第71話
「さすがアレン。すごい」
「ありえない」「黄金の両手」「神業」「人間離れしている」「チカラ加減が絶妙」「技がえちぃ」
ドワーフのみなさんがわらわらと俺を取り囲みます。
ぴとっ。ぴたっ。むにゅっ。ぐにゃっ。
柔らかい、やわらか〜い二の腕の感触を堪能します。
どぅふふ。最近わかってきました。
ドワーフさんたちとボティタッチするためにはモノづくりを利用すればいいってことに!
どうもみなさんこんにちはアレンです。
あっ、危なかった……!
愛しのママから殺害予告されるなんて一体誰が予想できるってんだ。ちびりそうだったぜ。
「つっ、次はアレンをいっ、射抜いてみせようかしら……なーんて」ですよ?
冗談じゃない!
そりゃ仕事中に「遊んで! 構って! やだやだやだー」と幼児化されたら腹も立てるだろう。だが、風穴を開けられる覚えはねえぞ⁉︎
シルフィはバリバリのキャリアウーマン。ちょっと、いやドン引きするぐらい根を詰めるところがある。
『仕事狂い』と言ってもいい。
だからこそ一服の誘いだったのだが——まさかあそこまで露骨に怒るとは思わなかった。きちぃぜ……!
というわけで緊急脱出。シルフィママから逃げるように銅貨ゲームコーナーへ。
諸君らは10円ゲームをご存じか。昭和50年代から平成初期、駄菓子屋やゲームセンターで目にしたこともあるのではないだろうか。
ドワーフのみなさんが絶賛しているのは10円ゲームの王道、新幹線ゲームである。
女神「どんなゲームなんですか?」
ググれカス。
女神「あー! 女の子にそんなこと言っちゃうんですかー⁉︎ 見損ないました! 教えてくだされば次の転生先を私のブラジャーにしようと思っていたのに!」
舐めるなよ女神。俺はたしかにブラジャーになりたかったことがある。だがそれは決していやらしい下心からなどではない。女の子を優しく包み込む存在。そういうものに私はなりたい。ただそれだけだ。
『新幹線ゲーム』は投入した10円を左右のレバーで弾き、ゴール(当たり)を目指すものだ。ゴールに10円玉が吸い込まれると当たり券が祝福の音楽と共に景品口から落ちてくる。
単純明快。至ってシンプルなゲームである。切符を模した当たり券はコレクションor駄菓子と交換することができる。
一見、簡単そうに見える(ググるとすぐに出てくるよ)のだが、ただレバーを適当に弾くだけではゴールの穴にたどり着くことはできない。なぜならハズレの穴が行方を遮るからだ。
文字通り穴をかいくぐらなければならない。以上が簡単な説明だ。
女神「ブラジャーに生まれ変わりたいなんて気持ち悪いです!!」
〈女神ネットワークが遮断されました〉
女を殴りたいと本気で思ったのは生まれて初めてだ。
畜生、ブラジャーになりたかったのに!!
閑話休題。
というわけで冒頭の大絶賛だが、ドワーフたちは俺が投下した銅貨を見事当たりに導いたことで無機質な瞳を見開き、ボディタッチが発生した次第である。
筐体の内部は制御基盤、払い出し機などが収められるぐらいで、拍子抜けするぐらい空洞なのだ。
アナログながら没入できる賢い機械である。当時の叡智の一つだと俺は思う。
事実こうしてドワーフのみんなとわちゃわちゃ楽しく遊べているのが何よりの証拠である。先人たちの知恵や工夫にはいつも感心するばかりだ。
ちなみに『新幹線ゲーム』の正式名称は数回指先弾走遊戯というらしい。
ドワーフのみんなが作ったのは他にもある。銅貨を弾き系に加えて玉弾き系、ルーレット系、パチンコ系、小型機、ユニーク系、グレーンゲーム。
ルーレット系などは的中するとコインがもらえる仕組みになっている。
枚数に応じて景品のランク(量や質)を上げたいところ。
金貨や銀貨を銅貨に替えてくれる両替機も設置。銅貨が勢いよくドバドバ落ちてくる爽快感を味わえる。
余談だが、統合型リゾートはアップデート、すなわち徐々に進化していく形を取るつもりだ。
ゲームコーナーにはインベーダーゲームを導入して時代の流れに沿うような形で拡張していきたい。
白金、金、銀、大銅、銅のようなランク制を導入することで、遊べる機器やサービスが上がっていく仕組みだ。
魔王を招聘したときは温泉→夕食→銅貨ゲームコーナーに案内しよう。
というわけで続いては卓球だ。
ちょうど温泉(お風呂)大好きアウラさんが視界に入ります。温泉を上がったばかりなのかな?
おうふ! エロい。エロ過ぎんぞアウラ!
浴衣(主に胸部)の繊維が「ぐぎぎ……!」と悲鳴あげてるじゃねえか!
「あら、アレン様。どうかされたんですの」
首に巻いたタオルで髪の水分を取りながらアウラが近づいてくる。
石鹸の香りふわぁ〜。浴衣からチラリと生脚。脚長え!! 美肌すぎぃ! ほんのり朱色がこれまた色っぽい!
さらに双穣の女神がぶるんぶるん。まさかノーブラですと⁉︎
おっ、おにょれ……! 湯上がり浴衣乳揺れ卓球不可避ではないか……!
「卓球で勝負だアウラ!!!!」
☆
「失礼しますわ!」
——パチコンッ!!
強烈なスマッ
俺の耳スレスレを豪速球がすり抜けていく!
地殻変動。俺のすぐ目の前で地殻変動が起きていた。大自然の山々が地面を盛り上げるように——双穣の女神が大暴れしている。
これが漫画なら効果音にバルンッ! が採用されていたに違いない。
やはり人間というのはちっぽけな存在だ。大自然の脅威には敵わない。無力だ。
とはいえ、見るからに窮屈そうなのになぜぽろりが発生しない? なぜ頂を視界に入れることが叶わない?
はっきり言って俺はもうピンポン球など見ていない。
卓球をプレイしているのだから球を追いかけるのが当然ではあるのだが、そんな既成概念に縛られるアレンさんではないわ。そんな概念は対戦直後に打ち破っている。
俺の脳内にはすでに黒板三十枚以上の計算式、数式が繰り広げられている。ぽろりが発生する角度、動作、視線の位置、タイミングetc……。ただ頂に至りたい。その思いが俺を突き動かしていた。
球を打ち返しながら鬼畜レベルの暗算をこなす。
……俺はシルフィとの射的を思い出す。エルフにとって【風】を操作すること造作もないことだと言っていた。
つまり風圧——風が視えるアウラにとって浴衣を肌けさせないことなどたわいも無いということか。
ふっ。俺も舐められたものだな。
「アウラ。風の操作は卑怯だぞ。輝星堂の代表たる者、同じ条件で勝負したらどうだ?」
「え″っ⁉︎」
明らかに動揺を見せるアウラ。ぶははは!
魔眼【全部視えてるぜ】を持つ俺の目はごまかせまい! もちろん見せそうで見えないチラリズム卓球も素晴らしい。
だが生憎、現在の俺は過激な視覚情報を得ても下半身が反応しない。不自然に前屈みになることもない! ぽろりを見るなら今がチャンスというわけだ!
「【風】の操作はその……」
言い淀むアウラを見て確信する。やはり彼女は風を利用してぽろりしないよう調節していた。おかしいと思ったんだよ。
あれだけ激しい動きをしておきながら肌けないわけがない。えちえちのときだけガリレオを上回る計算能力を侮るでないわ!!!!
もちろんアウラがプレイ中に反則をしていないことは百も承知である。
なぜならそんなことをしなくても俺は激弱なのだ。ただのスマッシュですら返せないのにそこに空気抵抗や風圧を操作するなどどう考えてもオーバーキルだ。
俺は自他共に認める雑魚。自分で言ってて辛いがな。
つまりアウラが言いにくそうにしているのはぽろりしないため、と口にするのが憚られるからである。
幸か不幸か息子からの音沙汰はない。堂々としていればいい。そうすれば俺は一貫して『風操作に物申す熱血スポーツマン』としての偽りの顔でいられる。
ここまで来れば「風操作はぽろりしないためですわ」などと正直には打ち明けられまい。そんなことを言えば二人の間に気まずい空気が流れる。
俺たちはいま真剣勝負をしているのだ。むろん次の一球で俺のストレート負けが決定するのだが。しかし強いか弱いかなどスポーツマンシップの前では些細な問題である。
女神「なんか私怖いです」
うるせえ!
「わかりましてよ。それでは次の一球。聖樹に誓って魔法を発動しませんわ」
「それでいい」
アウラのサーブをアウトしないよう全神経を研ぎ澄まし、全集中で返してみせる。
確認するとアウラはスマッシュの構え。つうと、汗が谷間に滑り落ちていた。まるで俺の動きなど止まって見えるとでも言いたげだ。ハエかよ。
そして——俺は初めてアウラの頂を脳に焼き付けることに成功した。
——バチコンッッ!
と火花を散らしながらピンポン球が俺の眉間に突き刺さる。俺の視線はただ一点に集中していた。
痛みなどあろうはずがない。なぜなら俺の目の前にはノーブラの痴女ハイエルフがおっぱいを丸出しでスマッシュを決めたからである。
俺はその幸福すぎる乳揺れとぽろりを視界に入れながら、意識を失った。
あとで聞いた話によると両目をカッと見開いたまま気絶していたらしい。
ありがとうアウラ。
☆
【アウラ】
なんと熱い眼差しですの……。
リバーシのときとは比べものにならない集中力ですわ。
わたくしはアレン様のご期待に添えるため、風操作を切断。全力のスマッシュで応えますの。
懸念していたとおり、浴衣がはだけてしまいましてよ。
急いで前を隠して、謝罪を口にしましたところ、
「みっ、見苦しい姿をお見せしましたわ。いえ、見られて恥ずかしいところなどないと自負してはおりますがまさかこのような場で、ってアレン様⁉︎ えっ、あの気絶されておりますの⁉︎」
どうやらスマッシュの打ちどころが悪かったようですわ!
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