漁夫のフリオ
南米の小さな港町に、フリオという一人の漁夫がいた。
フリオは、名漁夫として知られ、彼の船には魚が自ら飛び乗ってくるなんて言われた。
寡黙な男で、一人静かに暮らしていた。
毎日おんぼろの小型船に一人乗り、町で一番の成果を上げるもんだから、その技術を盗もうと、フリオ観察船なんてものが沖に出ていることもあった。
一人の者が弟子にしてくれと頼み込んだ事があったが、フリオは決して首を縦に振ることはなかった。
青い空に穏やかな波が繰り返す、そんなある日の事だった。
フリオが沖に出て船をアンカーで留めて、浅い眠りに就こうとしていると、海底にやったはずのアンカーに繋がれたロープがみるみると引っ張られていくのを感じた。
その勢いは収まることを知らず、まるでジェットスキーのようにして、フリオを乗せた船は遠洋に消えた。
それを見た者は、あれは幻の大魚だと証言しているが、その真偽は彼の海のように凪いだままだ。
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