第362話 お休みの洋介、進む準備


洋介は豚汁を大きな寸胴6杯分ぐらい食べてウトウトし始めた


フードファイターか、いや、軽く超えている



「拭きますわね」


「ありが・・と・・・・」



ヨーコに口元を拭かれている


セーに捕まってる間に夢見心地の中で自分で成長したらしいが、めちゃくちゃ食べる


寝ている間は食べ物を取っていたわけでもないし魔力であぁなった、だから食べ物が必要・・なのかな?


信徒も洋介の大食いを動画に撮って「奇跡だ」とかいってありがたがっているけど洋介の奇跡や魔法はそこじゃないだろう


たしかに凄いけどさ、洋介の見かけの体重を超えるぐらい食べてるし


何処に入ってるんだろうか?牛みたいに胃袋が増えてるとか無いよね??



ベッドまで洋介を連れて行く、お腹いっぱいになって半分ぐらい寝落ちしかけてる



もしかしたらお腹いっぱいとかじゃなくて眠たくて食べるスピードが落ちたのかもしれない


今の洋介は私よりも背が高いしいつものように抱き上げる訳にはいかない、脇から支えて歩く


持ち上げてみても20キロにもまだ満たない体重だが食後だし無理に動かして吐かれても厄介だ



「大丈夫?ベッドまで行こう、ね」


「うん・・」



ヨーコももう片方の脇を支えようとしたが背が足りない、奈美がもう片側を支えてくれてなんとか引き摺らずにすんだ


洋介はまだ完全には寝ていなくてゆっくりだけど足を出してくれる


今までなら後ろから持ち上げれたのに・・男らしい体つきにちょっと感動しつつもコレジャナイ感もする


ヨーコに寝室のドアを開けてもらってベッドにゆっくり寝転ばせる



「元杉神官、お水いりますか?」


「・・・んー・ん・・・・・・」



サンダルを脱がせるとそのまま丸くなってしまった


奈美と顔を見合わせて少し笑っちゃう


大の大人に見えるのに中身は変わってない


・・何だこの服?色々と派手でヨーコと奈美の3人で脱がせにかかった



「コルルルル」



ベッドの上で「寝転ぶならこっちだぞ」と言わんばかりのルール


だけどうん、あれだけ食べた後だし、ベッドで寝かせる


ものすごい量を食べた後だし、できるだけ動かしたくはない



「ルール、後は任せてもいい?」


「クァルゥ」



たまにコロコロと動く洋介だがルールがいれば落ちることもないだろう


巨大な大きさのベッドだけど洋介とヨーコはよく落ちる


薄めの掛け布団をかけてやって・・皆寝室から出て別の部屋に入る



セーにも嫁ルールを言って聞かせねば


結婚式までは手を出さないこと、いや結婚式終わっても洋介はこちらの年齢で17歳だからダメなんだけどね


それとこちらから襲うのも禁止・・・・連れ去り誘拐監禁洗脳も禁止しとかないとな


常識人っぽいケーリーリュでさえも「レアナー教徒は酷いな」と思う場面はあった


ましてや中身が子供っぽいしレアナー教のトップにいたセーがまともだなんて考えてはいない


レアナー教的には理由さえあれば人さらいと監禁はありらしい


もちろん相手を傷つけてはいけないし、基本的に嫌がる相手には出来ないそうだが・・・


普段はレアナー様が出歯亀しつつすぐに止めるそうだ



洋介を攫った今回のことはレアナー様に抗議した


世界の危機とか色々秘密事はあったらしいが教えてほしかった


レアナー様が敵だと知った時は本当に悲しかった


平謝りするレアナー様だったが事情が事情だったし私達の未来の幸福も考えてこうしたなんて言われると許せないまではいかなかった


せいぜいお菓子2ヶ月抜きだ



レアナー教の常識や慣例、魔法というものは私には驚く事が多い



セーが私と殴り合ってダメージが通ったのは既に洋介とのつながりがあったからで普通に戦えば私では勝てない相手だ


洋介が銃弾でも傷つかないのに私のアイアンクローがダメージになるように、私との殴り合いでセーはまともな痛みを初めて知ったようだ


洋介も出していたけどトゲトゲでごつすぎる金棒なんかで殴られていたらやばかったと思う


鬼に金棒というような言葉があるけどまさにあんな金棒で自分が殴られるかもなんて考えもしなかった


レアナー教徒を狙う魔王の配下や邪教徒にはよく使う標準装備らしい



セーは今ではとても落ち着いてじーっと私達を観察し、わからないことは聞いてくる変わった歳上のお姉さんだ


中身は子供のようだけど



洋介の衣類に関しては暗黙の了解で私もヨーコも奈美に任せていた


聖騎士を取り仕切っているヨーコと鍛えられている私は衣類を洗ってもらう側だ


信徒に任せても良いのだけど奈美が任せてと強く言うので私とヨーコと・・もちろん洋介の服の洗濯はビルと大学に行き来している奈美にまかせていた



「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」



「スー!ハー!!スー!!ハァァアアアア!!!!」



いつの間にかセーは洋介の脱いだシャツを持っていて、全力で嗅いでいた


ピンクの髪を震わせ、顔面に生地が伸びるほどに食い込ませて全力だ


奈美がこっそり後ろから洋介の首筋や髪、シャツを嗅いでいたのは知っていたけどここまで全力ではなかった



もうちょっと人目は気にしろ



一応レアナー教的には普通なのかもしれないしこちらの常識に当てはめて人目につかないところでねとだけ教えるとわかったと返された


その服洗うから自分の収納袋にしまおうとしないで



どうせなのでこのまま今後の作戦会議をすることにした


手紙のことを聞いて酷いことになっていることがわかった


だけど詳細はわからない



「セーは向こうに行けるの?」


「今ならいけるけど29時間に1回ぐらい、手紙なら何回でも出来る」



話してみると神様だけではなく人も集団で魔法を使えばこちらに来ることも一応は出来るそうだ


洋介を向こうに召喚したのなら向こうからこちらに来ることも可能なのか?



「何人かで向こうの状況確認しようか」



異世界の状況も知りたいと意見は一致した


手紙に書いていたらしい、異世界の軍隊が集まってるとかなんとか・・・どういうことだって気になるしね


私とセーとミルミミスとシーダリアで行こうかとも思ったけど人選に困る



「いや、遥がこっちに残って元杉神官の暴走止めてて、その間に私達で向こうの様子見てくるから」


「・・わかった」



言葉の魔法はいつも奈美にかけてもらう側で奈美がいないと困る場面も多い


こちらの神殿のサシル様に祈るよりも奈美に魔法をかけてもらったほうが範囲も広くて効果も長持ちする


だけど私が異世界に行き、奈美が残った場合、奈美では私でもよくわからない判断基準で突っ走る洋介を止められないことがあるのも事実だ



私でも止められないことがあるんだけどな・・・



あーだこーだと奈美とヨーコとセーで作戦会議を続ける


洋介の顔を向こうで拭った手ぬぐいが私の収納袋に入っていたのでなんとなくだけど奈美に渡すと真っ赤になってしまった


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