ガイスト・ナイトメア

書い人(かいと)@三〇年寝太郎

墓所にて

 気がつくと、知らない場所に居た。

 そこが墓場であることはすぐに理解できた。墓石が、山ほどあったからだ。

 生温い風が漂っており、湿度が高い。

 暗闇を月光が照らしており、幸いほぼ満月のために周囲は見ることができる。

 遠くではなにやら引きずるような、擦れ合うような、雑多な種類の音がする。

 明らかに自分のものではない、うなるような呼吸の音までも。

 その音は、聞こえるほどには近い。

(ここは、危険だ……)

 本能がそう叫んでいる。

 音から離れるように、遠くの森へと向かった。

 呼吸の音がさらに近づく。

 怪物(だと思いこんでいる)存在が、ついに姿を現すかというところで、森の端の木陰に隠れられた。ほとんど墓場との境界線だ。

 安全だと思い、大きく息を吸って吐く。

 後ろを確認する気にはならない。

 何者かの呼吸音が、十分に離れていくのを確認してから、広がる森へと進んでいく。

 (ここは、どこなのだろう?)

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