第388話 患者ラッシュ


「こちらの患者さんおねがいします!」


「はーい」



城は人が雪崩のように押し寄せてきた


海外ではレアナー教が戦うか戦わないかよりも別の視点で考察がされていた



僕らレアナー教は地球から去って異世界に移住するんじゃないか?ってね


それを聞いて海外から日本に来る人は増えて、今じゃないと治療できないと考えたのか日本人もすごく増えた



それも少しは考えてたけどそういう番組があったみたいでそれがカクサンってのをしたようだ


日本各地からも世界からも患者が運ばれてくる


城の周辺は患者が大量に運び込まれてくる


山道に作られたバリケードを取り外してうちの親族と信徒たちがバスで往復してもらう



問題もある



一度に纏めて<客間エリア>に入れるのは簡単だけどそのエリアには出入りに制限がある


これまでスパイさんたちを入れていくのはたまにだったけど今来る患者は何十人も来続けている


バスだけではなくヘリで運ばれてくる人もいるし、車でやってくる人もいる


客間エリアや牢獄エリアには常に人が入り続けるということは出来ない


やろうとしたら一時的にだけど入ることもできなくなったので本当に焦ったのだ


中にいる人も出れなくなるかもしれないってね



この城、管理コアで操作はできるけどある程度僕らにも見えない精霊か何かの管理者がいる


新エリアまでルールを走らせていると黒い人影がいたが僕らが見つけるとすぅっと消えてしまった



やっぱりこの城は怖い



患者を治すのに凄くテンションが上る人もいたり、そうじゃない人もいる


だから「全員に個室を作って鍵をかけて入れよう」って意見もあったんだけど個室にはトイレがついてないのと「城に食われたり出れなくて餓死してしまう人がいるんじゃないか」と言う恐ろしい意見があったので止めておくことにした


なのでショッピングセンターエリアと遊園地エリア、飲食街エリア、闘技場エリア、プールエリア、運動エリアを試験的に開放する



試験的に使うので幾つかのお約束がある


・怪我や病気、死亡などは自己責任としてサインすること

・勝手に物を持っていかないこと

・ここは宗教施設であってお客様が欲しいわけではないので横柄な態度の方はお断り

・気の合った人と祈るのは良いですが廊下の中央などでは止めましょう

・助け合い大事

・バイトなどは募集していません

・不審な行動をとらないようにしましょう

・ペットや動物の立ち入りは禁止


などなど入り口に大きく注意書きを書いておく



何故か僕の字で書いたほうが良いとかで何度か練習して書いた


思いつく限り注意書きは書いた


読み上げた上でサインした人は入ってもよし



神官と聖騎士達はある程度装備で見分けがつく


神官見習いは魔法の練習までしてくれるので杖を必ず持っているし、それ用のベルトを付けていることが多い、聖騎士部の人は鎧や武器を装備してる


信徒にはおそろいの服を支給しようとしたがレアナー様的にはよくないらしい、愛を育むというのは身だしなみにも気をつけるのが良いとか・・・


仕方なく胸の中央の見える位置にレアナー教のシンボルマークをつけてもらって施設を見て回ってもらう


・・・・・・・・・つけるのは神官の役目だけど男でも女でもおっぱいに触ることを考えた配置だな、向こうの世界でこれやったら確実に胸板スリスリぐらいはしてくるだろう



ここで使えるお金はレアナー様の名前のままで通貨単位とした



レアナー様は喜んでいたし、作ったお金の印刷は細かくしたが基本は電子マネー


子供だけが紙幣や貨幣を使用可能、それらの金銭はここでしか使えず出るときには置いていかなければならない


外で持ってたら奪われる可能性もあるからね


基本的には1レアナーが1円



ペットについては文句を言う人もいたけど空でも水場でも移動可能なルールとミルミミスがいるのですぐに謝られた、食べられかねないもん


ルールとか熊よりも大きいしこちらでライオンとかが知られてるだけあって近くで見ると怖いという意見もある


たまに信徒が廊下の角でルールとばったり出会うと気絶したりおしっこ漏らしたりしてる



闘技場エリアはこちらの世界でも古代に円形の客席があるグラウンドがあったようだがそれに近い


訓練や、行進、楽団の練習、それと目玉の戦闘訓練が見れる


聖騎士候補が聖騎士として認められるには魔力の扱いに長けて戦闘力や儀礼が充分でなければならない


魔力を操るには年単位の鍛錬が必要な場合もあるし幾つかの方式の魔力の使用方法はあるから気長に訓練してもらいたい



魔法は儀式で行うものや術式、詠唱式、祈祷式、回路式、陣式、触媒式、原始式、自然式など様々な方法がある


国や研究機関で呼び方も変わるけどレアナー教でよく使われるのは祈祷式が多い、魔力を神様に魔力を捧げ、かわりに神様から魔力が送られ、それを術式に当てはめて使う


神様が気に入る魔力の質のものほど神様から帰ってくるの質は良くなり、当てはめられた術式は効力を発揮するが神殿の距離もあるし、基本的に効率は悪い


僕の杖は神様たちが作った特別性で壊れないし、術式もいらない優れものだ


こちらの神官や聖騎士候補たちに同じことは出来ない、だって魔力の知覚も操作も危うい


それでもレアナー教で治癒を受けたり身近に魔力を感じることで少しずつこっち基準では戦えるようになっては来たけど僕からすると甘いね、ゴブリンにだって殺されそうだよ


だからヨーコは「コピー機を使って魔方陣を作るのが良いのでは?」なんて提案してきたけどかさばるし、インクを作ってもコピー機がすぐ詰まってだめになったり成分の問題なのかまともに使えない


ミルミミスが内田さんにやったように入れ墨のように魔力回路として使えば簡単に強化は出来るけどレアナー教の魔法にそういうのは少ないし新たな実験台にするのは怖い


防御や身体強化、感覚強化、体力向上ぐらいであれば良いのかもしれないけど・・・そもそも新たに刻み込んでもちゃんと使えるとは限らない


だから鍛錬するが賭け事にも使っている、ボブいわく賭け事が活発になったほうが選手もやる気が出るということなので賭け事もオーケー


日本のボクシングでは賭けはよくないということで衰退し、逆に賭けがあることで観客も本気になるし、観客のお金で選手が食べていけるのがアメリカらしい


日本のボクサーはセンギョウっていう、ボクシングだけで食べていくのは難しいそうだ


賭け事が活発になると逆に八百長ってのもあったり選手が襲われたり危険にさらされる危険性もあるらしいけどね


幾つかのエリアを使うことで城の周りが患者で埋め尽くされるといったことが無くなって良かった



・・・レアナー教としてレアナー教のことを考えるこういう時間は悪くない



「いっふぁっふぇーい☆」


「つかまえてごらーん」

「貴方ー!!?」


「どれみふぁー!!そらしどぉおおおおおおおお!!!」

「まてまてー」

「フーーガアアアアアア」



ここに来る患者は長年怪我や病気に苦しんでいたのだろう、それだけ治癒魔法の効き目が強いのか暴れまくって地獄絵図となっている


普通に何もない人もいれば少しだけ気分が高揚してるだけの人もいるけど、やはり叫んだり走り回ってる人がよく目立つ


聖騎士候補や神官たちは抑えようとして殴られているけどそういうのも仕事のうちなので頑張ってもらいたい



うん、現実逃避だ



痴呆で深夜徘徊をしていた老婆が無言でゴキブリのようなスピードで匍匐前進を続け、儚い印象の車いすのおねーさんがブレイクダンスをし、青年と中年のおじさんは殴られたら殴り返すというようなことをしている


いつもの光景だけど、うーん、みんなには頑張ってもらいたい



「次の患者来まーす」


「はーい」



みんな頑張ってるし僕も頑張ろう

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