第348話 吾郷の胃痛


ビルが一瞬だが発光したという情報が部下から入って洋介くんにすぐに電話をかけた



現在の状況は最悪だ



全世界からレアナー教を擁護する表明を発表


予告もなしに近海を演習する東西諸国の軍艦


問題が解決するまで流通が一部遅延している、プレッシャーが物凄い


洋介くんによって治療された人間は一般人だけではない、各国の中枢に居るものも当然居る


一緒に治療された仲でいつの間にか仲良くなったトーマスさえも副大臣、政界への影響力は凄まじく、レアナー教徒としてむしろ責めてくる



怪我も病も癒える力はほぼ全ての人間にとって求められているものだ



誰だってそんな力は欲しい



トーマスも他国も日本の混乱に乗じて奪えるようなら奪おうとしているのだ、外交カードとしての圧を超えている


ただでさえ国内国外の権力者からの問い合わせ、いや脅しや恐喝が殺到しているというのに裏から日本中で怪しい外国人集団の情報が入ってきている



完治した病とは関係なく胃が熱く感じる



もうまともに眠れていない



だが歴代首相のように『都合が悪くなったら倒れる』ことはしない


この国難で何もできないなんて絶対に嫌だ



キュカッ


ゴクゴクゴク・・



胃薬を飲み干す


最近癖になってきた気もする


とにかく問題に対処し続ける


対処できない問題とわかりつつも対処するしかないのならやらなければならないのだ



ビルから洋介くんしか出来ない現象が見られて、震える手で携帯から洋介くんに電話する


頼む頼む頼む頼む!



PLLL おかけになった電話番号は



もう何度かけたかわからない


ちゃんと呼び出し音が聞こえるというのに頭の中で幻聴が聞こえる



「あ、もしもし吾郷?さっき帰ってきたんだけどなにがどうなっ・・・・・」


「洋介くん!?良かった連絡がついて!どこにいるんだい?!無事でよかった、事態は把握している?このま「<聖戦・・聖戦だぁあああああああああああ!!!!!!>」


「えっ」


「<レアナー様の財に手を出してただですむと思うなよ!!???>」



お怒りのようだ


だよね、安藤があれだけのことをしでかしたんだから


い、いや、それでもこの事態をどうにかするには彼をどうにかするしかない



「もしもし遥ですぅー、ちょっとこっち立て込んでまして、切ってもいいですか?」



ガサガサと音がしたと思ったら遥くんが電話に出た



「お願いだからきらないで!?」


「えっと手短に言うと洋介攫われててやっとさっき帰ってきてニュース見てお怒り、止めるためにもきりますね」


「はい、できるだけ穏便に!穏便にお願い!!!」



―――きれてる


総理大臣の電話なんだけど・・・・もう一本胃薬開けとくか



録音を聞き直す


洋介くんはこの日本中、いや世界中を巻き込んだ騒動を知らず、さっき帰ってきたそうだ


攫われてたってだれに?どこに?どうやって?



疑問は残るがそれよりも問題の解決を考えよう



本人がこの騒動を先導している可能性は限りなく低かったが可能性としては考えられていた


もう一つの可能性は洋介くんは何者かによって死亡している可能性



充分にどちらも考えられた


しかし生きて帰ってきてくれた



・・・・・だがこれはこれで問題だ



この騒動のどの時点から彼がいなかったのかはわからない


しかし彼と遥くんの反応を見るに先程この騒動を知ったとすれば・・・怒りは当然、今度こそ日本は終わるかもしれないな


聖戦だって言ってたし、レアナー教の信者たちを彼が先導したら日本なんて終わる





ふぅ





手探りで机の下のダンボールから望みの物を探す


ガラスの容器に金属製の蓋の感触がどこにもない


もう無くなったか?次の箱を開けないと

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