第397話 お客様は神様だ?


日本に帰ると城にはガンガン人が来ていた


ニュースを見ると日本の主要な航空で日本行きの航空便が常に満席になっている


信徒も毎日何千人も増えているしレアナー様は嬉しそうだ


ただこちらでは正月は休みというのが当たり前だ、患者の数も時間を止められるエリアに入れれば問題はないのだけど信徒たちの時間も大切である


親や家族とゆっくり過ごす時間も愛の形である


というわけで大晦日から1月7日まではレアナー教のお仕事は休みとした



どうせ休みって言っても来る患者さんをエリアにいれていくのは僕1人でもいいだろう


・・・・いや、レアナー教の神官や信徒たちはこの城に住んでいる人も多いし1人ではないんだけどね



この間のクリスマスイベントで動画配信してる人がいた


今は一般の人にはまだ城を完全には開放はしていないんだけど遊園地エリアなんかにレジャー感覚で来るお客さんも増えた


来た子供が残念がるのはこちらも少し残念だけど遊園地エリアを動かすのには信徒さんたちもいるしね


お客様は神様だという変な人も居たけどどういう意味だったのか帰ってきた徳田に聞いてみた



「あれは・・・お客さんは金を落としていってくれる、それで自分たちが生活できるんだから神様のように大切にしよう、店側が従業員に接客の心得として教えてるものでさぁ、です」


「なるほど・・え?あの人、神様じゃないんだよね?」


「いや、ただの迷惑な人間です」



徳田はクリスマスイベントに紛れて帰ってきたが運転手をしてた時は丁寧な言葉づかいが出来ていたのにヤクザ時代に少し戻っている


向こうでも神様が人間やなにかに化けてなにかすることはある


人になにか伝えるためだったり、人の営みを見るためだったり、単に遊びに来たりもする


聞いてみると『お客様は神様』と言うのはお店側の考え方なのにそれが浸透した結果、客側がもっと良いサービスを受けたいから無理を言うことが増えたそうだ



「うん?神を自称するなんて処されても仕方ないんだけど」


「聖下、ここは日本です」



そうだった・・・


魔王ごっこや勇者ごっこ、神様ごっこは子供の頃にはしても大人になってするなんてありえない


11歳以下の子供ならまだしも言葉を出すだけでも下手したら頑固なおじいさんや神官たちに折檻を受ける


神への不敬や冒涜は実生活につながることがある


神様が怒ったら台風が来るよりも怖いからね、めったに人界に大きく干渉はしないけど神官が裁判にかけるか探し出してぶっ殺しに行ってもおかしくはない


宗教国家以外ではそこまでしないそうだけどね


こちらで生活してみて日本人、いや、人には信仰はしっかり残っているのに変な話だ


祈りの時間や聖句の習わしを読む時間で今度話してみよう



「ありがとうございます!」


「これでこの子は助かるんですよね!?」



どんどん治していくと乳幼児が居た


乳幼児の治療は完全に無料だ、子供は宝だし


僕がいる間は大丈夫だけどそろそろ制度を変えようと思う


大病の子どもたちが来続けると日本でのレアナー教の仕事はそれだけしかできなくなる


来るのは良いけど親が愛ゆえか「うちの子を優先しろ」と言ってくることがとても多い


多くの親は感謝してレアナー教に入ってくれるけど「無料なんだろう?当然のことだ」と舐めた態度の親もいる、世界中からここに病気の子供を連れて来るのに高額なお金を取ろうとしているやつも増えているとAが言っていた



地球は人が多い、こっちには魔王とか居ないみたいだけど悪い人は結構多いね



「おにいちゃんありがとう!」


「治ってよかったね、レアナー様にお祈りしていくといいよ」


「はい!」



小さな子供を治した



旅の最中、助けられない人は多く居た


僕は食べなくてもなんとかなるけど【収納】の容量が大きくなかったからあまり物を持てなくて、今みたいに力を持ってなかった



痩せた子供が腕の中で飢えて死んでいった事もあった


道には死んで転がっている子供も、たくさん居た


アンデッドとなって怨嗟を撒き散らしながら向かってくる子供も居た



助けられなかった子供のことを思い出すと起きてしまうことがある


だけどこうやって助けられる命も居て、少し泣きそうだ



最近泣いてばっかりな気もする



「コルルルル」



顔をベロンと舐めてきたルール


顔でぬめる唾液を毛皮に顔をいれて拭う



「ありがと、ルール」


「コルルルル」



べシャーべシャーと髪を舐められているけど助かった


並んでいる患者さんがルールに驚いて神官たちを呼んでいるのが聞こえるけど少し休憩させてもらおう

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