アーチ

 そのアーチは、いつもと変わらずそこに、たっている。

 霧に隠された表情で、今日も街を見下ろしている。

 僕がふと目線を上げると、いつもそこには彼がいる。

 そんな彼を見ていると、思う。

 この街のどこがそんなに面白いのか。

 僕は、考えてみる。

 行き交う人に、車、バス。そんなものを眺めているのだろうか。

 いや、もしかすると、川や草木の自然に興味があるのかもしれない。

 はたまた、ビルや家、建造物に惹かれているのかも。

 色々考えを巡らせるが、彼に確認する術はない。


 キーン。

 と、錆び付いた金属が触れ合う音が聞こえる。

 子供が一人、ブランコに手をかけ、無邪気な表情で遊んでいる。

 草木が揺れる。

 その奥には、忙しない日常が流れている。

 こうして街を眺めていると、なんだか少し心地よくなる。

 柔らかくて暖かい気持ちに気付く。

 きっと彼も同じ気持ちなんだと、僕は晴れた頭上に目を向ける。

 そこに表情はない。

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