33. 小説家さんとお散歩
33. 小説家さんとお散歩
早朝。オレのスマホが突然鳴る。こんな非常識な時間に誰だ?画面を見ると知らない番号だった。とりあえず出てみることにする。
「はい……」
《あっ!もしもし、おじさ……じゃなかった。北山さんおはよう!あたし》
「あたし?……詐欺?」
《まだ寝ぼけてるでしょ?雪菜だよ雪菜。水瀬雪菜!管理人の妹!将来の義妹!》
はぁ!?雪菜!?いつの間にオレの番号を……。というか今どさくさに紛れてすごい単語が出たが……何の用なのだろうか?こんな朝早くから連絡を寄越すくらいだしな。遊びとか、暇潰しではなさそうだ。
「こほん。何の用だ?」
《あのさ、北山さんさ来週の4月25日さお姉ちゃんの誕生日なの知ってる?お姉ちゃん今まで彼氏とかいたことないから言ってないと思ってさ?》
「たっ誕生日!?マジ!?」
《あと、北山さんも恋愛慣れしてなさそうだし?だから教えてあげようかと思って。》
うっ……確かに聞いておくべきだよな。真白さんは擬似カップルとしてオレと付き合ってるんだからわざわざオレに言わないだろうし……。オレは雪菜から真白さんのことを色々聞いた。もしかして雪菜はオレと真白さんを応援してくれているのかもな。
まずは、それとなく真白さんから誕生日のことを聞き出さないとな……。
そしてお昼過ぎ、オレは真白さんがアパートの前の掃除を終えるのを見計らって声をかけることにする。
「こんにちは。真白さん」
「あっ北山さん。こんにちは。この前は雪菜が失礼なことしてすいませんでした。」
「あっいえ。気にしなくて平気ですよ。それより、この後お暇ですか?天気がいいので一緒に近所を散歩しませんか?」
「お散歩ですか?はい。ぜひ!」
よし!これで真白さんと一緒の時間が作れたぞ。それからオレ達は近くの公園まで散歩することにした。春らしく暖かな陽射しを浴びながら歩くのはとても気持ちが良い。
「そういえば雪菜ちゃんは引っ越してくるんですか?」
「来週には引っ越して来ますよ。迷惑かけないように言っておきますから、心配しないでください」
「来週……あっえっと来週って何かありましたかね?」
「え?特に何もないと思いますけど……?」
真白さんが首を傾げてる。どうやら本当に思い当たる節がないようだ。そりゃそうだ彼氏でも何でもない男、しかもおっさんに自分の個人情報など教えるはずがない。しかし、ここで諦めてはいけない。少し強引にでも聞き出すしかない。
「あのですね……。ちょっと確認したいことがあるんですよね……。」
「確認したいことですか?」
「あの……その……オレと真白さんって付き合っているじゃないですか?擬似カップルですけど。」
「そっそうですけど……どうかしましたか……?」
恥ずかしそうな表情を見せる真白さん。うん。可愛いなぁ。やっぱり付き合うならこういう子だよな。おっと話がそれてしまったな。とにかく今は、真白さんの口から誕生日の情報を聞き出さなければ……。
「それでですね……。真白さんの誕生日を教えてほしいなぁなんて思ってたりして……。」
「私の誕生日ですか?あっ!すっかり忘れてました、4月25日が誕生日です」
すごく不自然だったけど、何とか真白さんの誕生日を聞き出せたぞ。よくやったオレ。
「えぇ!?来週ですか?何かお祝いしないと。欲しいものとかありますか?」
「そんな……。私は大丈夫ですから……」
「ダメですよ。ちゃんとお祝いさせてください。なんでもいいんで教えてもらえませんか?」
「じゃあ……一つだけお願いを聞いてもらってもいいですか?」
そういうと真白さんは一呼吸おいてオレにお願いをしてくる。
「北山さんのお部屋で朝から夜まで、北山さんのお手伝いをしたいんです。」
「え?オレの?でもそれは真白さんの誕生日プレゼントにならないのでは?」
「そんなことないですよ。ダメですか?」
上目遣いで見つめてくる真白さんの破壊力は半端なかった。可愛すぎる……。これは断れない……。結局オレはそのお願いを了承するしかなかった。
そして散歩を終えて部屋に戻る。
「オレのお手伝いって……もう新婚生活みたいなものじゃないか!?真白さんの誕生日なのにオレがプレゼントもらってしまった!!ヤバすぎる……幸せ過ぎる……。」
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