第486話 海の近くの領地


「おぉ領主様!おかえりなさいませ!!」


「ただいまー、一緒にいるのはロム師匠とランディとミルミミスとルール、よろしくね」




寒村というのがふさわしかった小さな村だった


崖の上の、ほとんど何もない村だったのだけど・・今では砦や商店もあって結構発展していた


常に風が舞い上がるここは、人の住める場所じゃなかったんだけどな



「ここの取り纏めをさせていただいておりますセーセルリーですじゃ・・ここではなんですのでまずは館へ」


「わかった」



セーセルリーは高齢なエルフ族でもう何年生きてるかわからない


高齢であるにも関わらずとても聡明である


よぼよぼして腰が曲がってしまっているが・・・・どう動いてるのか、腰が90度になっているにも関わらず、動きはとても機敏だ



「ルール、いい子だったね、おすわり」


「コルルル♪・・・ル!?」


「キュクル!」



ルールにはバニラアイスを上げる


アメリカで買ったバケツサイズのアイスだ


だけどルールはミルミミスに睨まれて下がった


ミルミミスが威圧したのでミルミミスにもアイスを出す


ルールはミルミミスよりも凄く大きいけどミルミミスには勝てないようだ・・見てないところでいじめてないと良いんだけど



「ミルミミスはこっち、ルールから奪っちゃ駄目だからね」


「キュクルル」



ミルミミスにはチョコアイス


バニラ味よりもチョコ味がお好みらしい


ルールもミルミミスも生物的に食べて良いのかとも思うんだけど大丈夫らしい


特に猫は食べ物には気をつけないといけないのだけどルールは聖獣だから大丈夫っぽい、神様に祈って聞いた



「俺にも!」

「ボクにも!」

「儂にも!」


「はいはい」



なぜかランディとロムとセーセルリーにもアイスをせがまれたので何種類か出して一緒に食べることにした


コンビニでも売ってるようなアイスだけど実は大量に買い占めていたりする


なんと・・・アイスには賞味期限がない!


だから工場からいっぱい買ったけど冷凍の設備がないとなかなか出す機会がない


主要メーカーには回って買わせてもらったし種類もある


僕はチョコモナカ、ランディは日本のアイスが良かったらしいのであずきのいっぱい詰まったアイス、ロムは綺麗だからとチョコミント、セーセルリーは僕の故郷のものと言われて小豆のやつを選ぼうとしたけどあれは硬いからかき氷に小豆が入ったやつを渡した



ランディとロムは硬いのとスースーするのが気に入ったのか騒いでいたが僕はどんどん集まってくる子どもたちにいっぱいアイスを出していった、喜んでくれると良いな


レアナー様は僕の肩の上でフルーツの粒アイス食べてる


小さい状態でも両手で持って食べるのが好きらしく、最近よく食べている


おかげで僕の首元や耳元はよくアイスでベチャベチャになる



<へへへー>


「笑ってもごまかされませんよ」



アイスを堪能したし領地に関する書類や状況をロム師匠と一緒に聞いて、暇そうなルールとミルミミスにはランディと村を見て回ってもらう



「ランディを守ってね?」


「コルルル」

「キュクルルル」




この領地は農地が少ないがここでしかとれない薬草と森から巨大な兎が来るのでそういう生活をしていたはず・・・だったのだけど僕の領地になってからは身体の治療して欲しい人も集まってきて発展を続けているらしい


僕が領主である限り税金もかからないが惜しくなったのか貴族たちから度々交渉がされているようだ


崖の下の海には鰐竜が屯しているし、攻撃すると一晩中鳴き叫んでうるさいのでなかなか住みやすいとはいえない


セーセルリーによると鰐竜はここ以外にも近くの島は鰐竜の巣窟になっているのでできるだけ減らしたいそうだ


うん、前に聞いたときと変わらない



ここの崖の下には潮の満ち引きで魚が入ってきて出られなくなるという環境であること、崖の上から段差を伝って簡単に人が降りれることから漁に出来ないかと考えたのだ


船で海に出るのは・・ダメだね、海龍とクラーケンにとって鰐竜は動きの遅いご飯である


このあたりにも居るから商人もこのあたりには船では絶対に来ない



たまに三つ巴で争っていて一週間はうるさいから人が住むには厳しい環境だ



「ただ、やはり他の魔物も寄り付かないので住みやすいといえば住みやすいのですじゃ」


「・・・・・」


<・・・・・>



きっと僕は渋い顔をしていることだろう


あまりにもうるさいし、凶悪な魔物が近くをよく出現するのは人によってはこの領地は耐えられないという報告も聞いている


レアナー様も同じく渋い顔をしている




「<ギュギャオオォオオオオオオオオオ!!!!>」




外から海龍の鳴き声が聞こえた


セーセルリーは腰の曲がったまま崖に向かって移動した


残像を残すほどのスピード




「ヒョホホホホ!大漁大漁!!」





僕が駆けつけたときには海龍は首を落とされ、海から崖の上に引き寄せられていた


十二将とか言う謎の部隊を作ってる僕の子どもの一人、『風聖』のセーセルリー・エランティア・ノッセ・モトスギ・リューリャ


何百年、何千年生きているかわからない強者


彼女が居るからここにはなんとか人が住めるのだ



竜巻を操り、海龍を巻き上げながら空中で血生臭く分解しているセリーは楽しそうである

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