Ⅵ
「おいしい……。意外と、コンビニチェーン店のプリンとは違うんだ……」
佐々木の表情が、少し緩んだ感じになったと俺はそれを見て、最後の一口を味わった。
プリンを食べ終えた後は、いつもどおり、下校時間になるまで、この部屋で今日の課題をしたり、だらだらしたり、本を読んだりと、時間の許す限り、そうすることが多い。
佐藤は、スマホの画面と睨めっこしながら誰かに返信している。佐々木は、読んでいた漫画の続き、そして、俺は、今日出た課題をしながらスマホにイヤホンをつけ、音楽を聴き始めた。
静かになったこの部屋で時間が少しずつ過ぎていく。
「ねぇ、陣君。……陣君ってば! 聞こえているの?」
と、向かい側に座る佐藤から少し大きな声で呼びかけられた俺は、耳からイヤホンを外し、佐藤の方を見た。
「なんだよ……」
俺は、再び不服そうな表情をしている佐藤を見て、呆れていた。いや、俺もまた、不服そうな表情をしているのは間違いないのだが、それ以上に不服そうにしているからである。
「ねぇ、その課題が終わったらゲームしようよ。今、丁度、ゲリライベントが来ていて困っているんだ。ね、いいでしょ⁉」
佐藤は両手を合わせて、俺にゲームの協力プレイを頼み込んでくる。
「お前、ゲームはとにかく、課題の方は終わらせなくてもいいのか? 一応、明日までのが、たくさんあるだろ。言っておくが、ゲームはほどほどにしておけよ」
「んー。分かってるよ。それくらい……。私だって、やるときはやるんだから、別にいいの!」
と、逆に怒らせてしまったのである。
「それで、一体、何のゲームのゲリライベントなんだよ。俺は忙しいんだが……」
俺がそう言うと、佐藤は、自分のスマホの画面を見せてくる。どうやら、世間では人気のある協力プレイ可能なゲームだ。一応、俺もインストールしては、暇な時にやっているくらいだ。
「ちょっと待て……。後、十分だけ時間をくれ。この問題が解けたら一緒にやってやるから」
シャープペンを動かしながら、化学の問題と睨み合い、問題を解いていく。
それから最後に問題の問いに「カリウム」と書き終えたところで、ようやく佐藤のお願いを聞くことにした。
スマホを取り出し、電源を入れ、パスワードを打ち込み、佐藤の言っていたゲームにログインする。このゲームをやっていることを知られてからは、やけに佐藤との協力プレイが増えたような気がする。
「佐藤、言っておくが、そんなに俺はやらないからな。時間になったら自分でやってくれ」
「うん。分かってるよ。私だって、そこまでゲーマーじゃないし。ただ、この子がかわいいから欲しいだけだし!」
本当にそれだけなのだろうか? ステータスを見るにこのキャラはまあまあマシに見えるが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます