42. 管理人さんと誕生日(中編)

42. 管理人さんと誕生日(中編)




 私は自分の誕生日に、ただのワガママで北山さんに迷惑をかけてしまっていることを悔やんでいた。はぁ……。こんなことに気を遣わせてしまって、本当に申し訳ないな……。


「……お掃除しなくちゃ……。」


 私はそんな気持ちの中、アパートの前の掃き掃除をしていく。いつもなら、この掃き掃除ですら楽しいのに……。今は、なんだか憂鬱だ……。そして、その箒が私の手から離れて地面に落ちた時だった。雪菜が学校から帰ってくる。


「あっお姉ちゃん。ただいま!」


「え?早くない?」


「うん。今日学校お昼までなんだぁ。というか……いつものように管理人の仕事してるけど、北山さんとのラブラブ誕生日はどうしたの?」


 うぅ……言わないでよ……。でも、仕方がないよね。私が悪いんだもんね……。


「北山さんの小説の執筆の邪魔になっちゃうし……迷惑だから。」


「まぁ……確かにそうかもね。お姉ちゃんがいたら北山さん書けなそうだし」


「やっぱり……そうだよね……」


 分かってはいたけど、雪菜に言われると更に落ち込んじゃうよぉ……。


「うわぁ……態度が露骨に出ちゃってるんだけど。あのさ一つ聞いてもいいかな?お姉ちゃんって北山さんと付き合ってるんだよね?」


「どうしてそんなこと聞くの?」


「なんか……付き合ってるって言うより、恋してるって感じに見えるんだよね?」


 雪菜鋭いよ……私と北山さんは小説の為に擬似カップルを演じている。でも私は本当に北山さんの事が好き。それは、雪菜にも言っていない秘密である。


 そして、私が返事をしなかったからなのか、雪菜はそのまま話を続ける。


「お姉ちゃんは初恋だから仕方ないかもか。あのね、迷惑とか思っちゃダメだと思うよ?」


「どういうこと?」


「だって、恋愛感情があるからこそ迷惑をかけたりできるんだよ?好きな人に振り向いて欲しいって思うのは当たり前だよ。それに北山さんはお姉ちゃんの事、迷惑だと思ってないとおもうよ。」


 そっか……そうだよね。雪菜の言ってることは正しいと思う。でも私と北山さんは擬似カップル……それでも、私は自分の気持ちに嘘ついちゃいけないよね。


「ありがとう雪菜。元気でた」


「妹に元気を貰う姉ってどうなの?」


「ふふっ。じゃあ私、アパートの花壇の手入れに行くから。」


 そして私は花壇の方へ向かう。まだ植えたお花たちは咲いていないけれど、いずれ綺麗なお花を咲かせてくれるはず。いつか私も北山さんとの恋を咲かせることが出来るかな……。


 そんなことを考えながら作業をしていると、2階の部屋から北山さんが私を呼ぶ。


「真白さん!」


「あっ北山さん?どうかしましたか?」


「あの!今日の夕飯の材料、一緒に買いに行きませんか!?荷物持ちくらいにはなりますから!」


「北山さん……ぜひ!お願いします!楽しみです!」


 北山さん……。やっぱり私は北山さんが好きみたいです。これからも迷惑をかけてしまうかもしれないけど、この気持ちは本物だから……。

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