第4話・最終手段
ギルベルトがフェンリルとベルの仲を許した事で、オウンドーラ王は、次の手を考えなくてはならなくなった。
一番良いのは、ベルが無事であった事と、フェンリルとの仲を祝福した上で、どうか全てを水に流してくれないかと頼み込み、再びギルベルトに東の森の砦を、そしてフェンリルに西の森の砦を守ってもらう事なのだが、彼らが了承してくれるとは思えなかった。
彼らは、この国を出ると言うだろう。
それは、ベルの身の安全を考えての事でもあるだろう。
ベルを医者に診せたいと思っているかもしれない。
だけどそれなら、森の砦でなくとも、この国に留まり、王都オフレンドで暮らしてくれないものだろうか。 だけどそれなら、この国に留まり、王都オフレンドでちりょうをしてくれれば……森の砦ではないが、ギリギリのラインで引き続きこの国を守ってもらえるのではないか。
そんな様々な事を考えながら、オウンドーラ王はギルベルトとフェンリルに声をかけた。
「ギルベルト、フェンリル、二人とも、今まで通り東と西の森の砦を守ってくれ! それが無理なら……この王都オフレンドに留まってもらえないだろうか? ベルは体が不自由なようだ。オフレンドの医者に診せればいい。ここで体を治せばいいだろう」
オウンドーラ王はそう言ったが、残念ながらギルベルトとフェンリルは首を横に振った。
彼らは、この国を出て行くという考えを変えるつもりはないようだった。
「どうしても、出て行くか」
「オウンドーラ王、何度も言わせないでいただきたい。ベルが生きて見つかったとはいえ、私はこの国が娘にした仕打ちを忘れない」
「こっちもそうだ。もう契約は二か月も前に切れている。俺たちは、もうこの国のために戦うつもりはない」
「ギルベルト、ベルの身に起こった事は、全てあのトマスというコールド伯爵家の息子がした事だ。私は何も知らなかったのだ。そしてフェンリル、契約更新の話が遅れて申し訳なかった。再度お前たちと契約がしたい。金は、以前の三倍、いや、五倍支払おう。それでも、駄目か?」
「くどい」
「あぁ、しつこいぜ、オウンドーラ王」
ギルベルトとフェンリルは、やはり首を横に振った。
どんな条件を出しても、考えを変えるつもりはないようだ。
「仕方ない、か」
オウンドーラ王は深いため息をつくと、俯き、言った。
そして再び顔を上げると、王宮中に響き渡るような声で、叫ぶ。
「我が王国の騎士よ! 兵士たちよ! ギルベルトたちを捕らえよ! そして、ベル・ガンドールを手に入れるのだ!」
「はっ!」
オウンドーラ王の合図と共に、屈強な騎士や兵士が謁見の間へと駆け込んできて、ギルベルトたちを取り囲み、武器を向けた。
「ひっ……」
突然現れた騎士や兵士たちに囲まれ、ベルはフェンリルの腕の中で、小さく悲鳴をあげた。
「大丈夫だ、ベル。何も怖いことはない」
「そうだ、ベル。お前は何も心配しなくていい。私が今度こそお前を守ろう」
「でも……」
ベルはちらり周りを見渡した。
自分たちを取り囲む騎士や兵士たちは、剣や槍だけでなく、弓矢や銃まで持ち出しているのだ。
兵士たちの奥には、ローブを着ている者もいる。魔導師かもしれない。
「王よ、何故、あなたがベルを手に入れようとするのだ!」
ギルベルトの問いに、王はニヤリと笑うと言った。
「ギルベルトよ、こちらも乱暴な事はしたくないのだ。だが、わしはこの国の国民の命を抱えている。国民のためにも、お前たちに手を引かれては困るのだ。ベルには、お前たちをこの国に繋ぎ止める足枷になってもらう」
「オウンドーラ王、あなたという人は!」
「ギルベルト、お前たちが素直にこちらの言う事を聞かないからだ」
オウンドーラ王はそう言うと、ちらりと騎士の一人へと視線を向けた。
騎士は仲間の騎士や兵士たちに合図を送ると、視線をオウンドーラ王へと戻し頷く。
「大丈夫だ、ベル。俺が守るから」
フェンリルがそう言って、ベルの体を隠すように抱き込んだ。
その前にギルベルトが立ち塞がる。
タイラーや、マディ、チェスターも、ベルを、守るように周りを囲んでいた。
これなら、確かにベルは守れるかもしれないが、他のみんなが重傷を負ってしまうではないか。
「これじゃ、みんなだけが怪我してしまうっ!」
「大丈夫だ、ベル。俺たちは日頃から魔物と戦っている。こんな攻撃くらい、なんでもない」
「そうだ、ベル! 気にするな。私たちは、大丈夫だ」
「でもっ!」
確かに彼らは日頃から魔物たちと戦っている傭兵だが、ただで済むとは思えなかった。
今この場で攻撃されて、死にはしなくても、きっと重傷を負ってしまうだろう。
そして自分はオウンドーラ王に捕らえられ、彼らの足枷にされるのだ。
そんなのは、嫌だった。
「やれ!」
オウンドーラ王が叫ぶ。
ベルはフェンリルに強く抱きしめられながら、その声を聞いていた。
そして、フェンリルにしがみつきながら、防御魔法を使う。
自分が心から信頼している人たちに守られながら使った防御魔法は、彼女の思い通りに展開し、中央に固まった傭兵たちを光の壁が包み込む。
そしてあの日、魔狼たちを光の壁の外に弾き飛ばしたように、騎士が振るう剣や槍も、兵士が放つ弓矢や銃弾も、魔導士が唱える炎の呪文をも跳ね返した。
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