約束の時計台

「この時計台が青色に染まる時、ここで貴方を待っています。」

「必ず帰ります。」


 それが、私が戦地に向かう前に彼女と交わした唯一の約束でした。

 あれからもう四年が過ぎていました。

 未だに約束を果たせずにいました。

 彼女は待っているでしょうか、あの時計台の元で。

 少し不安になります。

 まだ少し時間がありますから、時計台の話でもしましょうか。

 あれは少し変わった代物でした。

 時間が流れると時計の盤面の色が変わるのです。

 色は時間帯で決まっていて、遠くからでも大まかな時間が分かるようになっていました。

 約束の青色は、夕方四時から八時の色です。

 ちょうど時計台が見えました。

 茜色に押しやられ縮んだ空の青を繋ぎ留めるようにして、青く時間を刻んでいます。

 次の瞬間、私は走り出していました。

 肘から先を失くした右腕も懸命に振って走ります。

 息も絶え絶えですが、伝えねばなりません。

「今帰りました。」

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