7日目 ごみくずくそむしのほふく前進

 7日目、4月14日。快晴、洗濯日和である。


 昨日に引き続き、こまりはうじうじと落ち込んでいた。

 毎日眠りが浅いのか夢をみるが、ことごとく夢見が悪い。嫌な思い出だったり、仕事のことだったり、寝ている間も苦しんでいるので、朝起きたときの気分は最悪だ。


 身体は重く、気分が晴れない。

 綺麗にしたいものを集め、洗濯機に放り込む。洗って洗って全部綺麗になってしまえ。


 白湯を飲んで、洗い上がった洗濯物をパンパンと伸ばしながら干していく。

 伸びて伸びて真っ直ぐになれ。


 ついでに脚をストレッチする。痛気持ち良い。身体も心もぐしゃぐしゃになって、縮こまっている感じだ。落ち込んではいるが、今日は動けそうだ。できるだけ動いて成果を出して、無理になったら横になって伸びをしよう。


 こまりは時々、自分のことを「ごみくずくそむし」と呼んでいる。

 まぁ、どうしようもない最低な自分というような意味の造語だ。ある日ふと頭に浮かんできた言葉なのでどこかできいたことがあるのかもしれないし、ただ単に響きが気に入って頭に残ったのかもしれない。

 自虐的なあだ名である。


 自虐は特に何の成果も出さない。言われた周りの人も「そんなことないよ」等々気を遣うだけで、他者に対して自虐はしない方が良いとこまりは思っていた。


 なので、うじうじしたくなったときに、自分の心の中で自虐して遊ぶ。


 こまりはごみくずくそむしだ。

 身体には無駄に敏感なセンサーが何本も生えていて、そのセンサーは負の感情を察知するのに役に立つ。そして、仕事は無駄に丁寧で遅いのに、必要なところでは雑、刺激に弱く、すぐ動かなくなる割に寿命は長い。役立たずの生産性に乏しい生き物だ。虫が苦手なのでむしになっているが、虫の方が遥かに優れた生き物である。


 こまりの頭の中で気持ちの悪いごみくずくそむしがわさわさと動いた。


 ああ、気持ち悪い。でもまだ生きている。


 あしのようなものを前後に動かしている。胴体は地面にはりついたままだ。


 ずりっずりっ…


 ゆっくりと這っている。


 世間の目から逃げ、人との関わりから逃げ、自らの責務から逃げ、未来から逃げている。


 ずりっずりっ…


 掃除機で床を掃除していく。

 日焼け止めを塗り、食材の買い出しに出かける。

 鳥の手羽元を軽く焼き、調味料をいれ圧力鍋で煮込んでいく。

 ぱりっと乾いた洗濯物を畳む。


 夕御飯の後、リラックス効果のあるカモミールティーを飲み、一息つく。


 今日は良い夢をみられるだろうか。


 ごみくずくそむしは、ゆっくりと前にほふく前進を続ける。



【7日間継続できたこと】

 ・朝、白湯をのむ

 ・睡眠薬をのまずに寝る

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