花咲いて十年

「私と貴方が結ばれて、もう十年になります。結ばれたというのは違っているかもしれませんが、まぁ良いではありませんか、ねぇ」

 ぽつりとそう問いかけて、十年前にもらった指輪を外してそっと置いた。

「この指輪を覚えていますか?覚えているでしょうとも。貴方がくれた最後の贈り物ですもの。懐かしいですね。あの頃、私はまだ学生でしたから、その…何というか…ねぇ。許嫁なんてものを簡単に受け入れることは出来ませんでしたから…。そうそう、私が突っぱねて川に落ちた指輪を一生懸命に探す貴方ったらもう可笑しくて可笑しくて、あの時から貴方を…」

 徐に立ち上がって墓石に被った雪を払いのける。

「お義父様に無理を言って失踪宣言を三年だけ延ばしてもらいましたが、結局貴方の生死すら分かりませんでした。貴方の遺骨も埋まっていない墓に何の意味があるのでしょうね。私には分かりません」

 さようなら、そう心の中で呟いて雪を踏み鳴らした。

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