第558話 命の洗濯


お風呂に入ろうとしたのだが・・・まずアダバンタスが大きすぎる



「アダバンタス、髪洗うからうつ伏せに寝転んで」


「はい」



アダバンタスはニロンの首根っこを握ったままお風呂の床に寝転んだ


ニロンは女風呂に突撃してせーちゃんの大金棒で撃沈して帰ってきた


ヨーコの眠りの魔法で動けないままでいる・・割れた頭は治したが・・・こんなのでもレアナー教で、仲間である


仲間だから・・だからこそ・・・恥ずかしい


ホール神殿長連れてきたら落ち着かないかな?いや「よくやった、しかしツメが甘いぞ、ふぉっふぉっふぉっ・・・・今度は儂とやろう」とかいいかねない


レアナー神裁判にかけてもいいけど女神様的には覗きや求婚行動はありだから微妙なところだ、今度康介伯父さんと相談しよう



うちでは大柄な六太でもアダバンタス相手では子供のように小さく見える


二人の髪を信徒に洗ってもらって、僕はアダバンタスの背中に乗って背中をゴシゴシと擦る


泡立たず、なんか黒っぽくてきちゃない



アダバンタスは巨人の血を引いていて大柄だし、更に加護も授かって大きくなれる


大きくなってすぐにもとに戻るわけではなく、月のかけ具合や天気で大きくなったり小さくしぼんだりもする


今日はまだ小さめのときで良かった


本人にはコントロールできないから城を壊したこともあって、王子でありながら野人のような暮らしをしていたアダバンタス


普通に入れる湯船やお風呂屋さんはないし、瘴気の漂うザウスキアでは川や、底に瘴気の溜まっているかもしれない水場で体を洗うなんてことは出来なかったはずだ


数回洗い流してやっと泡立つまで洗って背中を降りて髪も背中も泡を流す、お腹側は自分でやってもらう・・おっきな手だな



アダバンタスとはなんでかあったときには既に敬意を持たれていたんだよね



座ってもらって、ニロンの眠りを杖を取り出して解除して起こした



「アダバンタス、ニロンこれもって」


「はい」


「はっ?!女湯にはいれたはずがなぜこんな事に・・・?」


「ニロン、僕とお風呂入ろ?」


「麗しき君の頼みとあらば・・・してこれは?」



お風呂用のボディタオルだ


アダバンタス用のは信徒たちがボディタオルを縫い合わせてくれていた


そこにボディソープを何回もプッシュしてならんで体を洗う、体の前側はみんなでこするよりもこのほうがきっと早い



「おぉ、ありがたい・・粘液まみれも可愛かったですが泡にまみれたそのすがダバイッ?!」


「ニロン、黙って体を洗え・・思ってた風呂と違うのですが・・・」


「ザウスキアだとお風呂はいきなり浸かって終わりだけど、皆でいきなり入ると泥で汚れるでしょ?」


「たしかに」


「だから先に体を洗って湯船を汚さないようにしてから皆で入って、体が温まったら上がるの、湯船で汗かいたなーって思ったらもう一回身体洗っても良いから」



自分でも背中を洗うやり方を教えて、洗い残しがないかとニロンの背中をもう一度洗った


アダバンタスはもう洗ったからか、僕の背中を洗ってくれた


大きな体にしては意外と器用である


ちゃんと洗い落としてから湯船に浸かる


アダバンタスが入るも、城の巨大な湯船は問題なかったようだ



「おぉ・・風呂なんて生まれて初めてです」


「アダバンタス大きいもんね」


「だから臭いんだ、もっと身だしなみには気を使いたまえ」



アダバンタスが殴ろうとしたのがわかった、ニロンは男に対して基本的に遠慮がない



「暴れたらデザート抜きね」


「「・・・・・はい」」



ゆったり湯に浸かってあがり、三人でフルーツ牛乳を飲むことにする



「これは?」


「ガラスの、靴?」



信徒によると外国ではこういう巨大なジョッキでビールを飲むことがあるらしい「アダバンタスさんだけガラスじゃないのも」と一番大きなグラスを探してきてくれた



「腰に手を当てて飲むものだよ」


「ほー」


「作法があるのですな、では」



一斉に腰に手を当てて飲み干した


不思議なまでに美味しい



「ぷはぁっ!これは素晴らしい!喉にするりと入り、火照った身体が心地よく、視界がひらけるまである!!これはげいじゅ「飲み物ね」


「アダバンタスこれ着てね、信徒が作ってくれたって」


「ありがたい!」



全員分の甚平を作ってくれていた


服飾に詳しい信徒が設計図を作って、牢獄エリアの人に仕事として作ってもらったみたいだ


何枚か予備もある、うん、他の人は絶対着れないしお土産用だ


牢獄エリアで加速した時間だからできることだな


おもてなし精神とでも言うのか、こういう時の信徒たちは一致団結して何かをする


きっと今頃普通の洋服も作ってるんじゃないかな


服を着たらまずやることは[カジンの捕縛布]の棘付きでニロンを縛って置くことだ



「こ、これは少々激しすぎるのではないですかな?!」



出たら絶対隣の女湯に突撃するもんね



「どうせまたのぞきに行こうとするでしょ」


「紳士の嗜みですし、当然でしょう」


「こっちだと犯罪だからね、大人しくしてて」


「愛に生きるのが定めですゆえ」


「・・・・・」



口も縛っておいて鍵のかけられる部屋でゆったりして戦況はどうなってるのかとか予言はどうなってるのかとか、わかってる敵についての情報を教えてもらって女性陣を待った


匂いのつきそうなものはお風呂前に食べたがやっぱりこっちに来たならデザートは食べてもらいたい、どうせ美味しいものを食べるなら皆で食べた方がいいに決まってる

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