第440話 師匠VS弟子


「今日こそ勝ってみせるわ!」


「ははは・・ここの道具好きに使ってもいいの?」



お参りから帰るとお寺のお坊さん、おじちゃんも城に来た


酷く疲れている



「お疲れ?」


「・・・・・洋介、うん、ありがとうな・・・・・・・銀行に行ったり忙しくて来るのが遅れた」


「・・・うん?」



肉の焼ける良い匂いがする


はるねーちゃんは和食も洋食もお菓子も酷い


洋食が比較的ましでちゃんと食べれるときは夏子お義母さんが目を離さずに監修したときだ



・・・ただ、肉料理だけは美味しく作れる



おじちゃんはお坊さんである


だけど肉を食べないとかはなく、むしろ肉料理が大好きでうちでやるバーベキューにはよくいた



肉を焼いているおじちゃんに「生臭坊主め」「うるさいわい」なんてとーさんといつもやり取りをしていた


おじちゃんの肉料理は凄く美味しい、謎にトルコやインド料理が得意だ



「おぉ、良い肉が揃ってるね」



おじちゃんは袈裟を脱いで楽しそうに料理を始めた


シャツがダサい、漢字で肉と書かれている


一斗缶の油をすべて巨大な鍋に入れ、スパイスを混ぜ合わせた赤茶色の液体や生クリームを投入した


マグマのようにボコボコと・・料理?なのか??


凄くいい香りはするけど料理???


ハンバーグらしきものも作っている



対してはるねーちゃんは一抱えはあるでっかい肉を杭でぶっ刺し、炭火の上でぐるぐると回して・・・骨とノコギリを持っている



僕は患者さんや新たな信徒さんのもとに・・・行くのが怖いなぁ


なにかヤバイものをつくらないか心配だ



「大丈夫洋介、私が勝つから!出来たら呼ぶから!行ってきな!!」


「ふふふ、どれほど力をつけたか見せてもらおうか」



ハラハラした気持ちのまま患者を治す


単純な肉料理であればはるねーちゃんの料理はすごく美味しい


ただ、料理が確実に美味しいとは限らない







時間は長く感じたが料理はできてしまった








はるねーちゃんの料理は



「牛のもも肉の炭火焼よ」



豪快な料理だ


巨大な肉に杭を刺し、火の上でぐるぐると回す


かなり原始的な調理法だけどこれはこうやってこそ出せる味だ


炭火でじっくりと表面が焼かれ、岩塩と粗挽き胡椒がかけられ、焼けた表面を包丁で削ぐ


濃い牛肉の味に強い岩塩の味、炭火でほんの少し焦げた香ばしい味


単純に、暴力的に美味しい



「ソースもつけてみて」



ソースは・・なんだろう茶色いソースに緑色のハーブのようなものが散っている



「骨髄のソースよ」



骨を割って中の骨髄を取り出し、ハーブと混ぜ合わせたソース


ソースも肉の味で、トロトロした食感に濃い旨味を感じる


肉も骨髄も、両方主張の強い味だ


だけどソースは塩気は抑えられていて、合わせると足し算ではなく掛け算の美味しさとなる


牛肉だけでも凄く美味しいがソースによって更に洗練された味になる、両方単体でも美味しい



「美味しいね」


「次は私の番だ」



出てきたのは・・四角く整形された肉の塊だ、レタスもついている



「クィマケバブとキョフテ、それとチキンカレーだ」


「キィマケバ?」


「二つともトルコのハンバーグだ、渋い茶を飲んだ後に食べてみて」



渋いお茶を飲んだ後に食べてみる


渋いお茶は前の料理の味をさっぱりさせるためのものだ


ふかっとした蒸されたキョフテハンバーグ、何の肉かはわからないが爽やかな味がする、凄く柔らかくて・・肉というよりもふかっとしたパンのようだ


それともう一つのケバブハンバーグ、スパイシーに辛い


癖のある肉の脂とスパイシーさがとても良く合う


・・・・・あ、おじちゃんの名前思い出した


中島大輝だ


昔からおじちゃんとしか言ってなかったし「おじちゃん」呼びを喜んでいたおじちゃん


康介伯父さんが「だいきー次の肉ー」とか言っていたはず


なぜかわからないけどこのハンバーグを食べて思い出した



最後にチキンカレーを食べる


コクが桁違いだ


カレーの香りが鼻孔をくすぐり、香りに負けずに味もいい



「「どっちが美味しい?」」


「ちょっと味の方向が違いすぎて・・・」


<どっちもおいしーですぅ!>



レアナー様はどちらも美味しいと喜んでいる


はい、切り分けますからちょっと待ってください



はるねーちゃんの牛肉は牛肉の美味しさを追求した美味しさで、赤身の美味しさを存分に味わえる


おじちゃんのキョフテハンバーグはふかふかしてとても爽やか、ケバブハンバーグはヤギか羊かクセになるお肉のクセとスパイシーさが美味しかったし、チキンカレーはスパイスを油にぶち込んでいたからか生クリームを入れていたからかコクが、食べたことはないのに本場の味?がする



はるねーちゃんもおじちゃんもお互いに食べている



「これは・・・」


「おぉ・・・・!」



「これは、遥ちゃんの勝ちだ」


「は?何言ってるんですか?大輝おじさんのほうが全然美味しいじゃないですか?」


「この牛もも肉の丸焼き、以前に教えたレシピを超えている」



たしか昔もこういうのを作っていたように思う


キャンプで一晩かけて寝ずにいる間に焼いて、肉を削いで食べながらいたはずだ


星空を見ながら、これを食べた・・・ような気がする



「私の教えたレシピを超えたものを作ったんだから私の負けだろう」


「いや、先生のケバブとキョフテ、お店で食べるものよりも美味しいし」



肉をパクパク食べてチキンカレーの骨付きチキンを食べているはるねーちゃん



「何よりこんな味、私には想像もできない味でとても真似できないだから先生の勝ち」


「いーや!遥ちゃんの勝ちだ!」


「先生は強情!先生の勝ちなのに譲られても嬉しくない!」


「いやだからそれはっ!!」



なぜかお互いに勝ちを認めずに相手の勝利であると言い合っている



おじちゃんの肉料理が凄く美味しくておじちゃんの料理をキャンプで真似していたはるねーちゃん


おじちゃんは色んな場所で修行していたとかでマサラやブラッククミンなど、日本にはない調味料を自分で調合する


自分で美味しい組み合わせを考えて試していくみたいな言葉ではるねーちゃんが憧れて・・・・たまに失敗するようになったんだよね


大輝おじちゃんもおじちゃんでたまにヤバイ料理挑戦してたし



僕としてはこの二人の料理で倒れなくてよかったと本気で思う


肉料理をもう一通り食べて思う



「うん、どれも美味しいよ」

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