第417話 娘はやらん


お父さんってことだし二人きりにしたんだけど大きな声がして中を見に行くと・・・黒葉がキレていた



「どーどー」


「元杉神官は口を出さないでください!」



お互い憎しみ合ってる感じはしない


むしろお互いに愛を感じる


薄くなっているがレアナー様も天井に見ている


震える握った拳、それだけ魔力こめ続けてたら殺しちゃうから駄目だよ



「その、せめてパパさんの服ぐらいまともに着させてあげよう?」


「・・・わかりました」



拘束を外し、黒葉と部屋を出て別の部屋に黒葉を座らせてホットミルクを出すと・・・・・色々話してくれた


つまり黒葉が心配でパパさんは神殿に黒葉を見に来たと



「少し、一人にしてください」


「わかった、タオル置いておくね」


「ありがとう、ございます」



部屋に入らないように言っておいて、僕はお父さんのいる部屋に入った


拘束が外れているのにうなだれて動かない


きれいなバケツに入れた水で少し顔を拭いて、服を着替えさせる


髪の色が変わっている・・後ろ襟が少し茶色くなって・・・染めてた?



「・・・おや、君はあの時の」


「大丈夫ですか?何があったか聞いても?」


「ははは・・身内の恥を晒すようでお恥ずかしい、が・・・・ちょっといいかな?誰かに聞いてもらいたくて・・・・・・・・・・」



聞いてみるとこのパパさんは黒葉の叔父であって本当の父親ではない


だけど本当に黒葉を娘として大切にしている


レアナー教は自分とは関係のない世界だと思っていたのにまさかの娘が中枢人物、心配になって調べてみれば調べるほどレアナー教は怪しい



テレビでもレアナー教を嫌う人がいたから確かにレアナー教はあやしく見えるかもしれない



だから信徒の家族まで城を開放している今ならレアナー教の内部を自分の目で見れる


悪そうだったら黒葉を連れて帰ろうとした


良い宗教だったら、だとしても娘と話し合おうと


でもこんなにも怪しい宗教は無いと自分の目で見て信徒に聞いて駄目だと判断したらしい



「春日井って子のことも悪く言いたくはなかった」


「洋介ってのはギルティだが彼女の情報はネットのものだ、だけどそういう子と付き合えば奈美が危険な目に合うことだってありうるだろう?」


「嫌われてでも目を覚ましてほしかったんだ・・・」



ぽつりぽつりと告解するように話す小林パパさん、酷い後悔を感じる



「そうなんですか」


「そうなんだ・・そうなんだ・・・・・」


「落ち着きましたか?」



一応まともな服は着れた小林さん


ドレスは拒否されたが普通に男性用で良かったらしい


胸に作った白い布とガムテープは変装用だそうだ



「まだ、いや、うん、もう大丈夫、娘は?」


「一人にしてほしいらしく、近くの個室にいます」



沈んだ顔からやっと僕の顔を見た小林さん


なにか照れくさそうにしている



「そうか、君はいい男だな、元杉洋介も君のような男だったら良かったんだが」


「あっ、僕が元杉洋介です」


「・・・・・・・・・・は?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


「僕が元杉洋介です、パパ」


「だれがパパだあwせdrftgyふじこlpげっふぉげっふぉ!!?」



一瞬で顔を真赤にした小林さん


頭の血管が切れないか心配になってきた



「大丈夫ですか?」


「触れるな!!」



怒ってしまった


黒葉のお父さんだしできれば傷つけたくはない


日本人は宗教アレルギーで受け入れられないという人もいる


レアナー教を叩く人もいるぐらいだもんね


叩き出すのは簡単だ、もしくは牢獄エリアに入れることもできる



だけどちゃんとわかってもらいたい



「聖下!大丈夫ですか?!」


「大丈夫!だから誰も入れないようにしてー!」


「はい」



ドアの外から大声を聞きつけて心配になったのだろう、だけどこのまま話すことにした


黒葉の大切な人だ


できれば話し合いたい



「・・・・・私をどうするつもりだ?」


「誤解もあるかもしれませんし話し合いませんか?」


「何を・・?」


「僕のことや、はるねーちゃんのこと、黒葉と僕達のこと、レアナー教のこと、知りたくてきたんですよね?」


「・・・・・わかった」



机と椅子と、飲み物と食べ物を出す


黒葉のお父さんだしお酒も出しておくかな



「今のは?」


「収納です・・・あ、いや、加護なんだけど魔法みたいなもんです」



そうして質問攻めにされた



「そもそもレアナー教とはなにか?」


「異世界の宗教でレアナー様は愛の女神様、治癒や結婚を司っています」


「勇者とはなにか?」


「魔王を倒せる人を召喚されて選ばれる、のかな?この世界の人以外にも呼ばれるよ、です」


「君は何歳?その姿は?」


「16歳ぐらいです、けど11歳で召喚された時に頭が割れて常識がないってよく言われます・・・この姿は掃除に便利だったので」


「おじいさんや信徒の子とも結婚したと聞いたけど本当か?」


「そうですね、信徒やうちの子とも結婚しましたけど」


「なのにうちの奈美と結婚すると?」


「はい」


「・・・・・舐めてんのか?」


「舐めてはいませんが黒葉も納得していて、むしろ推奨しています」


「推奨・・・?どういうことだ?」



僕の寿命についてや、加護について、勇者について、結婚という魔法的契約による魔力や寿命の関係について、領地について、領地の経営について


はるねーちゃんやヨーコについてまでありとあらゆることを聞かれた



天井を見て大きく息を吸って吐いたパパさん






「結論から言おう・・・・・娘はやらん」


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