第406話 墓参り


「今日は何のためにここに来たんだ?」


「ん、必要だから全員集めてもらったんだ、ついてきて」



懐かしい、ここは姉貴たちと会った貴族の領館だ


この奥のダンジョン、俺らを生かしておくためだけの地獄


今でもあの痛みは忘れられない



里のものがここまで多く集められたことは一度もなかった


逆らって殺された者を除いて皆売り払われていた


この場でお互いの無事を初めて知ったものも居る


奴隷として遠方に売られたものもいたし、今は戦時で顔を合わせるなんて暇はなかった


荷物を背負ってどこかに行く・・・この先にあるのは、そういうことだろう



前を進むヨウスケはずいぶんと成長した


言葉遣いは偉そうな言葉も教えられていたが人と触れ合うにつれて子供っぽい言葉も覚えてきた、思い出した、のほうが正しいのかもしれない


戦い方は・・・傷ついても戦う俺らを見てか、かなり荒っぽい


毒も使うし、暗殺術も習っている


勿論安全第一で【清浄化】をアンデッドの住処や呪いの峡谷を光で埋め尽くすほどぶっ放つなんてこともする


魔力が強くなってからは指に魔力を込めてから切り落として爆破・・・・・自爆するなど、目も当てられない


魔力の発散も兼ねているし一概に自傷が悪いとはいえないが見ていて心配になる戦い方をする



時間を懸けて希少な合金を糸にして布を作って渡した



はじめは着込んで貰って即死を免れようとしたのだけど・・なんだか蜘蛛のように使ってる


腕を切り落とされればその腕を布で操作して魔物に食わして腹の中から爆破したりもした


何かがより悪化した気もするが・・・まぁ仕方ないな、ヨウスケ弱いし、生き残るためだ


成長したとは言っても背は低いままだが





―――――・・・・・墓についた





忘れもしない、里の者たちの墓だ



「ここは・・・」


「君たちの里の人達が眠ってるお墓、それと死んでいた人達」



魔法で覆われた荷物、遺体だったのか


いつの間にか墓も増えている



「これで里に居た人は全員、だと思う、生きている人も死んでいる人も、全員」


「・・・・っ!」


「だから、みんなを眠らせて、還してあげたいんだ」



杖をヨウスケが振り、光の柱が建てられ、次第に墓から死者の顔が見えてきた



<やっぱり心残りがあったみたいですぅ>


「そうですね、家族が生きてるか死んでるもわからないなんて、ずっと残る心残りですよね」



次々と死んでいった里のものが光の粒の中から現れて俺たちに触れ合う


ただお互いの顔を見せる


奴隷になって死んだものの魂もそこに混じって、家族との再会を喜び、最後の別れをしていき、最後には光の粒に混じって消えていった



「おねーちゃんも逝けたの、かな?」



ただ、俺の姉は居なかった


長の息子のもとにでも行ったのかもしれない


それならそれでいい


家族との別れを皆が惜しみ、悲しんだ



いきなり連れて行かれたものは家族が生きているかも、死んでいるかもわからない




多くのものは家族の安否すらわからなかったのだ




善きにしろ、悪しきにしろ、これで区切りがつける





消えゆく光の粒に叫んだ





「おねーちゃーん!!俺!精一杯生きるから!!魔王を倒して!復讐して!子供を作って!幸せに生きるから!!!おねーちゃんに胸を張れるように!!生きて死ぬから!!!」



消えていく光と魂



「だから!」



伝わるか、そこにいるかも分からないが



「だから!!」



とにかく、伝えたくて万感の想いを叫んだ



「俺はもう大丈夫だから!!!!愛してる!!!!!!!」







こんなに声を出したのは、こんなにも強い想いを叫んだのは初めてだった



ただ、伝えないといけないと思った




これでおねーちゃんもきっと逝けただろう


涙を拭って里のものを見ると荒んだ目つきは無くなっていた


流れる涙は無視して笑顔を向ける



礼を言おうと洋介の方を向くと、何故かヨウスケは困ったような顔をしていて、そこに現れたレアナー様はニヤついていた




<わ、私も愛してますよ・・・ダリア?>



「ルーリリアは神の従属を選んだですぅ!これからは一緒ですぅ♪」




きっと私の顔はこれまでになく赤く染まっていただろう


顔を覆ってしまったがまた姉と会えたことは嬉しく思う



まぁ、うん、悪いことではないけど・・・・・叫ぶ前に出てきてほしかった


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る