水夫さんの毎日400字ショートショート短編集(休載中)

日笠山 水夫

雪の降る町

 僕は旅人。

 広大な大地を歩き、目に映る景色をスケッチすることが大好きな旅人。


 十日ほど前に寄った町から随分と歩いた。

 ここ数日は、砂漠のような無機質な大地が続いていた。

 少し先に町が見えた。

 大きな山をその奥に従えて、その町はあった。

 安堵の息と共に、喉が鳴った。

 水が欲しいと、飯が食いたいと、僕の喉が鳴った。


 その町に着いた。

 人通りはなく、とても静かだった。

 それも無理もないことだと思った。

 なぜなら、出かけるような天気ではなかったからだ。


 僕はその時、初めて雪を見た。

 それにしても美しい景色だと思った。


 ひらひらと、ゆらゆらと。

 白いカケラが、上から下へと、下から上へと舞っている。


 腹ごしらえが済んだら、この景色を描こう。

 そう思った。


 ふと、体の芯にまで響くような脈動を感じた。


 しばらくして、全てを圧し潰すような轟音が響く。

 その音の元を探す。


 僕は、山を見た。

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