第17話 共闘

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 志保との電話を切った俺は、少しずつ移動を開始していた。


 裏山の裏側まで逃げていたため学校まで戻るにはやや時間がかかった。

 元の道を進むのではなく遠回りして校舎の近くまで戻った。


「ふぅ、やっと戻って来れた」


 志保たちと合流しなくては。

 電話では体育館の裏にいると言っていたので、体育館裏に向かった。


 しかし、そこに志保たちの姿はなかった。

 ポケットからスマホを取り出して志保に電話をかけようとしたら裏山から祥平と海沙が降りてくるのが見えた。

 距離があるのであっちからこっちは見えづらい。


 祥平は俺に気付いていないみたいだ。

 だが、こっちに向かって来ているので俺はここから離れることにした。


 グラウンドに出て、テニス部の部室に入り内側から鍵をかけた。

 ドアの一部は、ガラスなので外から割られたらおしまいだ。それでも少しは時間を稼げるだろう。


 部室にあったソファーに座る。思っていたよりふかふかで気持ちよかった。

 一先ず逃げ切ったという安心感から溜息を吐いた。


 スマホの連絡先から志保を選択したとき、スマホが鳴った。


【隠した拳銃が2箇所とも発見されたので特別ルール2を終了する】


「終了!?」


 志保たちが見つけたのか他のチームに先を越されたのか確認するべく、ようやく志保に電話をかけた。3コール目で志保は出た。


『洋一くん、あのね、探したんだけど見つけられなかった』


「俺はあれから探すことさえ難しかったよ。今どこにいるの?」


『グラウンドの奥の茂みの中にいるよ』


「おっ! 割と近いな。俺は今テニス部の部室にいるからこれからそっちに向かうね」


『うん。わかった。待ってる!』


 電話を切り、鍵を開けて部室を出た。

 校舎の方に人がいないことを確認してから、グラウンドの奥にある茂みに向かった。草を掻き分けて奥の方に進む。


「志保~、芽以~、ありす~。いたら返事してくれ~」


「はーい。こっちこっち」


 茂みの中からありすが出てきた。


「おうありす、志保と芽以はこの奥?」


「そうだよ。洋一くん、大丈夫だった?」


「あぁ、なんとかね」


 はははっと笑ってみせ、泥だらけになった服をありすに見せる。

 お互いに体験した出来事を話しながら茂みをさらに進んだ。


「洋一くん!」


「志保、芽以! 怪我がなさそうで良かった」


 茂みの奥の開けた所に志保と芽以が座っていた。俺と芽以も座った。


「洋一くんも大丈夫だった?」


「うん。俺もなんだかんだあったけど大丈夫だよ」


「拳銃は見つからなかったけどなんとかなるかな?」


「うーん。拳銃が何個隠されていたのかが分からないと何とも言えないかな。人数的にもAチームの方が多いし。でも、何をする上でも絶対ってことはないから、やり方次第でどうにでもなると思うよ」


 俺と志保、芽以で話しているとありすのお腹が大きな音で鳴った。


「へへへっ、お腹空いちゃった」


 もう何日も食べ物を口にしていない。


「ありす、ガムならあるけどいる?」


 ありすにガムを差し出す。


「えー、ガムじゃお腹いっぱいにはならないよ。でも貰う」


「お、おう」


 ありすはガムを受け取り、すぐに口の中に入れた。

 それを見ていた志保のお腹も音を立てた。


「ごめん、洋一くん、私も貰っていいかな?」


「いいよ全然」


 志保にもガムを渡した。俺もガムを口の中に入れた。

 ぶどう味のガムを噛みしめていると4人のスマホが同時に鳴った。


【特別ルール3:1度だけチームの変更を認める。変更したい場合は加入先のチームの人と握手をすることで変更が完了する】


「これってみんな同じチームになればゲーム終わりじゃん!」


 ありすが嬉しそうな声を上げる。


「そんな上手くいくか?」


 それに、敢えて運営はゲームを終わらせるようなルールを追加するだろうか。

 だが、上手くいけばこれ以上犠牲者を出さずにゲームを終わらせることができる。


 しかし、どうやって他のチームとコンタクトを取ろうか。どうするか方法を考えていると着信音が鳴った。


 祥平からだった。無視してもよかったが、こうゆう状況なだけに仕方なく出た。


「はい」


『洋一、お前のせいで琴美と朱莉が死んだぞ』


「おい、人のせいにするなよ」


『お前が協力してればこうはならなかった』


「色々やってるくせに自分がピンチになった時だけ人に頼るのがおかしいんだよ。祥平だって蓮を撃っただろ。俺は謝らないぞ。」


『ちっ、それは後で話すとして、メール見たか?』


 祥平は舌打ちをした。


「特別ルール3だろ」


『そうだ。お前はどうする?』


「どうするって、全員同じチームになればゲームが終わるだろ」


『俺と海沙は、洋一のチームに入るよ。Cチームは、人数も少ないしこのままだと全滅する』


「祥平が俺のチームにか?」


 志保と芽以とありすが俺の顔を見た。


『ゲームを終わらせたいんだろ。それは俺も同じだ』


「それはそうだけど」


『俺がお前のチームに入れば見つけた拳銃もお前のチームに分けるぞ。こんないい話はないだろ』


「祥平からこんな話されると何か裏があるんじゃないかって不安になるよ」


『なんもねーよ。安心しろって』


「じゃあ、わかった。どこで会う?」


『俺と海沙は、プールの近くにいる。洋一は?』


「そうか。じゃあ、プールの近くまで行ったら電話するよ。そこから動くなよ」


『はっ? わかった。早く来いよ』


「あぁ」


 電話を切った。

 祥平に現在地を聞かれたが答えなかった。完全には信用できない。

 それに祥平のことだ。言ったら奇襲をかけられるかもしれない。


「祥平がこのチームに入りたいらしい」


「祥平くんかー」


「これもゲームを終わらせるためには必要なんだよね」


「うん。それに祥平以上に葵と武の方がやばい。今は味方を増やして損はないと思う。みんなも一緒に来てくれ」


 多少不安を残したままだが、祥平と海沙に会うためプールに向かった。

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