第483話 海の近くの領地


「ランディはどうする?」


「んー、ついていくぜ」


「わかったー、待っててねー」



お寿司を食べて皆に僕の考えてることを聞いてもらってランディにもどうするか聞いた


海の近くの領地の開発、うまく行けば僕になにかあったときでもこちらの食糧事情がましになるかもしれない


ランディは何の話かよくわかっていなさそうだけど置いていかれてたまるかとついていくことを決めたようだ


この領地の近くとザウスキアに向かって【清浄化】を放っておいた


地上に降りて一度レアナー城に帰る



「ルール、行くよ」


「コルルルル」



ルールを連れて領地に戻る


海の近くの領地には転移魔法を覚える前にしか行ってないし一度移動しないといけない


ミルミミスと僕だけでもいけるけどロム師匠は賢いし魔物にも詳しい


なにか良い案を得られるかもしれない


魔王軍の残党が途中いれば僕が近づくと危ない



僕のやることは大きく分けて4つ



地球のレアナー教の向上、ザウスキアへの後方支援、領地の難民への対処、それと食糧難の解消だ


地球のレアナー教は今のところ安定しているし問題はない


後方支援はザウスキアに近付けない以上領地からの【清浄化】を放つやり方でいいはずだ


難民や解放奴隷には【聖域】と高濃度の【清浄化】を領地で使うことで瘴気の病に冒された人が苦しむこともないだろうし、子どもたちが治安の悪化を止めてくれていて・・何より食べ物や服がある、きっと大丈夫だ


問題は領民や解放奴隷、難民だけではなく軍にも食料は不足している


地球から大量に食料を持ち込んでいるから今は問題ではないが僕になにかあったときの備えはしておくべきだ



地球の各地から集めている食料はとんでもない量になる


だけど僕の収納は加護によって中の物の時間は止まる、それにいくらでも入るけど出した時点で時間が進む


日持ちのするものが中心の食料だけどそれでも体質で食べられない場合だってあると思うし、30を超える軍に、ザウスキアの元平民である難民、敵軍の捕虜に奴隷たち・・人が増えればそれだけの量を食べる


軍に僕が食料を渡す約束をしているわけではないけど、魔王軍の残党や魔族が敵なら手伝ってしかるべきだろう



「ついていくってのは帰るのに置いていかれないようにって意味だったんだが!?いつでも帰れるのかよ!」


「あ、そう?じゃあいま帰る?」



あ、そういえばさっきランディおいて一度城に帰ったけど「海の近くの領地についていく」って意味じゃなかったのか



「・・・んー、どうせだし役に立って帰ろうと思うんだけどどうかな?俺漁師やってたことあるぜ!」


「ほんとに!」


「あぁ!このランディさんは役に立つ男だぜ!」


「じゃあおねがいするね」


「遠慮すんなよ兄弟!」



大人の知識はすごい


それに漁に詳しい人が居るのなら問題が解決するかもしれない


まぁ何をしても完全に無理かもしれないんだけどうまく行けばそれでいい



阿部は「異世界の食品を日本で育てるのも、日本の食品を異世界で育てるのも生態系のためにはよくない」と言っていた


植物であれば花粉が他の植物に影響するかもしれないし、動物は一匹でも逃げ出せばどう作用するかわからないと


確かに、日本にベヒーモスが一匹でも出たら危ないよね


阿部は「育てるならまずこの私が!」とずいずい来ていたが陸斗にどこかに連れて行かれた


死の荒野は広いし、なんとか農地を作ることが出来たら食料も増えるけど植物は育つのに時間がかかる



ミルミミスにはロムが乗ることになった


ミルミミスはルールになにか強く威圧して僕を乗せようとしたみたいだけどボブが居るし、ルールに僕とボブが乗ってミルミミスとロムには魔物から守ってもらうことにした


僕は空を飛べるしボブと一緒ならなんとか出来るしね


何故かミルミミスが少ししょんぼりし、ルールが喜んだ気がする



「そこはボクと一緒に乗ろうよ・・・?」


「だってロム師匠は火の魔法使えるでしょ?」


「んー、まぁいいけど」



[カジンの捕縛布]をロムにも渡しておき僕とボブもルールに乗る



「え?命綱これだけ?これだけで飛ぶの?」


「うん」


「そうか・・」


「ボブと以前飛んだことあるけど笑ってたよ」


「なにィ!?よーし!ボブよりも高く飛んでくれ!」


「はいはい、行こうか!」



空を飛んでいく


こちらの地図というのは雑で日本の地図とは桁違いにわかりにくい


旅では大きな川や大きな山などを目印にするのだけどそれは地表から見る目印、空から見下ろすのはまるで別だ


しかも飛んでいて雲の中にも魔物が居ることがあるしミルミミスが近くにいると雷が当たるかもしれないから雲も回避しないといけない


まぁ僕はゆっくり乗っていただけでロム師匠に領地まで道案内してもらった


ボブはスマートフォーンでずっと景色を撮影していた


遠くに魔物が飛んでいたことはあったけどミルミミスが近くで飛んでいるからか近寄っては来なかった





海の近くの寂れた領地


崖の上に村があって崖を降りるとすぐに海だ


しかし村のすぐ横、高低差はあるが入江がある



潮の満ち引きで大きく海の水が入ってくるのだが・・・そこは魔物の巣となっている


ウゾウゾとうるさいほど居る鰐竜ゲーガ、鳴き声がゲガゲガだからゲーガなのだがこれがまたうるさい


敵がいると辺り一帯に響くほど鳴きまわるからこの周辺は他の魔物も出にくい


亀とワニを混ぜたような魔物で崖を登ってくることはない、騎士はそのゲーガを自らの力で倒し、その素材で鎧を作ったそうな



しかしゲーガが・・・すごく増えたのだ



騎士の試練の場であったその土地は試練がされることはなくなり、いつしか処刑場として使われるようになった


そんな忌み地だったから領地として価値はなかったのだろう


だから僕が譲り受けることになった



高低差もあって崖の上から攻撃する人もいたがゲーガは頑丈だし生半可な攻撃では意味がなく、倒せたとしても回収ができない


村は久しぶりに行ってみると結構大きくなっていた


まだ遠いが武器を持った人が出てくるのが見える



「まぶしっ!?」



【清浄化】を空に向けて出し、僕だという合図をしておいた


見慣れない竜や高位の霊獣が飛んできたら怖いしね


ただすぐ近くで【清浄化】を出したからボブの目が眩んでしまった

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