第490話 黒葉の不眠、遥の心配
大学のレポートで毎日忙しく過ごしているがやけに疲れが抜けない
レアナー城の時間の進みの遅い部屋でゆっくり寝ても・・・・・全然だめだ
「奈美、どうしたの?目の下、隈くっきり出来てるよ?」
「最近なんか疲れが取れなくて・・・」
「病院行こ!」
「でも私、健康だよ?」
遥に引っ張られて登仙病院に連れて行かれてしまった
そういえば遥が癌になる前は今ぐらいの時期だった
だからもしも私になにかあったらと心配になったのだと思う、遥はすぐに車を出してくれた
私も寝ているのに疲れが全く取れない原因がわからなくて気にはなっていた
検査では全く問題なかった
様子見ということで弱めの睡眠改善薬を出された
「病気というのはいろんな要因が考えられる、遺伝要因、環境要因、生活習慣要因など・・・わかるかい?」
「病気の原因は色々あるってことですよね」
「そう、だから特殊な環境に身を置く君たちのことは医者には全くわからない可能性もある、だからできる限り用心した方がいい」
普通の人と違う原因があるとすれば・・・城の環境要因か、魔法が要因の筈だ
MRIでも全身何処にも病気の気配もない
だったらなにか魔法か魔力が原因なのかな?
「わかりました、なにかしておいたほうが良いことはありますか?」
「原因もわからず、くっきり隈が出来るほど疲れているのは・・普通ではない」
それはそうだよね、いつの間にかメイクでも隠しきれないほどの隈ができている
自分でも考えられるのは大学のレポートが大変だし単なる疲れが原因かそれとも魔法の練習もしてるしその辺りの何かが原因だとは思っていた
検査で去年の遥のように癌が見つからないのは本当に良かった
―――・・私よりも、遥のことが心配になってきた
全ての検査に付き添い、待合室で祈るようにうなだれてしまっている
この病院は、遥にとって死を覚悟した場所だしフラッシュバックしているのかもしれない
疲れを感じているのと隈が出ているだけの私よりも遥のことが心配になってくる
まぁそれだけ大切にしてくれてると思うとむず痒くもなるが
「検査入院して見ると良いかもしれないが大学のレポートや君に重責が重なっていることからストレスや過労などの可能性もある」
「はい」
「まだはっきりとはわかっていないが・・・そうだね、寝ている自分に向かって録音や録画しておくと良いかもしれない」
「と言うと?」
「無意識のうちに歯ぎしりをしていたり、座ったりブツブツ言っているような事例はよくあるんだ」
「夢遊病ですか?歩きまわったりするやつ」
そういう自覚はないけど、もしかしたらそうしているのかもしれない
自分ではわからないのだから可能性は確かに十分ある
「可能性はゼロではない、ストレスになっていることを寝ている間だけ無意識にぶつけて休めていないなどの可能性はある・・・けどそれも可能性の一つだからね」
「わかりました」
「やはりゆっくり療養するのが一番だよ」
それから遥が酷く過保護になった
病院の付添ではすぐ横にいるし、私が倒れないように腕を組んでくる
運転を終われば助手席のドアを開けに来るし、食事はあーんさせてくる
着替えだって遥がしようとしてくる
お風呂では私が転けないように至近距離でウロウロ
「大丈夫だって」
「でもさ」
「大丈夫だから!」
トイレまで転けないように一緒に入ってこようとしたのでムチで外に出した
一緒に寝ようとしてくるのそうだけど私から見て遥のほうが心配になってくる
元杉神官と皆と寝る部屋もあるが最近は個室で寝ている
レポートもあるしスライムのポポンが部屋を荒らすからだ
だけどポポンは最近ちゃんと躾けしたからかやっと部屋を荒らすことはなくなった
寝て、起きて、ポポンは位置が変わっていないし、多分違う、はず
歯ぎしりやぶつぶつ寝言を言ってるのを親友に聞かれるのは絶対に嫌だ
ちょっと怖いがカメラは四台回しっぱなしにしてベッドの近くにも集音器を設置して睡眠改善薬を飲んで寝る
この城の中には黒い人型の精霊や光る玉型の精霊も居るし、なにかされている可能性もあるしね
ちょっとホラーな気がして怖い気もしたけど病院で検査疲れしたからかすっと寝ることが出来た
朝起きて何も変わってないことを見渡して確認する
ポポンも寝る前と同じ位置
軽く痛い肩に疲れが取れてないこともいつも通り
カメラはつけっぱなしだが確認はご飯食べてからにしよう、もしもショッキングなホラー映像が撮れていたとしてお腹を満たしておいてからにしたい
ぐっ・・・
あれ?ドアが開かない?
少し空いた隙間から見ると外を遥が座って寝てた
少しだけ隙間を作って外に出て起こした
「おはよう遥」
「おは、おはよう奈美、寝れた?」
「うん」
「カメラはどうだった?」
「まだ見てない、ご飯食べてからにしよっかなって」
眠たそうにしている遥は本気で心配してくれているようで、なんだか嬉しくてニヤニヤしてしまう
「どうかした?」
「なんでもない!」
親友に心配されたことがどこか嬉しくて、ついつい顔に出てしまったかもしれない
組まれた腕を引いて食堂まで歩いた
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