52.星に願いを

 叶依の呼吸が戻ったと連絡が入ったのは、それから数週間後だった。

「良かったなぁ伸尋。あこから落ちたら普通即死やけど……良かった……」

 伸尋を元気付けるために言った史も、既に目は赤い。

「でもなんで自殺しようと思ったんかな……」

 夜宵の質問の答えを伸尋は知っていた。けれど、それを言っていいのかわからなかった。OCEAN TREEから聞いたことは、まだ誰にも言っていない。


 叶依が個室に移ったと聞いてから、伸尋は毎日病院へ行った。心臓は止まったままだったけれど、それでも伸尋は時間ギリギリまで叶依のそばにいた。

 ある日、伸尋は病室で叶依の星のペンダントを見つけた。

「それ、叶依ちゃんがつけてたの。ちょっと珍しい形ね」

 叶依の様子を見に来ていた看護婦は星のペンダントを見て言った。

 この星は自分の気分とその日の天気に合わせて光る。

 そう聞いたことを思い出して、伸尋は叶依のペンダントを見た。

(……やっぱり光ってない……黄色いだけ……)

 自分のは少しだけ光っているけれど、叶依のペンダントは僅かな光も放っていなかった。まるで子供のおもちゃだ。

 しばらく叶依のペンダントを見つめ、ふと思い出して伸尋は自分のピンバッヂを取り出した。

(やっぱり……叶依あのとき、反対に見てたんや)

 ラジオで星の話になったとき、叶依は伸尋と同じものを持っていると言った。

 けれど実際は、二つの星は左右対称だった。

 伸尋の思った通り、それは一つに組み合わせることができるようになっていた。

(これって……やっぱり、そういうことなんかな……)

 その日、伸尋は、組み合わせた星を叶依の枕元にそのまま置いておいた。

 伸尋が帰った数時間後、ペンダントはピンバッヂに共鳴して淡い光を放ち始めた。

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