元・探偵悪役令嬢「フレーバー・テキストでお茶会を開きましょう」【第一編・完】

小花ソルト(一話四千字内を標準に執筆中)

第一編

序章   生まれ変わっても、なお

第0話   早いうちから前世の記憶が。今では名高き悪役令嬢!

 子だくさん伯爵家の真ん中に生まれたお嬢様は、五歳くらいからでしょうか、


「わたし、ぜんせは、たんちぇいでしたの!」


 なんてお可愛らしいことをおっしゃるものですから、最初はお遊びにお付き合いする形で、ご同行しておりました。


 お嬢様は彼ら「あやしいひと」たちの私物を手に取ると、


「ふむふむ……」


 と、むずかしいお顔でうなずかれるものですから、とても微笑ましく見守っておりました。


 ところが、ある日のこと……


「ダリア! お前を我が管轄内の森の屋敷へ軟禁する。この親不孝者が! 一族の面汚しめ!」


 お嬢様は、絶対に触れてはならない秘密に接触し、解明し、そして森の奥深くへと、若干五歳にして移されることになりました。


 ですが……


「さようなら、おとうちゃま。ダリアはいつまでも、かじょくみんなのことが、だいすきでしゅわ!」


 小さなカバンを片手に、嬉々として馬車に乗り、お屋敷を出てゆくお嬢様の後ろ姿を、呆気に取られたままお見送りした日が、つい昨日の出来事のように思い起こされます。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る