60.変わらないもの

「で、その日の午後に王位継承式あったんやん。その時は王家の人と、あと伸尋の家の人くらいしかおらんかってんけど……その時に正式に伸尋は王になって、私が王妃ってことになってん。で、その時に……、ラジオとかで星がどうのって言ってたやろ? あれはもう使えんからって……実は……もう、こんだけ出してても誰も見えへんってことは、うちらにしか見えへんのやと思うけど……」

 もちろん、叶依と伸尋に、今までと変わったところは何もない。

「──もしかして、あれか? 王位継いだってことは、おまえら夫婦なんやんな?」

「うん」

「えっ、ふ、ふーふ? もう? まだ十八やん」

 海帆は本当に驚いていたけれど、史は冷静に叶依の手元を見ていた。

「俺の勘が当たってたら……指輪?」

「うん。すごいシンプルやけど……ちゃんと星の模様も入ってる」

 叶依が言いながら友人たちに指を触られている間、伸尋も自分の左手を見ていた。目にはまったく見えないけれど、触ると確かにあるらしい。学校で指輪をつけるわけにはいかないからと、見えなくするように二人は両親に頼んだ。

「なんか、いまだに信じられへんけどな」

 机に座りながら、史が笑った。

「こないだ兄妹とか双子とか騒いでたのに。ビックリやな」

「うん……。あっちではもう、すごい王と王妃みたいに扱われたけど、まだ高三やし、これからも寮で生活するし」

「俺もまだ、こっちでは普通やから……。おばあちゃんに話したら、叶依をうちに呼んでも良いって言ってたけど」

「え? それ──」

「ま、まぁ、今はこのままで良いねん」

 伸尋は照れて、そのまま教室を出て行ってしまった。

「ははは。大変やな」

 史も笑いながら、伸尋を追った。

「叶依さぁ、高校卒業したら寮追い出されんのやろ? 伸尋のとこ行くん?」

 海帆が聞いた。

 寮で生活できるのは、もちろん、在校生のみ。

「うーん……伸尋のおじいちゃんとおばあちゃん、向こうの人やから安心は安心やけど……どうしよっかなぁ。寮母さんも実はそうなんやけど……置いてくれへんかなぁ」

「でも、どっちみち伸尋と住むことになるんやろ? こっちで式するん?」

「式? ああ──わからん。そんな、まだ先やから」

 珠里亜が聞いたのは、叶依と伸尋の地球での結婚式のこと。

 いつかしたいとは思うけど、今のところそんな予定はない。


「それでおまえら、なんで戻って来たん?」

 放課後、いつものメンバーが揃ってから史が聞いた。

 その質問には、伸尋が答えた。

「俺らもずっと、一生あっちでおらなあかんと思っててんけど……しばらくは向こうのこといろいろ覚えさせられてて……五日目くらいやったっけ? それまで叶依と別行動しててんけど、一緒に呼び出されたんやん。そしたらなんか、もう必要なことは全部やったから地球に戻って良いって──」

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