死神のオイルライター

 深夜の街を眺めながら、近所の高台にある喫煙所で紫煙を燻らせていた。

 喫煙者には肩が狭い世の中になったせいか、喫煙所には俺ひとりだ。

 なんて考えているうちに1本目を吸い終えた。

 それを灰皿に捨て、次の一本を取り出す。

 こいつは最近買ったバニラ風味の品で、思いのほか気に入っている。

 そして彼女が誕生日に送ってくれたお気に入りのオイルライターを取り出す。

 それを見てか酔っ払いの男が声をかけてくる。

「イカしたもん持ってるんだねぇ、兄ちゃん。おいらもね、ほら。」

 人差し指と親指でつまんだ真っ黒なオイルライターを見せてくる。

「こいつで吸う一本は格別なんだ。」

 そう言って男は強引に火を俺の口元へと運ぶ。

「うまいでしょ。なんせ特別なオイルでねぇ。」

 へー、特別ね。

「オイルが切れそうになると、よくここへ調達にくるんです。」

「今日もそれで?」

「はい。ですから頂いても良いですかなぁ。あなたの脂。」

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