拒否する患者さん

 以前、1年間だけ出向という形で勤務した病院がある。

 そこは高齢の寝たきりの患者さんが多く、定期的に胸部のX線撮影を行う。

 ごろごろ回診用の撮影装置を押して病棟を回り撮影する。

 だが2人の患者さんだけ撮影を拒否。

 1人は80代の女性。

 病室に入って、

「○○さーん。胸のレントゲン撮りますよー」

「嫌です。撮りません。帰ってください!」

 ていねいに拒否られる。

 どうしたものか……

 そうだ! レントゲンを撮ると言わなければいいんだ! と思いつく。

 病室に入って、

「○○さーん、こんにちわー。」

「はい、こんにちわ。」

 返事が返ってくる……よし、よし

「○○さん、ちょっと横でごそごそしますねー」と言いながら準備。

「はいはい、どうぞ。」

「じゃあ、ちょっと背中の下に硬い板を入れますよー、ちょっと背中痛いかも。」

 背中の下にフィルムを入れる。

「あら、ちょっと痛いわね」

「大丈夫、すぐ終わりますよー、じゃ次は顔の上でごそごしますねー」と装置をセット。

《ガシャ》と撮影。

 終了!

 やった!大大大成功。

 もう1人は80代の男性。

 撮影をしようとすると唯一動く右手で殴ってくる。

 どうしたものか……

 定期的に実施する検査には心電図もある、検査技師さんに相談する。

「あー、あの人、検査するとお金がいると思ってるんですよ、お金いらないって言えば大丈夫です。」

 病室に入って、

「レントゲン撮りまーす、でも大丈夫、お金いりませーん。お金いらない、無料です!」

 すんなり撮影できた。

 ほんとはお金かかるけど……




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