お昼休み15分チャレンジ

@candy13on

冷やされない冷やし中華 (第一部 完)

 すっかり暑くなった、5月であった。

 そして、しっかり温まったものがある。

 商品名『冷やし中華』だ。

 こいつは、あっためるつもりも熱くする必要もなかったのだ。ただ、よくあるミスの果てに、生じてしまったのだ。

 レンチンしなくてよいものをレンチン。

 レンチンすべきものを、やってない。

 レンジのドアを開けて、手にとって、割り箸片手にようやく気づいた。丼片手の寂寥。

 自室、ワンルーム、途方に暮れる。

 人は同じ過ちを繰り返す、まったく!

 メビウスのわからん、抜け出せなく、点。

 行く、通も野積みを栗返すのである。


 再び冷やすべきか。

 熱々ではないから食っちまおうか。

 それとも捨てるか。

 この三択、否、4番目の選択肢を見つけてこそ、だ。


 時を戻そう。

 いや、無理だ。


 見なかったことにしよう。

 それじゃ何も解決しない。


 誰かと物々交換。

 相手がいない……と、そのとき!


『手ぇ、貸してやろうか?』

 ねこの手があらわれた。

 この御都合主義めがっ!

 思わず投げつけた冷やし中華。

 声の主なんて、はじめからいない。

 壁に叩きつけた冷やし中華。

 残骸、床に。


 一応、解決した。

 ハッピーエンドじゃないけどな。

 ため息をついて、お掃除しようと思ったけれど。

 冷やし中華の残骸は、無い。

 跡形も無く消えた、あるいは。

 はじめから存在しなかったのかぃ?


 そもそも、冷やし中華、あったのか?

 いや、さっきまで。

 レンジの中に……。

 なんとレンジは稼働中。

 いま、チーンって鳴った。




 というわけで。

 お昼休み15分チャレンジ、第一部、今回で終了。

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