世界樹の命日
@PM245
エピローグ
世界樹──それは悠久の時を生きた巨大な樹木。
上を見上げれば遥か遠くに緑の屋根。そしてそれを支えるのは堂々とした幹。円を描くように持ち上がった根は外界からの侵攻を許さぬとでも言うように世界樹を包み込む。そして根の内側にはひとつの街が抱かれていた。名前は無かった。なぜならその街は世界樹が支配していたたったひとつの世界だったからだ。
幾重もの枝葉に遮られた暗い日常。世界樹へと向かわせられる傀儡にそれと戦わせられるぬいぐるみ。ヒトと魔物は世界樹の外と中で棲み分けられ、ともに世界樹の理で生きてきた。おままごとのようなわがままで小さな世界。
だが、それもこれでおしまい。
世界樹は燃えた。俺が燃やした。中の魔物も根本のヒトも大切な仲間もあの人も、世界のすべてを俺が、この手で。
「あかるい…」
でもそのおかげで俺は本物の空を手に入れた。本物の光に触れて、本物の風を感じている。目が突き刺さされるほどの明るさなんて初めてで、痛くて痛くて涙が止まらない。聞いたこともない音がいくつもいくつも重なって、耳がとてもくすぐったい。五感だけじゃない。脳まで無理やり侵されて身体がはじけ飛んでしまいそう。これがかつて世界樹によって封じられてきた世界。なんてなんてなんてなんて──
「せつない、なぁ……」
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