第585話 戦場の大神官


<元杉神官の居場所を教えてください!>


<それは・・そのですね・・・わかりません>



サシル様に聞いてもわからなかった


直接元杉神官のもとに行ければよかったけどそう簡単にはいかなかった


一つの国家の都市は広大で、その何処に元杉神官がいるかわからなかった


元杉神官さえ救出できれば後は連れて逃げればいい、アンデッドを殲滅するのは私達の仕事じゃないし建物や地下にいる敵の全てを狩り尽くすなんて無理だ


地上では「こここそが地獄だ」と言うぐらいゾンビや骨、魔物の死体が蠢いている


倒すのにうまく連合軍が手伝ってくれれば別だろうが、聞いた話ではダメ貴族の集団であまり当てには出来ないらしい



着地前なのにヨーコはタヌカ兄弟の二人を連れて飛び出して一番怪しい城と大きな神殿を調べに行った


大きな時計塔や他の神殿も怪しいが可能性が高いのはどちらかだろう


それにしてもこの大きな都市にはアンデッドばかりいる


生きた人間など皆無で・・・・・本当に悪趣味だ


大人も子供も老人も関係なく、死者となって襲いかかってくる


この国の王は一体何を考えているのだろうか?いや、王すらも操られているのかもしれない



「いけないわ~、もうあまりうてなくなっちゃいました」


「え”?」


「銃身が赤いんですもの、弾はまだあるんですけどこれ以上撃てないわ~」



豪雨の中でもマシンガンが蒸気で見えないほど熱しているのがわかる


数発ずつ撃っていたのは弾の無駄とかではなかったんだ



「銃身を取り替えるのは!?」


「私達の収納はよう君と同じでいれたものの時間が止まっちゃうの、いれても熱いままだし・・どうしましょうか?」


「ミ、ミサイルは?」


「まだあるけどよう君見つけてからの分がなくなっちゃうわ~」



おっとり言っているがこのドラゴンの動きは止まらず飛んでくる敵を撃破し続けている


銃というのは狙って遠くの敵を撃つことができる道具だ


しかし一度に連射を続けると金属でできた銃身が熱くなってしまって壊れてしまう


私もライフルを持つようになったがこんなに撃つことなかったが一発一発に火薬を使っているしこういう現象も起こりうるという説明は聞いていたが・・



「で、ではあの神殿か王城、どちらかにおろしてください!某等がここにいれてもできることはありません!」


「わかったわ~、どちらに行きますぅ?」


「<旅路の神サシル様!我々が進むべき道を教えください!!>」



私が役に立てるとしたらここだろう


ただサシル様もずっと歯切れは悪いが、それでも感だけで進むよりは良いはずだ



<んー・・・神殿に行くといいでしょう>


「<ありがとうございます!>神殿です!神殿に行ってください!!」


「あの建物ねぇ、掴まっててぇ」



ドラゴンゴーレムの中というものは物凄くGがかかる


ドリフトのように神殿前の強そうなアンデッドたちを蹴散らし、下ろしてもらった


ここまでこれだけの敵を相手に無傷でこれている事自体が奇跡だ



「「「ウェロロロロロロロロ」」」



訂正、私が少し舌を噛んだのとエゼルさんと関羽さんと残ったタヌカさんが吐き散らかしている


最後の加速でお腹の中ひっくり返るって思ったもんね



「よう君をお願いね!」


「わかったわ!行くわよっ!!」


「「「オォっ!!!」」」



「<ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォン!!!>」



フィルフェリアさんが大きく鳴くと一瞬でアンデッドの足場全てが凍りついた


ダリアさんと遥が周りのアンデッドに襲いかかっている



「フィルフェリアさん!」


「なんだ!」


「ドラゴン型ゴーレムのガトリング、あれの赤くなってる部分を冷やせますか!」


「無論だ!」


「銃口を塞がずに出来ますか!冷やすのもゆっくりで!」


「わからん!銃口とは何だ!」


「拙者が教えよう!鉄砲と同じものなのだろう?」


「はい!撃ちすぎて冷やさないと使えなくなってます!」



この大雨でも冷やしきれていないほどにドラゴン型ゴーレムは撃ちまくっていた


本来はそんなにずっと撃ち続けるものじゃない


周りには多くのアンデッドが大勢いるし、叫ぶように伝える


周りで戦ってる戦闘音で情報が伝えられないなどあってはならない


大声で、明確に、余計なことを挟まずに伝えないといけない



そんなことを言ってる間にもドラゴン型ゴーレムは口からブレスを、人型ゴーレムは銃をおろして盾と剣を装備してアンデッドを蹴散らしている


もしかしたら銃は必要ないかもしれないがやはり遠距離攻撃はあればあるだけ良い



「えっと、双子ちゃん!」


「「なにさ!?」」



関羽さんになってるうち2人がこちらを見た


顔の圧が濃い



「ドラゴンに乗って、ドラゴンの幻術できる!?元杉神官倒せてもここから出られないと意味ない!」


「「わかった!でも実体無いけど良い!?」」


「ドラゴンが落ちなかったら良いんです!撹乱目的!!関羽さん一人で大丈夫ですか!?」


「無論!!」



セーさんが巨大な金棒を持ち神殿の前に展開されている障壁を桃色のネオンライトのように残光を残して吶喊、結界を破壊した



「行きましょう!!」



大声での指示は終わり、無線機での指示に移る


栄介さんは姿を消せるらしいから神殿の入口付近で戦う、詩乃さんは上で制空権を取り続け、こちらに敵が集まらないように撹乱してもらう


エゼルさんはダリアさんとフィルフェリアさんと視覚を共用しているから一緒にいたほうが戦力としては良いがフィルフェリアさんは糸使いのタヌカとドラゴン型ゴーレムの背に乗って糸で身体を繋いで銃身を冷やしている


氷の壁が作れると聞いているし、二人ともいざとなれば機動力があるから遊撃にちょうどいい


空から見て戦況がわかっていたほうが戦いやすいこともあるし、もしかしたら元杉神官がいるのは城や別の建物かもしれないからこうやって別行動を取るのはありなはずだ


神殿に元杉神官がいなくてもすぐに戻れば良い



「じゃあ父君の尻は俺が守ろう、さぁ早く行ってくれ!」



・・・・後ろって意味だよね?


い、いや、戦場を知ってるニロンさんがいれば心強い、うん


ニロンさんは入口付近で戦うことになった


分裂して戦えるからこういうときには便利らしい


分裂すると知性が物凄く落ちる個体もいるからできるだけ味方はいないほうが戦いやすいらしい・・・神殿に突入して味方を攻撃したり邪魔になることもあるから外でアンデッドを倒すほうが楽なのだと



「なーに、父君は死なせないさ、そっちは任せたよ!勇者と同じ髪を持つ美姫よ!」


「美姫じゃないですけど、はいっ!」



ニロンさんは怪物に変身して戦い始めた


頭はバッファローと竜と鳥、身体はマッチョな山羊、尻尾は蛇、大きな翼が生えている巨大な怪物



「そうだ、こんな時の言葉があるんだったね・・何なら倒してしまってもいいかい?」


「はい!ご武運を!」



分裂したものも単独で戦っているが、あの本体だったら全部倒せなくても、負けはしないだろう


そういえばアダバンタスさんはいないと思っていたら城門付近で指示を取っているようだ


空に浮かんでいてもやること無いしミルミミスさんがいつの間にか下ろしたようだ


軍にもクラーケンをぶった切ったエゼルさんやこのニロンさんのような強い仲間がいるかもしれないし、軍隊という数の暴力が来れば心強い




エゼルさん、ダリアさん、セーさん、遥、私、ロム、それにボボンと英霊騎士達にタカくんで神殿に突入する




どうせなら全員で行きたいところだけど、退路が確保できないと意味がない


ミルミミスさんもこの王都ごと破壊し尽くさんとばかりに暴れているし敵が混乱している今がチャンスだ



私は祝福されたライフルで後ろからアンデッドを撃ち抜いていく


遥達は目にも止まらない速さで戦ってるから明らかに遠距離攻撃しそうな相手や遠くで邪魔にならない敵にだけだが、これも大事だろう


サシル様に道しるべを聞いて行くのに私は必要なはずだ



危険とわかっているし、足手まといになるかもしれない



その結果死ぬかもしれない



だけどそれでも、やらずにはいられない



―――――どうか無事でいてください、元杉神官っ!


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