナルドに、アリアはその発言が正しいことを認めた。確かにそういえば言ったことがあるなと。
「だけど……それが何で今って話になるのよ?」
「だって、棚上げにしていた問題を解決するんだろ?それしかないじゃないか!」
レオナルドは力強くそのように言うが……アリアは思う。「違うだろ」と。もちろん、その問題もいずれは解決しなければならないかもしれないが、決して問題がそれしかないわけではない。
「あのね、レオ。わたしが言った『棚上げにしていた問題』っていうのはね……」
アリアは誤解を解消するべく説明する。この華帝国の騒動が起こる直前に頭を悩ませていた『カルボネラ商会のレベッカ嬢に関する問題』が未解決のままに放置されていると。
「ああ……そういえば、そんな話もあったな……」
どうやら、レオナルドも忘れていたようで、アリアの言葉に相槌を打った。
「コペルティーニ総督からは、いつでも釈放しても構わないという連絡が入っていたみたいなのよ。つい1週間ほど前にね。だから、そろそろ片付けないといけないと思い出して……」
ここのところの華帝国の騒動によってすっかり忘れていたが、喧嘩を売ってきたカルボネラ商会の会頭であるレベッカ嬢は、アリアの機嫌を取るために総督が牢屋に収監し続けているのだ。したがって、どうするのかはアリア次第である。
「それで、どうするつもりなんだい?」
「そうね……お父様のフランシスコさんには色々お世話になったからね……」
以前は潰すことに決めていた。カルボネラ商会の幹部たちもオリヴェーロの手引きによって寝返る約束を取り付けていたので、それに乗ることも決めていた。しかし、今となってはどうでもよかった。
「まずはレベッカさんに会ってからだけど……もう乗っ取らなくてもいいかなって思ってる……」
アリアはそう言って、方針転換を示唆した。フランシスコがいたからこそ、アリアは女王になり、そして世界を救うことに微力ながら寄与することができたのだ。その功績は、非常に大きいとして……。
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