第6話

暗闇の中で目が覚めた。


ベッドの上半身がゆっくりと上げられ、ぼくは半分座ったような状態にされた。両腕と両脚のベルトが外され、右腕が机の上に載せられた。誰かが僕の手を誘導する。


これは、コップの持ち手だろうか?


掴んだ。誘導され、口元にまで近づく。


香ばしい香りと湯気、温かいお茶であろう。


口につけ、ゆっくりと口に含み、飲み込んだ。麦茶だった。


「……っ!」


強く咽せた。背中をさすられる。


ゆっくりと、ゆっくりと、コップのお茶を飲み続け、そして飲み干した。


しばらくして出汁の香りが漂ってきた。湿気を顔に感じた。誰かが僕の口にスプーンをあてる。口を開けると、微かに塩味のある、これは卵豆腐だろうか?久しぶりの食事だったので、よく味わい飲み込んだ。


次にお粥、次はサラダ、味噌汁、魚の切り身。


それを何度も繰り返して、ようやく落ち着いた。


すると、出汁の香りは薄れていき、僕の左腕が机に載せられ、点滴を留めてあるテープを剥がし始めた。少しヒリヒリする。またアルコールのツンとした臭いがし、針が抜かれたようだ。


腕が軽くなった僕はまた自分の耳に触れてみる。何もないし、詰め物なんかされていない。瞼を触る。目は確かに開いているが何も見えない。


お腹だけが満たされた。

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