第57話
【シルフィ】
アレンから聞かされたロケット作戦。
正直に言えば無茶が過ぎると思ったわ。
けれど彼は「俺には【再生】があるから大丈夫」と主張。強い眼差し。
私はてっきり【再生】を発動することで——損傷と再生を交互に繰り返しながら、光景的には無傷のままウリエルに抱擁するものとばかり思っていたのよ。
それは他の奴隷たちも一緒だったようで、全員目に涙をためて、ウリエルのことを睨みつける。
『よくもアレン(様)を!』
☆
【ウリエル】
ココハドコ……? ワタシハダレ?
アッ、ソンチョウサンガワタシノトコロニ——バチンッッッッ!!!!!!!!!
「チッ、汚ねえ花火だな」
イヤアアァァァァァァァァァァァァァァ!
【天狐】
これは不味いですね……!
ウリエルの暴走がより激しくなっています。このまま制御が効かないままだと【独裁】で停止している魔物たちも大暴走を再開しかねません。
仕方ありませんね。九尾姐さんより授かった【色欲】の魔法を発動するしか——禁断の切り札を発動するしかない。
そう、覚悟した次の瞬間でした。
異変を感じた私はウリエルの動向を注意深く観察します。彼女の頬に付着したアレンさんの返り血に、細胞の一片。
そこから魔力の波動を感じます。間違いなくアレンさん本人のものです。
これは分裂……?
そこから目にも留まらぬ速さで【再生】したかと思うと【凶悪化】したウリエルを必死に後ろから抱きしめるよう殿方の姿。
あれは……アレンさん——⁉︎
まっ、まさか生きていらっしゃったんですか⁉︎
【再生】が追いつかなかったと勘違いしていました……となると、その、まさか貴方は不老不死なのでは⁉︎
そんな人間聞いたことがありませんよ⁉︎ 前代未聞です!
☆
【アレン】
足、カニバサミよし!
手、おっぱいよし!
鼻、首筋よし!
目、うなじよし!
ロックオン完了!
せーの!
くんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんか!!
うぴょおおおおおおおおおおおおおお!!
いい匂いする! めっちゃいい匂いする!
褐色肌と銀髪からめちゃ良い匂いがします! 幸せです! 鼻が幸せです! 最高です! もう死んでもいいです。あっ、いえ、先ほど死んだばかりですけど。
あっ、どうもみなさんこんにちは。痴漢魔です。失礼噛みました。アレンさんです。
いやー、辛いわー。上に立つ者の義務辛いわー。ウリたその尻拭いしないといけないとかマジ辛いわー。
もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみ!!
諸君、ようやく二十五万字にしておっぱいです! おっぱい揉み揉みです! うひょ!
なんだこの幸福すぎる感触は⁉︎ 脳がバカになる! 脳がバカになりますよ!
えっ、スゴ! スゴ過ぎィ! うぴょ。おっぱいってこんなに柔らかいの⁉︎ この重量感、たまりませんな!
この感触をいつでも好きなときに味わえる女性は幸せですね! 最高です! 最高ですよ!
鼻血が垂れてきます……!
「離れろクソ野郎が……!」
「絶対に離さない!」
この乳を揉みしだくまでは‼︎
ウリエル「オオオオオオオ」
アレン「ああああああああ‼︎」
感動の名場面を忠実に再現します。
というか、チミ、全然【凶悪化】が解除されてまへんけど⁉︎
いや、さすがのアレンさんもずっとこのままというわけにはいきませんのでね。ええ。
あの、申し訳ないんですけど早く戻って来てもらえる? マイスイートエンジェル。
『アレン(様)!』
チミら、さっき『よくもアレン(様)を!』みたいな反応しとったやろ。
白々しい。誰か一人ぐらい止めろや。人間ロケットやぞ。作戦名【アレンロケット】やぞ。
普通止めるやろ。制止せんかい。
いや、おかげでこうしてウリエル黒ギャルverに合法セクハラできているわけやけど。でも正直トントンやからな。こちとら命懸けやからな。命懸けで乳揉んどるんやからな⁉︎
この幸せすぎる感触味わえるなら命なんか惜しくない——と思わなくもないけど、でもやっぱり釣り合ってるか言われたら答えはノーやろ。
——ドゴォッッ!!!!!!!!!!!!
ほら。俺、いま何されたと思う?
背中から山にぶつかられたんやで⁉︎
それも超高速飛行で! 普通の人間やったら死んどるから! 普通に死んどるから!
あっ、ちょっと、今度は地上に急降下し始めたんですけど⁉︎
アレン知ってるこれ背中から衝突して、クレーターができるやつ。ヤ◯チャのやつ!
ひぃえ!
「離せって言ってんだろうがァァァァ!!」
「ダメだよ。ウリたん。そんな荒い言葉使ったら。早く戻っておいで(揉み揉み揉み)」
クソッ、欲望に忠実すぎる……! ガッツキ過ぎて童貞丸出しだ。
しかし極上の美少女(しかも黒ギャル!)に後ろから密着して触り放題、揉み放題、嗅ぎ放題のラッキースケベチャンスである。
これを逃すほど俺は無欲じゃない。貪欲に堪能したい所存。
これまでどれだけ異世界転生で噛ませをさせられてきたと思ってんだ……!
絶対に離さない!(二回目)
☆
【ノエル】
アレンの絶対に離さないという意地が伝わってくる。
彼の言葉を思い出していた。
「——ウリたん。キミのことは必ず俺が元に戻してみせる。だからみんなを——守ってもらえる?」
やっぱり口先だけじゃなかった。奴隷たちのこと大切に想ってくれている。
好き。もっとアレンの役に立ちたい。もっともっと凄いものを作ってたくさん褒められたい。さすがノエルって髪を撫でて欲しい。
でもやっぱりアレンが傷つくところは見たくない。
あっ! 山に背中から——【再生】があっても痛いはずなのに!
なのにあれだけ必死に……鼻血が出るほど痛みに堪えて——。
【アウラ】
アレン様の狂気的な意地を感じますわ。
まさしく主人と奴隷の絆が試される瞬間。
場違いな感想なのは承知の上ですが、殿方からあれほどまでに熱い抱擁をされてみたいものですわ。
レディのピンチに命を懸けて駆けつける殿方。女であれば誰しもが一度は夢見るものでしてよ。
奴隷から好かれたい。信頼されたい。そのような下心からは決して取れない行動ですわ。
なにせ文字通りの命懸けですの。
【風の知らせ】により風がアレン様の言葉を拾いましたわ。
「ダメだよ。ウリたん。そんな荒い言葉使ったら。早く戻っておいで」
……アレン様。貴方という殿方はわたくしたちをどれほど大切に想ってくださっていらっしゃるんですの。
——無償の愛。
わたくしの脳内にそんな言葉がよぎりましてよ。
☆
【九桜】
いかん。主の危機だというのにどうしても胸の高鳴りを抑えることができん。
アレンはやはり幻鬼である私が仕えるにふさわしい主人だったということか……!
鬼熱いな!
【凛】
いつも鼻の下伸ばしてリバーシばっかりしてるザコのお兄さんのくせにこういうときだけカッコ良い姿を見せるなんて卑怯です!
やっぱり女たらしじゃないですかー。すけこましー!
帰ったらご褒美におしおきしてあげよっかなー。アレンお兄さんはどんな風にされたい? やっぱり踏んで欲しいのかな?
もうしかたない。出血大サービスだよ。
きゃは☆
【ネク】
「本当に面白い人間ね。傍にいて全然飽きないから不思議よ〜。【凶悪化】モデル【堕天使】のリカバリーに成功したらこれまで序列最下位だった【怠惰】も変わるかもしれないわね〜」
【ラア】
「ったく、奴隷のために無茶しやがって! 終わったらラア様が肩を貸してやるからな! 頑張れアレン!」
【奴隷たち一同】
祈るように、
『アレン様……!』『アレンさん……!』
『村長様……!』『村長さん……!』
【ウリエル】
——精神世界。
「邪魔すんじゃねえよ
村長さんの必死の抱擁によりようやく自我を取り戻した私は【堕天使】と化した私と対峙します。
「そうですね。たしかに貴女は私自身です」
「ああ! だから追放した天使共を一位残さず駆逐したいっていう願望も本物なんだよ⁉︎ それがお前の本性なんだよ! 万物の育成・保護を司る愛の種族? ハッ、そんなもん仮初の姿だっての! 本当は壊したくて壊したくて仕方がない! そうだろうが!」
「……はい。否定はしません」
「ハハッ! 認めたな! だったらこのまますっこんでろ弱エル! わたしがぜーんぶ壊してやるよ! お前を追放した——わたしを認めなかったやつ全員粉々に——っ! カラダが動か——てめっ、なにしやがった⁉︎」
「堕天使さん。貴女は紛れもなく私です。もう一つの心。人格です。争いのない世界を実現するため、心血を注いだにもかかわらず、人間たちは争いをやめません。平和を追い求める私は何度も何度も人類に裏切られて来ました。その絶望や失望が貴女ということはわかっていました」
「争いのない世界を創るのは簡単なことなんだよ! 全部一回壊せばいい! 人類を滅ぼせばいいのさ! そうすれば争いがなくなる! そう思ったんだろうが⁉︎ 願ったんだろうが! なのにどうして——うぐっ!」
真っ白な精神世界。時空が歪み、光が潰れる別空間が顔を出します。そこから闇の手が堕天使さんの全身を掴み、引き摺り込みます。
「私はずっとこの感情に蓋をしていました。開ければ今回のように破滅の運命が待っていたからです。でもそれも今日でお終い。私は——
「どうせお前はまた裏切られて絶望するんだ! そのとき、お前は本当の意味で死ぬ! もう二度と人間を信じられなくなる! 覚えておけ——!」
別空間に封印された堕天使——私を見届けた私は急いで躰の制御に取り掛かります。
村長さん——!
☆
【アレン】
あかん! 衝突や! 衝突する!
これは痛そうや! 今度こそ気絶してまうかも! ひぃっ!
ウリたんに抱きつきながら、視線を地上に向けるとグングンと急降下。
あまりの恐怖に俺は気絶することを悟る。ブラックアウト。無理無理。怖いもんは怖いて。
……はぁ。またベチャベチャの肉に逆戻りですか。
俺ってもしかして『ベチャベチャですけど何か』系主人公やったんかな?
転生したらひき肉だった件、的な?
はーい。それじゃみなさんまた会いましょう。次目覚めるときはウリたそがマイスイートエンジェルに戻ってればいいな。
——カクンッ(白目)
☆
【ウリエル】
——ブウゥゥゥンッッ!!
地上に衝突する寸前、本当にギリギリのところで躰の自由を取り戻した私は急停止!
凄まじい反動が襲います。
ですが、先ほどまで一身に受けていた村長さんに比べたら、軽いものです。
無事、衝突を免れた私は躰が軽くなりました。ずっとしがみついてくださっていた村長さんの手が離れたからでしょう。
私は彼を優しく受け止めます。
どうやら恐怖で意識を失っているようでした。有言実行。無償の愛。最後まで諦めずに私のことを守ろうとしてくれた村長さんの顔を見ていると、その……、最低なことだとはわかっていますが、己を制することができません。
私は無意識に村長さんの唇を自分のもので塞いでしまっていました。
……えへへ。初めてチューしちゃいました。血の味がします。色んな意味で忘れられない日になりそうです。
私、これから頑張りますね! どうか末長くよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます