第395話 クリスマスのイベントに参加した


-告知遅すぎる!!!??-


-羨ま氏ね-


-爆ぜろ、爆ぜてしまえ-



ネットで配信が行われているけど気持ちはちょっとわかる


わずか1日前の発表でこれだけ人が集まっているのがそもそもとんでもない


ただ若者の間では、いや、女性の間では特に愛の女神様は人気だ


愛らしい姿で人気があるのは当然だかそれだけではない


お肌のケアがほとんどいらなくなり、気持ちが穏やかになってイライラしなくなるなどの変化があるなどあるそうだ


謎に『他人の恋愛にも興味をもつようになった』という意見もあるが・・・まぁ愛の女神様の宗教だしそういうこともあるかもしれない



それよりも美白や美容に興味のない女性はいない、と彼女は言っている



そして美しくなった女性を好まない男もいない、これは俺が思う



近頃はボディビルダーにも人気となっているそうだ


まぁ未だにレアナー教に偏見を持つ人間もいるにはいるが宗教的にも他の宗教と両方祈ることは可能だし敷居は低い


未婚で予定のない人間は美男美女を求め、更に信徒になって自らも美男美女になろうと言う若者は多い


集合予定地なんて人がゴミのようだった


交通整理がされていたが人間の欲というものが具現化したかのようだった



会場内には酷いやつもいた



ナンパ師や詐欺師、スリをしようとしたものもいたが、すぐに固まっていたから見破られていたのだろう


神様の謎のスーパーパワーを見れた気がした、財布を抜き取ろうとした姿のままの男に祈ろうとしたやつも居る



悪意はなくとも気障な言葉を発した勘違い男や食べ物を食い散らかす迷惑男はいた


「1000円払ってるんだから良いだろう!?お客様は神様だろ」なんて・・・


明らかに変なやつはつまみ出されてるがレアナー教の総本山で布教活動する命知らずもいたのには色んな意味で驚いた


はじめてくるレアナー城だが、人が多ければここまで変なやつが目立つものかと・・・完璧にイベント妨害目的の奴らもいるし仕方ないのかもしれない



「離れるなよ」


「うん・・」



ただ初めてのレアナー城の開放だし男も女も関係なく盛り上がった


ニュースで空からの映像を見ると遊園地のようなものがあったし入ってみるとショッピングセンターもあった


明らかに城の面積よりも中が広く感じる



「行こうか」


「そうね」



何をしたって最先端の体験になる、子供のような気持ちで楽しめた


入り口の注意文を読むのは難しかった、よく見ないと読めないレベルの字だったが音読したグループから中にはいれる


それと通貨単位が『レアナー』とか言う謎の宗教っぽさで「幸運の壺でも売りつけられるのか」なんて話していたら壺、売ってた


話を聞いてみるとレアナー教徒の人の自作で売ってるだけで別に幸運になることもないそうだし高額ということもない普通の壺だ


最低限の会費以外にもお金を使えたので彼女と楽しむ



「これ似合いそうだね」


「んー、無いかなー」



最近また喧嘩していた彼女、もう仲直りできないか、なにかきっかけはないかと思っていたがこのイベントに参加して決めることにしたのだ


お互いクリスマスは一緒に過ごさないはずだったしまだ未婚で参加オーケーだった


一緒にアメリカンな射的を楽しんで手縫いの人形をゲットし、彼女をナンパから助け、レストランで一緒にご飯を食べ・・・・一通り見て回って洋介のプロポーズで雰囲気が良くなった



「結婚してくれませんか?」



俺もプロポーズしようと持っていた指輪をその場でプロポーズした



「ごめん、私達合わないし止めとこ?」


「だよね」



断られるとわかっていた


お互い、付き合い始めは友達として楽しかった


だけど致命的に合わない



俺は朝食はパン派だけど彼女はご飯派


俺は掃除はこまめにする方だけど彼女は週末にまとめてやる


俺は魚が好きで、彼女は肉が好き


俺は犬が飼いたくて、彼女はカメレオンが飼いたい


俺は車は月1回以上洗車して大切にするけど、彼女は一切洗わないし走れればいいと言う


俺は唐揚げ大好きだけど、彼女は揚げ物を食べない



お互い歩み寄ろうとした面もあるけど根本的に合わないのだ



歩み寄ろうとするだけあって愛情はお互いあった



もしも結婚したら・・少しはうまく行ったかもしれない、だけどお互いに何処かで破局するとわかっている


そうしてズルズルと彼女との関係が続いてしまって、どこかで決める必要があった


小さなことで喧嘩して今年のクリスマスと正月は自分を見つめ直そうって言い合ってたんだけどお互い興味のあったレアナー教のこのイベントがあった



「わかってると思うけど嫌いってわけじゃないのよ?」


「うん、俺も好きだよ、でも」


「「決定的に合わない」」



周りもいい雰囲気の男女はすごく多かったがやはり一定数はうまく行かずにやさぐれているやつもいた



「服の趣味が悪いのよ」


「ドアを閉める音がおっきいんだよ」


「機械音痴」


「アクセ買いすぎ、買っても使わずにクローゼット行き」


「車の洗車で1時間もかけるのが嫌だった」


「ネイルの使い終わった爪が床にいつも転がってるのありえない」



お互いに良いところも多いのはわかっているんだけど譲れなかったり、どうしても直せない部分があった


良い思い出も多いし、友人としては最高だ


何でも話し合えるし親友としてなら良い関係を築ける



「・・・・・」


「・・・・・」


「やめよう」


「そうだね」



お互いこれ以上はよくないと会話を止めた


もうこんなやり取りも終わりか



「楽しもっか、友達として」


「そうだね」



レアナー様を捕まえて嫁にもらうなんて虫取り網を取り出したやつもいたが柱にくくりつけられた、スマホで撮って一緒に笑った


ビンゴで彼女は壺、俺は趣味の悪い服が当たった



最後に洋介が子供の姿のまま杖を暗い空に向けて・・・光の柱が星のきらめく夜空にたった



光の柱からホロホロと光の粒が崩れ、雪のようにふわりと降ってくる


彼女と、いや、親友と一緒に見れてよかった



ここに来て良かった

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