第541話 領地の商売3


儲けると言っても、何で儲けるかは様々だ


人を使って傭兵するのもよし、物を売って儲けるのもよし、魔法を使って儲けるのもよし


お父さんの子供になったことでほとんど無くならないほどの魔力を得た


お父さんが異世界にいる時は流石に途切れるが、そもそも使い切れないほどの魔力があればやれることは多くある


一度で出せる魔力量に限界はあるし操るのも個人の資質だが強い魔法を使えるだけの魔力があれば練習し放題である


領民の魔力量の上限も上がったし、この領地に住む皆は他領に比べると比較できないほど強い力をもっている


だから我もビーツもラディッシュも幼い子供を引き連れてレアナー教国を回っていた


戦闘に特化している子供はヴァンさんのような戦闘に長けたものが集めて訓練していてその辺の賊に引けをとる事が無い


ただやはり経験不足であるし、賊が弱いレアナー教国でだけで練習して学んでもらっている


荷馬車の護り方、機獣との戦い方、戦える護衛との動き方、関所の通り方、宿の取り方、ぼったくりを見極めることなど学んで仕事につく


一応領地に学校もあるが学んでばかりはいられない、いつだって戦えるように最低限邪魔にならない動き方を赤子以外の全ての領民が学ぶべきだ



―――――・・・領地の外の人にとっては、我々はいつだって『アンデッドになるかもしれない恐ろしい存在』なのだから



ちゃんと経験を積んだ強いものは別の国の領地に定期的に巡回する


やはり嫌な思いをするものも多いようだが生きられるだけマシだろう


死を待つしか無い難民のときと違ってなんとやりがいのあることか



商売は着々と成功していっている


お父さんは次元の神の加護も授かっていて、超高額な収納袋をわんさかもっている


一つあれば商人として成功するだろうにそれを無数にだ


だから輸送にうちが困ることは殆どない


身軽に動けるし、大きな商売以外であれば現地の裁量である程度売っても良いということにしているが・・・やはりと言うべきか、騙されたり損をするものはいる


国によって貨幣は違うし、擦り切れた金貨と出来たばかりの輝く金貨では価値が違う


宝石で払う人もいれば魔核や魔石、魔晶石に希少金属で払う人もいる


まだそれならマシだが物々交換もよくある話だ


食品で支払うものもいるが中がかさ増しは当たり前・・腐っていたり虫が湧いているなど腹立たしい


商売の世界には『いくら経験を積んでも足りない』と言う言葉があるがまさにそれだ


何十年商人をやっていても騙されることがあるのに駆け出しの商人が全てうまくいくわけがないのだ


幸い領地を巡る団体には必ず知識のあるものや国の重鎮だったもの、元文官なんかを一人はつけている


大きく騙されることはないようだし・・経験を積めたと見るべきだろう



基本的に物々交換はしないようにしてはいるがそれでもどうしても言ってくる人はいる


他の商売人は荷馬車に金だけではなく商品を積んでいるのだから気持ちは分からないでもない


お父さんには「どう頑張っても完璧にできるものじゃないし安全第一で」と言われている


儲けは安全な範囲でできるだけ武力を重視して毛gは人が出ないように頑張ろう


むちゃくちゃ言ってくる輩には容赦しなくてもいいというお言葉ももらっているし、ゴミクズ貴族にいきなり捕まって荷物全部持っていかれるということもあるがそんな時は皆で集まってボコりに行く


大勢の目の前で勇者の子供たちがやっている商会に喧嘩を売った邪教徒であると声を上げて攻めこむのがいつもの手だ


邪教徒の貴族がいる土地の民であれば「これを許せば他所から攻め込まれるかもしれない」「神殿が敵に回るぞ」なんて吹聴すればと民も一緒になって攻め込んでくれる



次は何を売ろうか、異世界の物を纏めた倉庫を見に行くが・・・本当によくわからないものが多い


黒葉様に簡単な説明を書いてもらっているがわからないものばかりだ


自分たちがわからないということは、もちろん客にもわからないということで・・売り方を考える必要がある


その中で素晴らしいものがあった



食器だ



お父さんが自前でもっていたハシというものは未だにまともに使えないがスプーンにナイフにフォークという金属製で形の揃ったものが山ほどあった


フォークとかいう突き匙も先端が2本ではなく4本というのは斬新だ


まずは使ってみたのだが、耐久性が素晴らしい


錆びないし、ぼやけないのだ


そして口に含んで強い鉄の味がしない


金属であるにも関わらず、表面に装飾があったりするものではないが一本一本金属が尖っていたり、口に引っかかるような凹凸もない


しかも嵩張らない



きっとこれは高価だろうと、仕入れ値を心配した



物の売り方を考えるのに『仕入れ値と売値』『売った場合、護衛や税の分を加味していくらの儲けになるのか』『継続して売れるか』など多くを考えないといけない


食器でミスリルのような耐久性のある金属、しかも錆に強く、表面もくすんだりボヤけたりもしない


珍しいことに表面にボヤけても良い装飾が施されているわけでもない


切れ味が悪すぎるナイフも、肉は切れるし、客人に「敵意のない証」としてなら切れ味のなさはむしろ良いだろう・・・斬新すぎるが


そんなものがダンボールにはいっぱいあるが、それでもこれだけしか用意できないのとこれから先も用意できるのではぜんぜん違う



「え?超安いよ?3本100円とかだし」


「どれぐらいの値段なのでしょう?」


「前に渡したシャツ、あれ1枚でこれ30本分ぐらいかな?また買ってこようか?」



意味がわからないほどの安さだ


これは売れるだろうけど・・貴族ってまともな奴が居な・・・まてまて、アホに来られすぎて「貴族と言えば迷惑をかけてくる」という先入観が出来てしまっている


本来の貴族は、力があって、魔獣と戦って領地を護り、その土地の神様を祀る・・いわば神官に近い存在であるはずだ


少々の賄賂で離せばまともな対応をしてくれる生き物のはず・・・・・はぁ



本当は・・・もっと簡単に売れるものがある




塩と胡椒、それと砂糖だ




しかしどれも売りにくい


どれも高級品であって、塩なんて基本的に王家が売るものである


塩は人に欠かせないものであるがとれる量が限られる


岩塩であれば掘削、海塩であれば海の近くでの危険な作業、そして錬金塩であれば術師がいる神様から贈られるものなんてのもあるがそれでも足りないものである


塩も様々だ、岩塩であれば少し毒が混じってるような塩もあるし青や黄色だったり、海の塩であれば砂や鱗が混じってることはよくある


錬金術師の塩は味気ないし神の塩は食用というよりかはアンデッド用か魔法に使う触媒となる


人の生活に欠かせないために戦争にも使われるしそれを取り扱うというのは権威が必要となる


価値のあるものだからこそ、取り扱うのは権力がある強いものでないと奪われかねないのだ



なのに・・なのに異世界では塩も砂糖も胡椒も貴重ではなく安く手に入るらしい、意味不明すぎる


専売ですらなく免許や許可証もいらない・・・価値があるとわかっているから、価値を皆が知っているからこそ高くは売れるが専門の業者にしか許されないような物品である




お父さんが「これって高く売れるんだよね?」と置き場所にすら困る100トン?を越える塩を持ってきた、量がおかしい





しかも少し舐めてみたがちゃんとしょっぱくて、雑味や苦味もなく少し甘みも感じる


白くて砂や鱗も混じってない最高品質である、品質もおかしい






室内に大量の物品が届いても大丈夫なように準備はしていたけど、それを埋め尽くしてしまった・・また倉を建てないとな


しかも収納から出すのも入れるのもお父さんの手によって行われるし、たいへんとわかっているので「戻して」とも言えない


砂糖も、胡椒も、砂糖も・・そして塩と胡椒の初めから混ぜてあるものを・・・・・大量においていかれて、流石にエッサイ神官長に連絡した


胡椒も砂糖もこちらの世界にもあるし、売れるとは思うが塩以上に高級品である


商売をするにあたってエッサイ神官長とは「好きに売っても大丈夫ですよ、難民たちのためとわかっていますから」と話したことはあるが国と国の繋がりもあるし、下手に売ればレアナー神聖教国が襲いかかってきかねない



売れるものは多々あるのだ



だがどうやって儲けるか、ただの一つでだって財を築き上げれるようなものをお父さんは建物単位で仕入れてくれる



商会の長がこんなに大変だなんて思いもしなかったなぁ・・・・・

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