第488話 感謝と逆恨み
「治療を受けるものはちゃんとならぶのじゃ!」
【清浄化】で瘴気を祓い、傷ついた身体に【治癒】をすれば治せる
けど【聖域】で覆ってその範囲を【清浄化】でぎゅうぎゅうに詰め込んだほうがすぐに治る
どんどん治して行くが、やっぱりいつもと同じだ
「ありがとうございます!ありがとうございます!!」
「なんでもっと早く来てくれなかったんだ・・・なんで、なんで・・・」
「お母さん!私、治ったよ!!」
「慈悲深きレアナー様に感謝を・・」
「治して!生き返らせてよ!!」
「無礼な・・下がりなさい!」
「あなたっ!あぁ、貴方の顔が見えるわ・・」
いつものように治しては感謝され、逆恨みされ、レアナー様に祈られる
投げられた石は避けるまでもない、どうせ障壁で阻まれる
それに相手だって本気で攻撃したくてやってるわけじゃない、やるせない気持ちを何処かにぶつけたいだけで誰でもいいのだ
・・・・全てを治せるわけじゃない
僕の見ていないところで僕の知らない場所で死んでいく人もいる
スマートフォーンでも「治せる人だけ治すのは偽善じゃないか」と言われたことがある
ふとそれを見つけて漢字を調べた
『偽善』とは偽りの善行、見せかけだけ、上辺だけの善行という意味らしい
全てを治せないのが偽善なら僕は偽善でもいいと思う
全ての人を助けるなんて神様にも多分無理だ
石を投げてきたのは確かに悪いがどうせ僕には傷がつかない、傷ついたとしてもすぐに治る
それに眼の前の傷ついた小さな子供を、一人でも助けることができるのなら意味があることなんだと思う
「大丈夫ですじゃ?」
「うん、問題ないよ」
頬にあたった石、だけど痛みよりも汚れが気になる
酷く顔が汚れていれば何かあったと周りの人にわかってしまう
きっとあの子は鞭打たれるかなにか労働を課せられる
それでも何もしなければきっと僕に恩を感じた周りの人達が殺してしまいかねない
ちゃんと罰を与えないといけないができれば真っ当に生きていって欲しい
<仕方ないですぅ>
もっといいやり方があるのかも知れませんよ
<よーすけはやれることをしっかりやってるですぅ>
地球の人を治しても治した相手に恨まれることは殆どない
でもこちらではこれが当たり前で、懐かしくすら思う
「セーセルリー、僕を恨んだ人にも石を投げた子にも罰は与えてもいいけど奴隷にしたり、腕を切り落としたり、殺しちゃ駄目だからね?」
「いいのですかのぉ?」
「うん、いつものことだし」
・・っ・・・・てっ・・・・・!!
わかるだけ全員治し、あとは残った現地の神官にも挨拶程度に【清浄化】をかけていると・・・・なにか騒ぎが聞こえてきた
「セーセルリー?」
「見てきますじゃ」
「いや、僕も行くよ」
僕の聴覚はかなりの範囲が聞こえるがセーセルリーにも聞こえていたようだ
音の場所は結構離れている
人混みの中を残像を残して移動するセーセルリー・・・なんであんなに腰が曲がって見た目ヨボヨボなのに速いんだ?なにかの妖怪みたいだ
見に行くと・・嫌な光景があった
「来い!領民が勝手に他領に来るなど許されん行為だ!」
「いやっ!やめて!やめて!!」
「おかあさん!」
身なりの良さそうな男が護衛と供に先程治した親子を連れて行こうと鎖を手首につなげていた
周りには何人か倒れているが彼らがしたのだろう
貴族か商人、奴隷狩りか?
既に手に持った棒で打ったのか親は頭から血を流している
「他にも居るだろう?連れてくるなら鞭打ちの回数を減らしてやる!さっさと吐けっ!」
「何をしているじゃ!」
セーセルリーは腰の後ろに回した手で僕に来ないように知らせている
単なる賊ではなさそうだ
僕を止めるということはなにか問題があるかもしれない
・・・少し離れて様子を見てみることにしよう
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