『通勤』 21


 オールマイティー司書さまは続けた。


 『そもそも、あの手稿に関しては、あなたの方が詳しいでしょう。隠れて勉強していたみたいだし。』


 『さっぱりわからない、て、いうことは分かりましたけどね。』


 『まあ、いいでしょう。昔から、ヴォイニッチ手稿については、そもそも、でたらめだ、という、意見や、宇宙人が絡んでる、という、あなたが言うころの、オカルト的な考えもありました。しかし、いまや、宇宙人が堂々と地球を闊歩し、我々の生活にも入り込み、火星にだって、事実いるわけですから、もはや、オカルトではないかもしれない。』


 『連中が、おいらたちの先祖が書いた、と、白状しましたか。』


 『まあ、そう言った、とは、聞いてないですけれど、司書長官が、警察に渡すのに、ストップを掛けた。』


 『ほんとに?』


 『ほんとですよ。』


 『そりゃ、反乱だ。』


 『まあ、そこまでは、いっていません。しかし、警察としては、押さえておきたい資料なわけです。あなたが乗っていたバスに突っ込んだ、また、あなたの前に現れて、資料請求した人物ですが。』


 『わかりましたか?』


 『公表はされていませんし、しかし、まあ、地球人ではなさそうです。おそらく、どこかの星のスパイさん。』


 『なんで、わざわざ、バスに突っ込んだんですか。』


 『突っ込みたかったわけではなくて、コントロールを失ったのでしょう。たぶん。』


 『たぶん。やな、言い方ですな。ぼくに、どうしろと?』


 『まず、あの人物の資料を、こちらに、ください。』


 『いいですよ。そんなことだとは思ったから、ここにあります。どうぞ。』


 『ども。』



 氏名 ヨーグルスタイン・オーグ

  

 住所 月 第25居住区 43


 連絡先 mt.800.793.1569



 『あからさまに、偽名ね。連絡してみた?』


 『まだですよ。やりますか?』


 『もちろん。』


 オールマイティー司書さまは、通信装置をいじった。


 『使われていません。よく、相手をお確かめください。だそうです。』


 『なるほど。』


 『ふん。でも、この住所は、実在してますね。月の巨大マンションみたいですね。実際に住んでいる可能性は、少ないわね。』


 そこに、オールマイティー司書さまの秘書、マヤコが入ってきた。


 この人も、オールマイティー司書試験を目指していて、ひなこさんの強力なライバルであった。


 しかし、上司が、より強力なのは、認めざるを得ない。


 『オールマイティー司書さまに是非会いたいと言って来てる人がいて、アポなしはだめといったのですが、この名刺を見せてくれと。』


 『ほう。ファンかしら。』


 『オールマイティー司書さまは、ファンには縁遠いね。』


  

 しかし、それを見て、僕らは、顔を見合わせた。



 『私立探偵 ヨーグルスタイン・オーグ』



        🕵️‍♂️

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