#3 改めて、初めての異世界! ん? 生きていけるとでも思ったか?
女神様のご厚意?により、地球っぽいところへ転移させてもらうことになった。
いや、宇宙空間に着の身着のままで投げ出されるとかムリゲーすぎるからね。
最初に「チートください!」ってお願いしたけど、流石に「真空でも生存できるチート」なんてカケラも思わなかったよ。
まさか真空に放り出されるとか、地球人的にはナナメ上すぎてカケラも思わないでしょ。
いやまあ、どちらにせよ、チートは一切貰えなかったんだけどね。
ん? 世界のバランスを崩すようなチートはダメってことだったけど、真空生存チートはアリなのかな?
『駄目です。転移先の世界に存在しないものは許可できません』
あ、さいですか。
あれ? でも、行けると思ったから宇宙空間に転移させたんじゃないの?
『あらかじめ保持している特性であれば、転移先の世界に存在していなくとも問題はありません』
あ、うん、そんな強靭な身体だと思われたんですね。
どこかにそういう種族も居るんですかね。
そんな人たちを相手にしたら、基本性能が違いすぎて軽く肩を叩かれた程度でも滅殺されそう。
『では、改めまして。新たな世界での活躍を期待していますよ』
◇
目が覚めた。ぱっちりと。
恐る恐る辺りを見回してみる。
あおいそら、しろいくも。
周囲は草原、遠くには山やら森やらが見える。
おー、今度はちゃんと異世界っぽいです。
女神様ありがとうございます。
しかし、何だろう。
妙に息苦しいんだけど。
何というか、ちゃんと空気が吸えていないような感じ?
とりあえず深呼吸だ、深呼吸。
すってー、はいてー、すってー、はいてー。
ぐっ。なんかどんどん苦しくなってくる。
なんだこれ。
ううっ、目が霞んできた。
やばい、パニックになりかけてる。こういう時も深呼吸だ。
ひっひっふー、ひっひっふー。
いや違う、それは妊婦さんだ。落ち着け俺。深呼吸、深呼吸。
すってー、はいてー、すってー、はいてー。
途中、急にむせてしまい、げほごほと咳き込む。
口元を押さえた手に、生暖かいものが掛かる。
霞む目に映るのは、真っ赤な、液体。
どこから出てきた? 多分、俺の口から。
ぐうう。立ってられない。
目が回る。
左半身に鈍い衝撃。多分倒れたんだと思う。
感覚が遠くてよくわからないけど、多分そう。
うう……苦し……
誰か、救急車……を……呼ん……
◇
気が付くと、再び真っ白い空間に戻っていた。
『また戻ってきたのですか、第三界の方?』
若干呆れたような女神様の声。
いや、待ってください。
なんか急に体が不調になったんです。
特に何もしてないのに死んでしまいました。多分。
パソコン初心者とかで、自分がおかしな操作をした挙句「何もしてないのに壊れた!」っていう人が一定数いるけど、多分それとは違うと思う。
……違うよね?
俺、突っ立って深呼吸してただけだし。
『確認しますね。……ふむ、あの世界の大気組成が原因かもしれませんね』
たいきそせい?
『空気の成分ですね。簡単に言うと、第三界の方の物理体にとっては軽い毒となったようです』
空気が毒!?
またしても殺る気マンマンじゃないですか!
『毒と言うよりはアレルギーに近く、しかも耐性が非常に簡単に得られるタイプですね。数分もすれば順応できるはずなのですが』
順応する前に死んじゃったってこと?
俺の体質とかがまずかったの?
『ああ、深呼吸してしまったのですね。それで一気に大量摂取してしまい、耐性を得る前に致命傷となったのですか』
まさかの、死因:深呼吸でした! マジか!
そういえば、食物アレルギー持ちの人から聞いたことがある。
アレルギーの元となる物質を摂取すると喉とかが腫れちゃって気道が塞がれる、つまり呼吸がやりづらくなるんだって。
アレルギー反応の強さは、当然ながら摂取した量に依存する。
微量が含まれてたのを気づかずに摂取したくらいなら、腫れてとても苦しい、けれどどうにか無事に済むけど、「ワガママ言わずに食べろ!」とかって無理に食べさせられたら本気でヤバイらしい。
アレルギーを好き嫌いの範疇だと思い込みたい人が少なくない、お前らはこっちを殺す気か、とかって愚痴ってたな。
俺の場合は、苦しかったりとかで深呼吸して大量摂取しちゃったから……ということか。
ちょっとずつ摂取していればすぐに耐性が出来て腫れも引いたのに、一気に大量摂取したお陰で最悪の事態になったわけだ。
でも、あの状態で「はっ? これは……アレルギー反応! 呼吸を抑え気味にして耐えるんだ!」って思いつく人、どれだけ居るのかな。
少なくとも俺は無理だぞ。
『第三界の方は迂闊です。過去にあの世界へ転移した方は、特に問題が無かったのですよ?』
うっ、そうなのか?
そう言われるとそんな気も……いや、無理無理。
呼吸が苦しければ深呼吸する。これ人間の摂理。
パニックしかけたら深呼吸して落ち着く。これ人間の知恵。
人間辞めますか、それとも呼吸やめますか。
うん、そんな究極の選択は嫌だ。
『とは言え、過ぎてしまったことは仕方がありません。もう少しだけ、かつての世界と似たようなところへ送り届けることにしましょう』
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