「おいしい……。意外と、コンビニチェーン店のプリンとは違うんだ……」


 佐々木の表情が、少し緩んだ感じになったと俺はそれを見て、最後の一口を味わった。


 プリンを食べ終えた後は、いつもどおり、下校時間になるまで、この部屋で今日の課題をしたり、だらだらしたり、本を読んだりと、時間の許す限り、そうすることが多い。


 佐藤は、スマホの画面と睨めっこしながら誰かに返信している。佐々木は、読んでいた漫画の続き、そして、俺は、今日出た課題をしながらスマホにイヤホンをつけ、音楽を聴き始めた。


 静かになったこの部屋で時間が少しずつ過ぎていく。


「ねぇ、陣君。……陣君ってば! 聞こえているの?」


 と、向かい側に座る佐藤から少し大きな声で呼びかけられた俺は、耳からイヤホンを外し、佐藤の方を見た。


「なんだよ……」


 俺は、再び不服そうな表情をしている佐藤を見て、呆れていた。いや、俺もまた、不服そうな表情をしているのは間違いないのだが、それ以上に不服そうにしているからである。


「ねぇ、その課題が終わったらゲームしようよ。今、丁度、ゲリライベントが来ていて困っているんだ。ね、いいでしょ⁉」


 佐藤は両手を合わせて、俺にゲームの協力プレイを頼み込んでくる。


「お前、ゲームはとにかく、課題の方は終わらせなくてもいいのか? 一応、明日までのが、たくさんあるだろ。言っておくが、ゲームはほどほどにしておけよ」


「んー。分かってるよ。それくらい……。私だって、やるときはやるんだから、別にいいの!」


 と、逆に怒らせてしまったのである。


「それで、一体、何のゲームのゲリライベントなんだよ。俺は忙しいんだが……」


 俺がそう言うと、佐藤は、自分のスマホの画面を見せてくる。どうやら、世間では人気のある協力プレイ可能なゲームだ。一応、俺もインストールしては、暇な時にやっているくらいだ。


「ちょっと待て……。後、十分だけ時間をくれ。この問題が解けたら一緒にやってやるから」


 シャープペンを動かしながら、化学の問題と睨み合い、問題を解いていく。


 それから最後に問題の問いに「カリウム」と書き終えたところで、ようやく佐藤のお願いを聞くことにした。


 スマホを取り出し、電源を入れ、パスワードを打ち込み、佐藤の言っていたゲームにログインする。このゲームをやっていることを知られてからは、やけに佐藤との協力プレイが増えたような気がする。


「佐藤、言っておくが、そんなに俺はやらないからな。時間になったら自分でやってくれ」


「うん。分かってるよ。私だって、そこまでゲーマーじゃないし。ただ、この子がかわいいから欲しいだけだし!」


 本当にそれだけなのだろうか? ステータスを見るにこのキャラはまあまあマシに見えるが。

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