第19話 衝撃の情報
崋山はルルと、ゲルダの所へ行く途中、ルルに、
「崋山、良かったですね、マーガレットが生きていて、それに赤ちゃん達も無事に生まれたし」
と言われ、
「ありがとう。ルルも心配してくれていたんだね」
と、軽く返すと、
「当然です。あたしの今の生き甲斐は、崋山とイヴの幸せのバックアップですから」
と、ルルに言い切られてしまった。
「うへえ」
ルルの生き甲斐になってしまっては、崋山も、シャキッとにっこりして見せるしかない。
ゲルダはミアと、住居棟の一階応接間で、寛いでいるように見えた。見えたけど、何か気がかりが有りそうだ。
「ゲルダさん、重大な情報があるそうですね」
崋山は部屋に入ると、そう声を掛けた。ゲルダは崋山を見ると、
「あなたも内面は龍昂に似ている。でもリツさんの容姿に生き写しらしいわね。龍昂のお気に入りだったはずね。あなたを見ていると、あいつがどうしてあたしなんかを、好きだったのか気が知れないね。あの頃から、がさつなあばずれ女と言っても、おかしくはなかったのに」
「そんな謙遜信じられませんね。まだ溌剌とした印象ですよ」
「そうかしら。あなたはお世辞とか言わない気性だから、お礼でも言っておこうかしら」
横に居たミアがクスリと笑った。彼女の方は、その母親より元気が無かった。セインの死は彼女の気力を蝕んでいる様だった。ゲルダは、
「所でその重大な情報だけどね、あなた方が、知らないみたいなので、ちょっと驚いてしまったのよ。あまり近くに存在する方が、気が付かないものなのかしらね。あのアレクセイ・イワノフのお父さんも初めは気が付かなかったんだもの」
「え、もっと具体的にお願いします」
「この地球に居るのよ、アンドロイドとかじゃなく、他の銀河から来た生き物よ。それもすごく頭がよくって、人間にそっくりだけど、そっくりに見えるだけで、全くの別物の奴らよ。あたしも本当の姿かたちは見た事が無いの。人間に化けている見かけしか知らないの。擬態って言う代物よ。敵の銀河の奴らで、何処の銀河だったっけ、えーとさっき思い出しかけていたんだけど・・・」
「何だって、人間そっくりの敵で、人間じゃあない。それでもって生きているって」
「そうよ、えーと」
「ゲルダさん何を忘れたって?」
崋山は狼狽した。
「えーと、そうそう、第9銀河って言っていたわ、あの時。彼等は擬態できるの。他の銀河の人にだって擬態できるの。本部に問い合わせてごらんなさい。本当の姿も把握していると思うわ。正体は知れているはず。水の中で擬態するの。擬態したいものに取り付いて、DNAだって同じになる。違う所は、本人じゃあないって事。擬態された本人は死んでいるそうよ。周りが異変に気付くべきね。違うんだから。そしてそいつがもう一度水の中に戻ると、元の体に戻るのよ。これは奴らには逆らえない現象だそうよ。だから正体が分かる。どんな奴か知らないけど。だから連合軍の本部に問い合わせないとね。ちゃんと正体が分かっていないと、失敗は許されないわ。誰がそいつだとわかって居ないと、退治は難しいわね。アレクセイは何て言っているの。彼に分かるかしら。あら、水に漬けないとお手上げだって、言っているわね。じゃあ皆プールに飛び込ませたら。嫌がる奴は放り込むの。怪しい奴は銃を構えていて。利口だから、返り討ちに合わないように気をつけてね。これが重大情報よ。アンドロイドは近くに操る人が居ないとだめなの。大概そいつらが操っているそうよ。アンドロイドが居たら、きっと第9銀河の奴が擬態した人間が、近くに居るの」
崋山は頭を抱えてソファに座り込んだ。
「今まで地球じゃあ、そんな話は聞かなかったらしいわね。見分けがつかないから、人間で、敵に味方している奴と思われていたでしょうね。言っておくけど、テレパシーで窺った所で、すっかり擬態しているんだから、人間そっくりな感じなの。プールに入れるのが一番確実」
「死んでも水の中でなければ、元に戻らないんですかねえ」
「知らないけど。もしかしたら、水に浸からなければ、擬態したまま死ぬかもね」
「シャワーじゃダメなのですか」
ルルも質問した。
「水に漬けろと、あたしが聞いた時はそう言っていたわね。シャワーじゃ水が少ないんでしょうね」
「戸田さんが無事だったら最初にプールに入れよう」
一緒に居たルルも、
「キースもプールに入れてみようかな。バスタブはどうかしら」
「バスタブなら良いわ。たっぷり体がかぶさるぐらいにしてね」
「あたしは今からバスタブに入る」
崋山は、
「おいおい、自分の事位判るだろう」
と呆れるが、ルルはきりっと崋山を見て、
「あなたは、自分が本当に何者なのか悟っている?」
と聞いて来た。崋山はさっぱり分からなくなってきた。
ゲルダは笑って、
「じゃあ取り敢えず、今からあなた方はお風呂ね」
と言った。
崋山は自室に戻りながら、風呂に入っている所を襲われないようにしないと、と思った。それに、イヴが戻ってきたら、これからはイヴと一緒に風呂に入るべきだ、とも言える。イヴが襲われたら大変だ。崋山が風呂に入っていると、もう、退院して来たらしく、皆で赤ちゃんを囲んで騒いでいるのが分かった。こんな緊急事態に、部下達、呑気すぎやしないかと思った。
『怪しいな。取り敢えず騒いでいる奴らから、プールに放り込もう』
そう考えた崋山は、風呂から飛び出、階下へ急いだ。ゲルダ達は、何故か涙ぐんで感動している。何故かは無いな。理由は大体のところ察せられると、崋山は思い直した。少し気の毒になって来た。だからルークやカイは許したのだろう。
「イヴ、もう退院できたの。大丈夫かな。早く部屋で休んだ方が良くはないかな」
「崋山、優しいのね。癒しの達人がここに居るんだもの、戻った方が回復が早いんじゃないかって事になったのよ」
そう言われて、崋山はイヴを抱き寄せたものの、
「ちょっとだけ、癒して後は戻ってからにするから、今は緊急事態なんだ」
「そうらしいわね、帰りながらカイから聞いたよ。じゃあ、あたし達は、部屋に居るね」
「そうしててね」
崋山は、部下たちに、
「緊急の情報が入った。アンドロイドは支配者が必要で、そいつは人間に擬態した第9銀河の宇宙人だ。水に入ると擬態が解けると言う事だから、皆一応プールに入ろう。あまり大勢で飛び込むなよ油断せず2,3人づつにしろ。ガーズお前、指揮を執れ。あ、最初にお前が入っとけよ」
ガーズは呆れて、
「司令官、俺が敵ならどうなっていたと思いますか」
と言うが、
「こういう事は、きっちり全員やってみるのがルールだ」
ガーズはため息交じりに、
「はいはい」
と言って服を脱ぎながら、
「司令官、付いて来て見ていてくださいね」
「そーだね。皆も付いて来いよ」
と言う事になり、二人でプールに行った。
ガーズはプールに飛び込みながら、崋山をつかんで同時にプールに連れ込んだ。とっさに察した崋山は、水に入りそうになったが、その前に、辛うじて銃を抜いて撃つ事が出来た。油断していたが危機一髪である。
銃声に皆が慌ててプールに走り寄って来た。崋山は弾みで落ちたが、その前にガーズは仕留めていた。それでも、慌ててプールから出ながら、後ろを窺うと、夜目にもおどろおどろしい、アメーバーの様な物がプールに浮かんでいた。みんなそれを見て、悲鳴のような声を出した。崋山は、
「一人目からこれじゃあ、後が入れないなあ。どうする」
皆に聞いてみた。
「あれが宇宙人。ガーズじゃあ無かったなんて。でも、何人も居るんですかね」
ズーイが妙なセリフを吐くので、崋山は、
「一人しかいないと誰が決めた」
と言いながら、ズーイをプールに落とし込んでみた。
「何するんですか、酷い。襲われたらどうしてくれるんです」
ズーイが大慌てでプールから上がった。
「あれは死骸だよ。俺がさっき始末した。銃声がしただろ。悪かったな。お前が変な言い草するから」
崋山はズーイに言い訳しておいた。ズーイは涙目で、
「怖かったです。恨んでヤル。先にこいつを引き出してから皆飛び込め。ふん掃除なんかさせるか」
文句たらたらのズーイに、
「じゃあ、ズーイ此処はお前に任せたからな」
そう言って、崋山は本部に報告しに行った。また取って返して、キース達の所へ戻らなければならない。ルークとカイが、『ギルン達の軍隊が混沌としているぞ。俺らはここを動けないし』と、コンタクトしてきた。二人目はどうやら向うの軍隊に居たらしい。
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