第4話 見つかった姿
夕方のショッピングモールというのがここまで混んでいると思わなかった。
歩くたびに、何かしらの紙袋を持っている大学生〜社会人のような女性や人気のカフェで買ったのか、3〜4人の小グループを作って散策している女子高生グループなどを、もう何人も見かけている。
「お、新しいコスメ出てるじゃん…これは保留かな。ネイルはこの前買ったから今日は買わなくていいかな」
「上崎さん、さっきからブツブツ呟いてどうしたの?何か欲しいものでもあったの?」
カフェから飛び出し、なりたい自分を探すため僕と上崎さんはショッピングモール内を散策しているが、彼女は目につく雑貨屋や洋服などに立ち止まり、一人呟きながら眺めていた。
「今、着ている服に、このコスメが合うかどうかを考えているの。もし、ミスマッチがあったりしたら嫌でしょ?」
「まぁ、使ってみないと分からないんだけどね」なんて言っているが、確かに欲しいものであっても、それが服に合わない場合、一から考えなくてはいけない。
(女子って気をつける事が多いんだな。ネットのニュースで見かけたりするけど、実際に見ると結構、神経を使っているというか…)
もし、私服で女性と会う機会があったら、少しはそういった経緯があったということを尊敬してあげようとふと思った。
「てか、そっちこそ何か見つけたりしたの?結構、色々な人に出くわした府だと思うんだけど・・・」
「ごめん、まだこれというやつが浮かんでいないんだ」
確かに彼女の言う通り、歩いているといろいろな人を見かけているが、どれも自分の直感に電気が走るような感覚に出会えていなかった。多すぎるせいなのか、目的が定まっていないのだろう、あまりじろじろ見るのも変に思われてしまうと感じていたので、気付いたらあまり見ていなかった。
「ふ~ん、そっか。じゃあ目線を変えてみよ。悠馬くんはどういった服を着てみたい?なんでもいいよ」
「え?服装ですか、そうですね~」
「女子はメイクが身近にあるものであるから、これがいいなとかすぐに思いつくんだけど男子はそうじゃないじゃない?だからさ、着てみたい服装で考えてみればヒントになると思うんだ」
「あ、コスプレ系は無しだからね」と念を押されて少し、周りの服装を眺めてみる。
学生服、スーツ、パンツスタイルのラフな格好、肩にかけたデニムジャケットとワンピースを着た服装…多彩なファッションがそこにはあり、参考になるものがあった。
(いっぱいあるから迷うんだよな・・・ん、あの服装って)
街を歩くある人に目が付き、目に焼き付ける。淡いピンクのスカートに白色のシャツ。肩にはオシャレでかけているデニムジャケット。靴は歩きやすいようなスニーカーでそれに合わせるようなメイクに、髪をあげた髪型であった。
彼女の服装は決して奇抜ではなかったし、女の子らしい服装ではなかったが、女性らしいという僕の好きのラインに触れる服装であった。
「あそこの人の服装。ちょっといいかなって思います」
「ん?・・・へぇ~いいね!女性らしいし周りに浮いた服装でもないね!」
「よし、そうと決まれば洋服とコスメを買いに行こうっか!善は急げって言うし合うやつ買いにいこっか!」
「え!ちょっと上崎さん!?」
彼女は僕の手を引き、走り出す。その日の後半は、僕の買い物でサイズなど極力大きめのものを探し回っていった。
「いっぱい買ったね~!今度はメイクの練習でもする?それとも、また買い物でもする?」
「そうだね・・・メイクの練習をしたいかな?上崎さんはどう?」
「別にいいよ、じゃあまた後日に場所とか考えよ」
そうして時刻も午後9時頃に差し掛かっていたし、解散をして僕は帰路に立った。
(楽しそうだったな・・・彼女)
年相応の笑顔、彼女はきっと友達の間でもあのような笑顔を出しているんだろう。次はいつ出会えるか、メイクの練習をするけど同じ笑顔を出してくれるだろうか。
今日はその笑顔を引き出せる自分に頬を緩めた。
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