第21話

 軟禁なんきんされましたアレンです。

 異世界転生者多しといえど、こんな冒頭から物語が始める主人公って俺だけと思いません? 最弱すぎんぞ。

 美人アラクネ姉妹の拉致事件が落ち着いたとはいえ、まだまだ記憶に新しい中、今度は軟禁ですか……へいへい。


 軟禁された経緯が聞きたい?

 もしかしたらお前に原因があるかもしれねえだろって?

 やれやれ、まさか俺の方が疑われているとは。心外です。


 ラアから蜘蛛の糸を仕入れた俺はノエル&ドワーフたちにジャカード織機の発明を依頼。

 感情があまり表に出ない彼女たちだが、

「面白い」「やりたい」「造りたい」「私に一任して欲しい」「抜け駆けは良くない。公平に決めるべき」と、むしろ奪い合うまでに発展。

 俺も手伝おうかと確認したのだが、「「「「座って(待ってて欲しい)」」」」と突き放された格好。

 やはり開発・発明は彼女たちの職域ということだろう。錬金術のスキルさえ所有していない俺は何の役にも立たないということか。

 

 案の定、不貞腐れた俺はエリー、ティナ、レイ三人と仲良く将棋を指すことにした。

 二の腕柔こ! 調子に乗った俺はジェンガの勝者は敗者に一つだけ何でも命令できることにした。白状します。おっぱいを揉んでみたかったんです。

 結果はもちろん俺がガャシャガャシャガャシャ! である。涙目。

 自然に愛されたエルフは【風】の操作が抜群に上手く、触れることなく一片を抜き取ることができる。

 おかけで「これなんでまだ倒れてないの⁉︎」と叫びたくなるような、まさしく芸術の極みのような状態で俺のターン。

 いつになったら俺はみんなのパイパイを楽しめるんだろうか。


 仕方ない。紡績機と織機が落ち着いたら新娯楽品をノエルたちに提案してみよう。

 以前、俺は彼女たちドワーフに「働かせ過ぎかな?」と聞いたことがある。

 モノ作りが本懐であった彼女にはそもそも働いている意識がなかった。

「全く」「全然」「大丈夫」「畑仕事よりもっとモノ作りをしたい」「その方が楽しい」「開発したいものがあれば遠慮せず言って欲しい」


 私たちにドワーフとして生きさせろという圧が凄かった。

 労働力を搾取するつもりで奴隷を買ったとはいえ、彼女たちが楽しく生活し、さらに俺も美味しい思いができるなら継続するべきだろう。

 俺は彼女たちにはモノ作りをして欲しいこと、畑仕事などに異動しないことを約束した。


 ドワーフの奴隷全員が抱き着いてくれるというラッキースケベが発生した。一体この柔らかい全身のどこに開発し続ける体力、腕力があるのだろうと心配になったが、控え目に言って最高でした。


 美少女の躰は幸福の感触すぎて天に昇天してしまいそうだったのはここだけの話だ。

 我が生涯に一片の——いや、えちえちするまでは死んでられるか。


 そんなわけで俺は彼女たちの発明・開発にかかる資金に糸目をつけないことにした。

 と言ってもご主人様とシルフィ&ノエルの口座は切り離している。

 奴隷のものはご主人様のもの、ご主人様のものはご主人様のものというジェイアン世界ではあるのだが、比較的奴隷の権利は自由にいじることができる。


 それをする人がほとんどいないだけで。

 さすがの俺もシルフィたちエルフが【発成実】による植物栽培、商業ギルドでの敏腕っぷり(とうとう独立した!)、ノエルたちドワーフの開発・発明による報酬を独り占めするわけにはいかない。


 そんなことをすればいずれやってくる奴隷解放リストラ実行時に「お命、覚悟!」となってしまう。

 なるほど。搾取する側もただやればいいというわけではなく、上手く立ち回らなければしっぺ返しが待っているというわけか。キチィぜ。


 というわけでシルフィとノエルの口座をご主人様が勝手に作り、彼女たちの働きに応じた報酬はそこに入金されることになった。

 これで見捨てられたら俺は死ぬ。贅沢は言わないので寄生させてください。

 そんなわけでとうとうお金の管理さえもシルフィ様に丸投げしてしまった(ノエルはシルフィに絶対の信頼を寄せている。二人は相談の結果、シルフィの口座に一元化して管理することにしたようだ)。


 すなわち俺は修道院長室でお腹をぼりぼりかきながらシルフィとノエルから定期的に歳入報告を受けることになったのだ。

 

 だからこそ糸目をつけない、などと言えば会計管理者としての立場を想起させるものだが、実を伴わない形だけの肩書きである。

 全ては陰の黒幕、シルフィ様に絶大な権力が集中しつつある。

 いつの日か「さようならアレン。貴方はもう用済みよ」などと魔王化しないことを願いたい所存。


 シルフィに「ノエルたちのモノ作りにかかる経費はできるだけ工面してあげてね。その分俺の給料はどれだけ引いてもいいからさ」

 と告げたところ、

「えっ、ええ……」

 とすごく微妙な顔をされた。そもそもお前の給料ねえよ。サラリーって労働の対価なんだよ。頭にウジ虫沸いてんじゃねえのか? と思われているのだろうか。


 たしかに全く働いていないのに口先だけ立派だもんね俺。

 奴隷たちの管理最高責任者であるシルフィさんからすれば「おめえも働けや、殺すぞ!」とか思われていそうだ。

 早く織物を! 早く織物をシルフィさんにプレゼントしなくちゃ! 感謝をきちんと言葉にしなくちゃ!


 なんやかんや時間が流れ(その間、食っちゃ寝ラッキーボディタッチリバーシの記憶しかない)ノエルたちドワーフたちの傑作、紡績機とジャカード織機が完成した。

 褒めて欲しそうに見えたので(少なくとも俺にはそう見えた)みんなの頭を撫でてみたら(下心100%でしたすみません)いつの間にか行列ができていた。


 しかも彼女たちが発するのは「ん」だけである。これでこのあとノエルたちを含むドワーフ全員が「セクハラされました」などとシルフィ大元帥に被害報告されたら俺は死ぬ。


 結論から申し上げると大丈夫でした。お咎めなし。それどころか問題になりませんでした。


 では軟禁されることになった理由はどこにあるか。

 もしかしたらこのあと俺が調子に乗ったアレかもしれない。アレンだけに。つまんな!

 もしも俺の異世界生活を世界の外側から観測している人がいるなら、「ほら、やっぱりお前がやらかしてるじゃねえか!」となるかもしれない。


 ラアが納品してくれる蜘蛛の糸は生糸きいとに近いと判断。

 ノエルたちの発明品を使って絹織物をプレゼントすることを俺は決意した。

 高級感もあるため、シルフィ会長の機嫌もきっと良くなると思ったからだ。

 

 たて糸を織機にかけるための準備、整経せいけい

 さらに撚糸ねんし——よこ糸にりをかける作業。


 諸君は織物がどうやってできるかご存知か?

 俺? 俺はもちろん知らなかった——思春期になるまでは。

 女の子の魅力を倍増させるドレスアップはどのようにして実現されたか。

 それが俺が服に興味を持った最初のきっかけだった。

 つまり、この世に女の子が存在しなければ俺は織物のおの字も知らず、一切の興味関心を示さなかっただろう。

 やはりHとエロは偉大だったか。HとERO。 HERO——ヒーロー——英雄。答えは得た。


 話を戻そう。

 織物はたて糸とよこ糸を交互に組み合わせて布にしたもの。

 ちなみに編物は波のようにたるませた糸に次の糸を引っかけた布のこと。

 後者は伸縮性+保温性に優れているので肌着やセーターなどに使われているそうだ。諸君、肌着やセーターである。見たくはないか? えっ、お前のは見たくない? 

 当たり前っしょ! シルフィやノエル、アウラや奴隷のみんな、アラクネ姉妹のをだよ!


 くくく……このアレン様が100%の善意から衣服に取りかかるわけがなかろう。侮るでないわ!

 とはいえ、今回は生糸(蜘蛛の糸)だ。そっちは綿が手に入ってからでも遅くはない。俺は楽しみは後に取っておくタイプだ。


 だからこそ前世では大好物は最後にしていた。さあ、大好物というところで「残すなんてもったいなーい。お兄ちゃんのエビフライ私が食べてあげるね♪」ハイエナのごとく俺から奪っていく美月ちゃん。


「育ち盛りだから……ね♡」

 それ万能じゃねえからな。それ言ったら何でも許されると思ったら大間違いだ。

 さすがの俺も育ち盛りまくってるそれを「揉むぞ」と言ってやった。「もう仕方ないなー。それじゃお風呂行こっか」と返されたときはトランス状態に陥ってしまった。危うく現役巨乳JK妹と混浴するところだ。

 恐るべし美月ちゃん……!


 そんな前世の記憶も思い出しつつ、たて糸とよこ糸を織機にかけて生地を織る。

 これを製織せいしょくと言います。俺が本当にしたいのも生殖と言います。


 続いて精錬——よごれを洗います。アレンさんは火魔法も、水魔法も発動できないのでエリーさんたちを召喚。「ふふっ。任せてね」と髪を耳にかける仕草が色っぽい。

 

 さらに水洗い、脱水してから乾燥。

 火魔法と風魔法を同時発動すればできるとのことです。それなりに高等技術らしいですが、【無限樹系図】を描出され、覚醒した奴隷たちなら簡単だそうで。

 ちなみにアレンさんはできません。

 はぁーあ!(大きいため息)


 あとは乾燥して、幅と長さが縮んでいる生地を風圧と風力を自在に操作しながら一定の長さに整える。幅出しです。

 もちろんアレンさんはできません。

 はぁーあ!


 さて、そんなわけで絹織物の完成です。

 ここで真打ち、ラアの登場!

「面白そうなことしてるじゃねえか。ラア様に任せな」

 結論から言うと染織せんしょくの天才である。さすがアラクネ。「染める」「織る」「組紐」「刺繍」と抜かりありません。


 俺がどんどん霞んでいく。

 だが、そんな無能にも数少ない長所の一つに女性の身長、スリーサイズ、脚の長さを服の上からでも誤差の範囲で測定できるというものがある。

 これをアレンさんの魔眼【ぜんぶ視えてるぜ】と言います。もちろんそんな魔眼はありません。


 俺は脳裏にシルフィのお美しい姿を浮かべ、演算に入っていく。8MBの俺もこのときばかりは世界最速のスパコン【富乳ふにゅう】となります。


 演算したサイズをラアに伝える。

 素材は絹かつ脚の長いシルフィの魅力をより高める衣装とくればチャイナドレス一本でしょう。高えり、スリット、装飾用ボタンが特徴のあれです。

 ラアさん! スリットは深めに! もうちょっと! もうちょっと深めに! 生脚が見たいんです!


「おっ、おう……」

 俺の熱意に気圧されたラアが若干引いている気がする。


 そんなこんなでチャイナドレスが完成!

 それを持ってパタパタパタ! と帝都の商会から帰って来られたシルフィさんに感謝の気持ちと共にプレゼント!


「素敵な衣装ね。ありがとうアレン。大事にするわ」と見た感じ喜んでいる様子。

 アレン、調子乗ってた。

 気がついたら着用するよう促してた。

「何これ! すごいわ! 想像以上の肌触り! サイズもぴったりよ。あれ? でもどうして測定もせずにここまで——いえ、それよりも……!」


 ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 チャイナドレスシルフィさん、ちょっと破壊力ありすぎませんかね⁉︎ 凄まじい威力なんですけど!!!!


 シルフィさんのチャイナドレスに骨抜きにされてしまっていた俺は彼女の呟きを拾うことができず、ただただ、スリットから覗く美脚を堪能してしまっていた。


 ようやく現実に帰還することができたのはチャイナドレスシルフィ、アウラ、ノエル、ラア、ネク(なんかいつの間にか遊びに来ていた)が集まり、何かを話し込んだあと、唐突にこう言われたときだった。


「アレン。悪いけれど貴方はもう帝都に出入りしない方がいいと思うわ」

「アレンは修道院に籠るべき」

「シルフィ、ノエルちゃんに賛成ですわ」

「まあ、ラア様も妥当な判断だと思うぜ」

「そうね〜」


 気がつけば俺はご主人様という立場でありながら(アラクネ姉妹は違うけど)、外出時はシルフィさんたちの許可が必要になっていた。

 生脚を堪能したいという欲望を隠せなかっただけで性犯罪者予備軍扱いですか。


 まあ、ご主人様が犯罪を犯した場合、その被害は奴隷たちにも及ぶもんね。

 修道院に軟禁したい気持ちも、まあ、わからないではないけど。

 だが覚えとけよ! 帝都で目の保養を禁止するというなら、修道院に籠もりながら次々に衣類——ブラジャー、パンティー、黒ストッキング、ニット、(童貞を殺す)セーター開発して、チミたちに着用してもらうからね!

 

「貴方の身の安全を守るためよ」


 いくら俺でも命を狙われるほどの変態じゃねえよ! チャイナドレスシルフィ、キミには失望した!!!!


【あとがき】

 異世界ファンタジー部門週間1位! 

 めちゃくちゃ嬉しい! お祝いが欲しいので初の乞食です。

 ★★★Excellent!欲ちぃ。星ほちぃ。星ほちぃ。ほちぃ、ほちぃ、欲ちぃ!

 何もしない主人公が産業、農業、漁業、医療、経済、生活、交通あらゆる分野を牛耳る大魔王(本人自覚なし)となるまで書きたいと考えております。

 読んでくださっている皆さま、本当にありがとう!!!!!!! 圧倒的感謝!!!!

 


 

 


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