第7話・家族崩壊


「私は一体、どうすればいいんだ……。オウンドーラ王に、何と言えばいいのだ……」


 タイラーとマディが立ち去り、残されたのは、僕ら家族だけだった。

 父さんは暗い表情で俯き、ずっと何やらブツブツ言っている。

 母さんは蹲り泣いていて、ウォルト兄さんは頭を抱えていた。

 そしてアラン兄さんは、僕に本物のベルがどこに居るのだと、詰め寄った。


「トマス! ベルはどこに居るんだ! 頼むから彼女の居場所を教えてくれ!」


「知らない! 本当に知らないし、わからないんだ!」


「トマス! わからないはずがないだろう! お前、まさか、まだ事の重大さがわかっていないのか?」


「そんなもの、知るか! 僕に隠してた事じゃないか! だいたい、アラン兄さんがベルの事を好きだったのなら、アラン兄さんが彼女と結婚したら良かったんだよ! どうしてそうしなかったんだ!」


 そうだ、そもそもアラン兄さんがベル・ガンドールと結婚をしていれば、こんな事にはならなかったはずなんだ。


「それはっ……俺は東の第二砦を守らなくてはならないから……。ベルは王都に居なければならないから、結婚しても離れ離れになるって、父さんが……」


「父さんが?」


 僕は暗い表情で俯いたままの父さんへと視線を向けた。

 父さんは顔を上げて僕を見たが、何も言わなかった。

 代わりにウォルト兄さんが答える。


「父上は、お前の将来を心配していたんだ。だから、ベル・ガンドールとの結婚の話を、アランに諦めさせてお前に回したんだ。お前は体が弱くて、王立騎士団にも入れないから……」


「そんな心配は、父さんたちの勝手じゃないか! 僕は平民になっても良かったっていうのに!」


 元々、僕は将来、自分は平民になるのだろうと思っていた。

 だから、その準備さえしていたんだ。


「でも、愛する人ができて、欲が生まれた。僕は、愛する人とより幸せになれるように、行動しただけだ!」


「それが、花嫁のすり替えだって言うのか! お前、頭がおかしいんじゃないか!」


 そう叫んだアラン兄さんが、僕を殴った。

 父さんも母さんも、ウォルト兄さんも、殴られる僕をただ見ているだけで、アラン兄さんを止めようとはしなかった。

 ねぇ、どうして助けてくれないの?

 僕はそんなに、いけない事をしてしまったの?


 頭がおかしい?

 そうなのだろうか?

 僕は頭がおかしいのだろうか?

 だから、こんな事をしてしまったのだろうか?

 でも僕はただ、ベルと幸せに暮らしたかっただけだ。

 僕の愛したあのベルと、幸せになりたかっただけなんだ。




 それから、どれくらいの時間が経った頃だろう。

 屋敷の外が騒がしくなってきたと思ったら、大勢の人間が屋敷の中に駆け込んできた。


「コールド伯爵は、ここに居るか!」


 屋敷に駆け込んできたのは、オウンドーラの兵士だった。

 兵士の中でも一番上位と思われる男が、父さんを見つけ、近寄った。


「我々は、オウンドーラ王の命を受け、こちらに来た。全員、王の元へ来てもらおう」


 男がそう言った瞬間、僕らは兵士たちに囲まれて……全員まとめて馬車に押し込められ、オウンドーラ城へと連行された。

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