5日目 月曜日の憂鬱

 日曜日は楽しい1日を過ごした。


 本日は4月11日、月曜日である。 多くの人々にとって、仕事や学校の始まりの日である。


 引きこもりのこまりにとって月曜日だろうと日曜日だろうと関係ないと思われるかもしれない。 しかし、「いってきます」と出ていく人がいる中、家に部屋着で残る自分は世界に取り残されたような気分になる。


 楽しかった日曜日 、 美味しいご飯 、その瞬間は楽しくても、後で自分なんかがそんなに楽しんでよかったのかと後悔する。

 収入のない中、お金を消費することは 罪じゃないのか。 生産性のない自分が楽しんでも、何もならないのではないか。 オフばかりの日々を送るこまりにとって、オンの時間がないのに楽しむことはとても罪深く感じる。


 今すぐ消えてその分お金を残す方が良いのではないか そんな気持ちに駆られる。世の中ははじまりの月曜日 、こまりは何も始まらない月曜日を迎える。


 さて何をしようか。 これいって、必ずしなくてはいけないことはない。とりあえず洗濯をする。 天気は快晴、気持ちの良い春の一日が始まる。

 害のないことから始めよう。 掃除機をかける。 部屋が綺麗になると自分の心も綺麗になったような気がしてくる。それが虚構であろうとも、うじうじ悩んで何も家事が終わらないよりかは都合のいい考えで 行動に移す方が結果は出る。


 どれだけ苦しかろうと、思い悩もうと、それは他の人にはわからない。 目に見えて分かるのは行動した結果だけだ。


 思いは変わる。記憶は改定される。自分にでさえ分かるのは、今この瞬間に思っていることとその結果だけだ。 人の心は曖昧で不確かで、自分自身でさえ自分を100%知ってるとは言い難い。 だからこそ、時として自分を奮い立たせるのは、自分の残した確かな結果だ。


 掃除機に 埃や髪の毛が吸い込まれていく。 掃除の必要のある少し汚れた空間に自分は生を実感する。 自分の汚した空間と綺麗にしていく自分の行動の結果を確認する。


 こまりは体力がない。気力もない。実力もない。 有限の資源に最大の結果を残すには効率よく動くことが大切だ。


 シンクに洗剤を振りかけ、トイレ掃除をしてつけおきにし、お風呂場の排水溝にスプレーをかける。つけおきしている間に、洗剤補充をしたりと動き回る。

 ながらながらながら作業で時間を有効活用する。掃除をしながら、ストレッチをする。 足を伸ばすと気持ちが良い。 掃除は運動にもなる。 少し工夫し、考え方を変えれば、一つの行動にいくつもの意味が生まれる。


 好きな歌を流し 小声で口ずさみながら動く。


 こまりは今生きている。



【今日できたこと】

 ・家と心の掃除


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