ジョニダン・イジーチは体脂肪で魔法を使う。

キングチキンカツ

第1話 しゃべるオークが来た

「しゃべるオークが来たー」

「えへへ、しゃべるオークだー」

「あははは」

 集まってきた村人的な人々が俺の前を走っている。

 俺はため息を吐きつつ、また叫ぶ。

「だからー、オークじゃねえって言ってるだろーが。がー」

 あっ、ちょっとそこの奥さん、赤ちゃん抱っこしながら走るの止めてね。危ないからね。



 第一村人的な人に発見されて、何人か集まってきて、オークだ・オークじゃない的押し問答をして、なんだかんだあって、今はナマハゲ的なお祭りの最中(さいちゅう。モナカじゃない)である。

 野原の真ん中で円を描くように逃げる村人、追う俺。小走りよりちょい遅め。小さい子もいるので、デカい俺は歩いたり走ったりくらい。

「なあ、ぼちぼち晩飯の準備とかしなくていいのか。チビちゃんたちは水分あげないと脱水になるぞ」

「ダッスイって、なんだ?」

 最初に突っかかってきた村人一号の少年が並走しながら聞いてくる。

「のどが乾きすぎて、体が弱るんだよ。小さい子は体の中の水がなくなりやすいんだ。小さい入れ物の水はすぐになくなるだろう?」

「そうか!」

 一号少年は小さい子たちを集めて、先に村に連れ帰るようだ。えらいぞ、お兄ちゃんな感じだな。



「はあ、はあ、たまには体を動かさないとねえ。ところで、あんたは結局なんなんだい。話しも通じるようだし。うちのトキオもなついたようだし」

 一号少年が去った後、今度はすぐに肝っ玉母ちゃん風の女性が声をかけてきた。ちょっと太めなんだが、なかなかの美人でゆるくうねる赤毛が汗で首筋貼りついている感じも、なんか、いい。

「やだよ、あたしをそんな目で見て。人妻だし、おばさんなんだよ。・・・ああ、あんた、イホージンかい?なんでイホージンが裸なんだい?まさか・・・最中(さいちゅう。モナカじゃない)だったのかい?やだよ、スケベ。」


 イホージン?サイチュウ?

 異邦人。そうそう、異邦人。

 サイチュウ、モナカ、もうええっちゅうねん。

 裸じゃねえわ。これは「まわし」。戦闘着。

 これを着て戦うのが仕事だったの!


「そのイホージンって、結構来るのかい?俺のしこ名は伊地知だ。」

 少しばかり呆けた俺がそう返すと、自動翻訳的なものが困ったのか、おっかさんの返しまでに少しタイムラグが出た。


 うーん、これはどうしたもんかねえ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る