第434話 幸せを求める権利は誰にでもある


私に釣り合う男がいない



父は社長、母はそれを立てていた


昔から私に釣り合う男はいない


低能の猿ばかり


海外旅行をいつもして、使用人を雇って、人に羨ましがられる生活をしたい


他の女に下に見られるなんてまっぴらごめん


私を喜ばせるだけのスペックがない



「あんた、男をとっかえひっかえ!ふざけんじゃないわよ!!?」


「ふん、あんなしょーもない男、もうふっちゃったわよ?よかったら貰ってくださる?」


「クソ女が!!」


「わたくし、社長令嬢でして、汚い言葉はよくわかりませんの」



彼が選んだのは私で、私は彼をふった


その彼は今何をしているか知りませんが私と関係ないのですから付き合えばいいですのに・・・暇な方ですね



私は社長令嬢、社長の座に座りたいだけの男か、私を幸せにする為にどこまでできる男かを見極めないといけません



そんな私にはストレスがかかるし、その間に無性に人の温かみに飢えることがある


だから優しさをくれる男も別で求める


予備も用意し、選別する


だけどなかなか見つからない、私に見合うだけの運命の王子様は


なんて時間がかかるのかしら、まぁこの私に見合うだけの男なんてそうそういないから仕方ないわ



そろそろ結婚をして、幸せになりたい



誰にでも自慢できる男が良い


顔は良く、私に優しくて何でも買ってくれて、私のちょっとしたわがままを笑って許してくれる


私を一番に思ってくれて、私の全てを受け止めてくれる


そんな素敵な男性


妥協はしない、私が幸せになるためなのだから





この子は良いわね


歳は多分23、25歳以上35歳以下のイベントには稀に下の年齢でも来ることはある


私は金を払って、いい男がいないのだからせめて若い男から探そうと思ってきただけだ



素晴らしい



服の上からでもわかる筋肉に高身長


コートが最高級品なのもポイント


さらっと車が買えるほどのコートを着ている辺りとてもお金持ちなのだろう、私に見合いそうだ


オーラも違う、人としての格が違うのは見るだけでわかる


ここの女は彼を満足させることは出来なかったのか帰るところだったのだろう


中の服装はコートで伺えないが肌艶が違う


背筋はピンとしていて、指は白魚のように美しく、シミ一つない肌、整った爪にうるおいのある唇



何より、何よりも目の力が違う



彼に見られると丸裸になったようにさえ感じる


自分でも恋に落ちたと感じ、建前もなく質問に答えてしまう



「年収は・・最低でも3000はほしいわ」


「バカンスは世界を旅行して、いつも私を輝かせてくれるバッグを買って欲しい」


「貴方が言えば他の男とはすぐ別れるわ」


「家庭的に?家のことなんて使用人に任せれば良いのです」



こんなに若くて、私、騙されていないかしら?



いえ、騙されても良い



私を騙している間に、私の魅力で落としてみせるわ



あぁ、彼の声がしびれるように心地よい



彼と出会うために私は生まれてきたのよ



結婚について、相手に求めるもの、趣味、色々聞かれて、答える私の話を熱心に聞いてくれる



私を真摯に見つめるその瞳が愛おしい


出来たらこのままホテルに行こうかしら?



「とても参考になりました、ありがとうございます」



黒い髪が揺れて、まるで宝石のよう


礼儀正しく下げた頭、その毛を感じるためにも舐めてみたい


二人きりでもないのにそんなはしたないこと出来ませんが



「私も質問したいことがあるのだけど、よろしくて?」


「はい」


「貴方の名前は?」


「元杉洋介です」


「洋介・・元杉 洋介さんね・・・もっと聞きたいことがあるのだけどここじゃなんだからもっと静かな場所で聞かせてもらえないかしら?ホテルをとってるの」


「この子は未成年だ、止めなさい」


「・・・・・は?」



横にいた冴えない男に言われた


この会場で最も冴えない男、以前プロフィールを見たことがあるけど酷すぎて逆に覚えている


それよりも・・え?結婚相談所に?嘘でしょ?・・・この男、私を狙ってるの?だからこんなわかりやすい嘘を?やだ、彼の前なのに



「コート脱いで、それでわかるんじゃ?」


「え、あ、はい」



コートを脱いだ彼


胸にデカデカと「体験」「未成年」とテープで貼られている







・・・・・・・おっとよだれが







彼を手に入れるためなら法律なんて関係ないわ


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