第491話 衝撃映像
奈美が具合が悪くなっていたのは見ていて分かっていたし心配していた
私が骨肉腫になったときも疲れが取れなくて、気が付いたら階段から落ちてしまって病院に居た
起きたら顔面から落ちたとかで歯が折れていて首にカラーが巻かれていた
検査で、癌、若い人は骨肉腫というらしいがそれが見つかって、どんどん人生のドン底まで転がり落ちていった
そんなの人によるってわかってる
だけど、奈美もそうなんじゃないかって・・すごく、怖かった
あんな思いを、絶対にしてほしくない
心配で何も手がつけられなくなり、おかゆを作ろうとして母さんにフライパンでひっぱたかれた
洋介も、レアナー様もいない
こんなときなのに
怖くて、すごく怖くて・・・心配でたまらない
奈美は私と違って大神官として神殿で怪我を治しているしレアナービルにいるときからずっと仕事をしている
大学だってこの試験で卒業に必要な単位を取り終えられるように詰め込んでいるはずなのにだ
私もそうだった
試験やレポートを詰め込んで皆と・・試験対策を頑張った
もしかしたらもしかしたらと嫌な方向にばかり考えが行ってしまう
もしかしたら奈美が居なくなるかもしれない
そんな考えたくもない気持ちがどんどん湧いてきてしまう
一緒に寝ようとしたのだけど部屋から追い出されてしまって・・やっぱり心配でなにかあったときのためにドアの前で寝てしまった
奈美に買ってきてもらったモバイルバッテリーでスマホを充電し、地球に帰ってきているかもしれない洋介に連絡をしようとメッセージを送り続けて、奈美の最近の様子から病気を調べていく
病気のことはどうにも分からないが嫌なことばかり書かれている
少しでも寝て、日中に奈美の側で動けるようにしようと体を休めていると奈美が起きてきた
朝ごはんは私はしっかり食べる方だ
山盛りのポテトサラダ、牛の肩もも肉の赤身ステーキ500g、雑穀米入りご飯、トマト一玉、豆腐、豚汁、漬物、りんご
「よくそんなに食べれるね」
「聖騎士部は身体が基本だからね・・・ステーキもう一つおかわり!」
「嘘でしょ!まだ食べるの!?」
奈美はジャムを塗ったトーストにウインナー2本ベーコン1枚と目玉焼き、それとミニサラダだ
それとブラックコーヒー
食べたくなったら食べてと持ってきた大きなフランクフルトはいらないと言われたので私が食べる
レアナー教の共同食堂はクオリティが高い
母さんの料理もプロ級だけど料理を50年やっていたような料理人が何人もここにはいる
世界のプロの料理人がいつ来ても美味しいものを作ってくれる
素材も良いものを使っているし、残った分は全部異世界行き
・・・・ただ、創作意欲が高まったとかでチョコで私の裸像を作って神様に捧げようとして母さんが壊したり、りんごやザクロを揚げたスイーツを作ろうとしたりと結構好き放題しているのでたまに怖いものが出てくることもある
レアナー教でまともなのは資材や人、給料を管理しているような中立派の人の多い部ぐらいかもしれないな
食事が終わって、部屋に戻って奈美と動画を見てみる
「歯ぎしりとかしても笑わないでよ?」
「わかってるって」
動画の再生をするとすっと寝ている奈美
普通に寝て、変な部分は何もない
・・・・・ん”ん”んっ!!!??
思わず停止ボタンを押してしまった
「遥」
「待ってなにこれ」
何もない壁に、ドアが出現した
画面の奈美は寝たままだ
部屋の隅に置かれたこのカメラでも静かな環境だからかしっかりと音を拾っていた
「おはようかーさん」
「せーちゃん、お・は・よ・お♪ずんちゃ!ずんちゃ!ずんちゃちゃちゃ♪FOO!」
一時停止した
セーがドアを作って、奈美の横にまで行き、奈美の横に置かれたブローチの中から精霊であるレーマ・ワリが出てきて、ブローチの近くで歌って踊っていた
奈美を見ると頭を抱えていた
私も頭痛がする
あのアホ精霊、静かなのは封印されて動けないんじゃなかったのか・・・
「・・・・・・・・・・・・続けて」
「わかった」
そもそもかーさんとはなんだろうか?
セーの母親といえば光の神レミーアとか・・だったはずだ
力が強くなりすぎて、国を滅ぼすまでになったとかで神様たちによって分割されたのだとか・・・
そういえばレーマ・ワリも悪戯が過ぎて邪神から精霊になったとか
光の神レミーアは力が強すぎた結果、別の神様も次々産んだ
レアナー様やサシル様もそれに連なる神様のはずだ
「今夜は、寝かさないぜー!!ランランラー♪ヴォーラーゴー♫」
動画の再生を続けると寝ている奈美のすぐ横で歌ったり踊ったりしているレーマとセーがなにか話し続けていた
ブローチから光る玉、別の精霊?らしきものも出てきて部屋中を飛び回っていて、スライムのポポンもぴょこぴょこ動いて更に眩しい
ポポンも発光して、奈美の寝ている部屋はパーティナイト状態である
「ま、まぁ原因がわかってよかったじゃない?」
「・・・・・」
うなだれた奈美だが、私は病気じゃなくてとても安心した
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